笑いは男のもの?おもしろい人が勝つ世界?女性芸人たちそれぞれの笑いの哲学(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『笑いの正体』

第2弾の今回は「女芸人」特集。スタジオゲストのジュニアは、もう男女関係ない時代になってきていることに触れ「『女芸人』って言っていいの?って一瞬飲み込んでしまう時代。もうこれで最後じゃないか。『女芸人』といって大々的にスポットを当てるのは」と言う。

「笑いの正体は?」という壮大な問いに、上沼恵美子は「生き様」、大久保佳代子は「空気」、友近は「麻薬」、渡辺直美は「サプライズ」、横澤夏子は「幸せ」、Aマッソ加納は「探す」、ゆりやんは「エクスタシー」と答えている。

中でも興味深かったのは、大久保と友近の対比。「笑いは男のもの」という意識があったという大久保。「女性芸人は隙間の役割」「現場の空気を読んで、何を求められているのかを理解・把握して、それに沿って発言なり動けるようにすることを心がけてきた」と語るのに対し、友近は「デビュー当時から男性女性を分けて考えてない」「おもしろい人が勝つ世界」だと思っていたという。「おもしろいと思うものをウケなくても捨てずにやりつづけたら、わかってくれるお客さんが集まってくれた」と。大久保は「助手席」、友近は「自分でハンドルを握る」とジュニアがたとえたように、まさに正反対。番組ではほぼ同世代なのに真逆と言っていたが、年齢こそ近いもののデビュー時期は一世代違う(大久保は1992年、友近は2000年デビュー)し、東京と関西の違いも大きいのかもしれない。

さらに一世代若い(2007年デビュー)渡辺直美は、自身がデビュー当時も「(世間が)女芸人のファッションにうるさかった」と証言。スカートを履いたり、エクステをつけたり、メイクをガンガンにしていたら、やめたほうがいいと言われたそう。「女みたいな格好してたら(男社会のお笑いが好きな)女性客に好感度が上がらない」と。それに対して「逆にバリバリなファッションをしてウケたらめっちゃかっこいいってことじゃないですか?って」と考え、道を拓いていったというのがカッコいい。女性芸人それぞれ考え方がまったく違うという当たり前の事実があらわになって興味深かった。

そんな証言の中、「『めちゃイケ』がスゴいのは台本がガッチリある。読んだだけでおもしろい。悔しいからアドリブを入れていた」という大久保の言葉や、それを受け中居が「(『めちゃイケ』は)一言一句、全部、台本です。台本と参考VTRを見ながら、(スタッフから)『この落ち方とかリアクションとか、間(ま)みたいなの叩き込んどいてくれ』って(言われた)」と発言したことで、「台本があったんだ」などとネット上で大きな話題になっていたのがちょっと意外だった。『めちゃイケ』は緻密な作り込みが大前提で、だから、そこから人間味や生々しい感情がはみ出る部分こそ魅力だというのが共通認識だと思っていたので。

『タモリ倶楽部』

昨今、外国人タクシードライバーが急増しているということで、26カ国60名以上の外国人ドライバーが在籍する日の丸交通を舞台に、彼らが東京のどんな道が好きなのかを聞く企画。進行は、3歳のときまで全部の国旗を言えた天才少年だったという矢作「ただ全部忘れるもんですね(笑)」。

今回登場したドライバーはオーストリア、ケニア、フランス出身。ウィーンから40分くらいのところにあるテルニッツが地元という人に「海老名くらいかな?」と聞くと「埼玉方面かな」と返ってくるのがわかりやすくていい。元シェフだったり、プロボクサーを目指して来日してきたり、『YOUは何しに日本へ?』を観たことがきっかけでタクシードライバーになったという人がいたり、その経歴を聞くだけでおもしろい。彼らは、日本橋駅から銀座駅に向かう道や行幸通りなどを好きな道に挙げる。

その合間、中国ドライバーとしてタモリが登場。町中華の助手だったなどとディテールを語り、好きな道は表参道だという。デタラメな中国語で「道が大き過ぎると行き交う人が知らないうちに過ぎ去ってしまう。道が小さいとぶつかり合ってケンカになって人間関係がギスギスする。ちょうどいい道が人には必要だ」というもっともらしい中国の偽のことわざを紹介。なんだかこんなときだから妙に響く。久々にガッツリと披露された外国人なりすまし芸がうれしい。

後半は、タモリらと外国人ドライバーで「山手通りの交差点名を当てる」対決。が、2周したので「ドロー」というなんともこの番組らしい終わり方。衝撃的事件で軒並みバラエティ番組が休止になって気が滅入っているなか、いつもどおりのまったりした放送に救われた。

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