芸人の仕事をしていると「好きな仕事をやれて楽しそうだね」と言われることが結構あります。
僕はお笑いが好きで芸人になったので、その仕事をやれているのは幸せなことだと思います。しかし、芸人の仕事だけでは食べていけてないので、厳密に言うと「好きな仕事をかじれて楽しそうだね」となります。これは大きな違いです。芸人の仕事以外にバイトをしています。その生活は混じりっけなしの貧乏です。
貧乏は辛いです。歳を食った貧乏はさらに辛い。売れない芸人も一丁前に歳を取るわけで、辛さは年々増していきます。そもそも好きなことで食っていこうなんて図々しいもいいところですから、この辛さはその報いだと受け入れております。しかし、辛い。
先月は芸人を志すきっかけから、社長となり、また芸人に戻るという過去の話を書かせて頂きました。ということで今月は現在を。
24年売れていない芸人のリアルを書きたいと思います。
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売れない芸人のバイト事情
売れない芸人のほぼ全員が何かしらのバイトをしています。これが若手芸人ならまだいいのですが、加齢芸人となると……。僕は数年前に新しいバイトを始めることになったのですが、そこで現実を味わいました。
僕は「お花くん」というキャラクターを四年ほど前から始めました。一年365日の誕生花と花言葉を言えるというものです。
このキャラクターに説得力を持たせる為に、お花屋さんでバイトをしようと思いました。これが全く受からないのです。四年前というと僕は41歳。41歳のおじさんを雇ってくれるお店はないです。しかもお花屋さんです。おじさんが最も働いてはいけない場所です。履歴書の段階で落とされます。面接まで辿り着いても「41歳の芸人てどんな奴がくるんだろ?」の興味本位だけで、「全くテレビで見たことないおじさんが来たぞー!」で、結局落とされます。
それでもどうにかコネを手繰り寄せ、知人の紹介でお花屋さんに雇って貰うことができました。
しかし、突如としてお花屋さんに現れたおじさんにバイト達はざわつきます。
20代ならいいんです。
しし丸 「俺、芸人やってるんだ」
バイト仲間「そうなんだ!頑張って!」
しし丸 「いつか売れるからさ」
バイト仲間「売れたら女優とか紹介しろよ!」
しし丸 「バッキャロー!」
青春です。「夢を追いかけバイトに励む青年」です。
しかし、40代の今。
しし丸 「俺、芸人やってるんだ」
バイト仲間「そ、そ、そうなんですね。お疲れ様です」
しし丸 「いつか売れるからさ」
バイト仲間「あっ、はい。お先に失礼します」
しし丸 「もう帰っちゃうの?一緒に帰ろうよ」
バイト仲間「あっ、いえ、失礼します!」
しし丸 「待ってよー!」
バイト仲間「ギャーーー!!!」
ホラーです。「夢を追いかけバイトに励む中年」はホラーです。僕が学生のバイトで、そんなヤバいおじさんがバイト先に入って来たら極力関わらないようにします。
こんなゾンビのような男を受け入れてくれたお花屋さんには感謝しかないのですが、そんなお店もコロナの影響を受け閉店に。また新たなバイト先を探すか……。
このように、売れない芸人のバイトは年齢を重ねるごとに辛く厳しいものになっていきます。芸人が昔からのバイト先で出世して店長になった!なんて話も、その芸人が優秀というよりは、他にバイトを見付けられない状況からくるのもではないかと思うのです。
教訓:おじさんアルバイターへ
“アイブロウ・フラッシュ”をするべからず!
“アイブロウ・フラッシュ”とは、0.5秒ほど目を見開き眉を上げて挨拶をすることで、相手の警戒心を解き好感度が上がるそうです。面接時にはかなり効果的だと言われています。
しかし、これをバイトの面接でおじさんがやるとどうでしょうか。想像して下さい。目を見開き眉を上げて挨拶をするおじさんの姿を。瞳孔が開いたゾンビです。是非やめましょう。
「お風呂に入ってから行こう!」
僕は格闘技が趣味なのですが、柔術の先生が言ってました。練習後ではなく練習前にシャワーを浴びると。ジムには女性会員もおり、クサイと露骨に辞めていくそうです。
バイト先でゾンビ扱いされようが、臭いまでゾンビになる必要はありません。バイト前にひとっ風呂浴びて行きましょう。
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