カメラの前に立ちはだかり、ネタの瞬間ものすごい存在感でエネルギーを放出するお笑い芸人。その姿はまるで気高い山のようだ。敬愛するお笑い芸人の持ちネタをワンシチュエーションで撮り下ろす、フォトグラファー正田真弘による連載「笑いの山脈」。本業はポカリスエット、カロリーメイト、どん兵衛、Netflixなど見たことある広告をいっぱい撮っている人。
阿佐ヶ谷姉妹「思い出作り」
阿佐ヶ谷姉妹の暮らしには見る者を穏やかな気持ちにさせてくれる何かがある。
ブログ『姉妹だより』やエッセイ本『のほほんふたり暮らし』(幻冬舎)を通して伝わってくる日常はアコースティックサウンドのように心にじんわりと染み込んできて、
背伸びしないで生きていくことの価値を再認識させてくれる。
映えた写真であふれた世の中だからこそ、語りかけるのではなく耳を傾けてくれるような存在がうれしくなるのだ。
以前読んだおふたりのインタビューでこんな言葉に触れてとても共感したことがある。
「仕事は思い出作りのようなもの」
常々、僕も人生は思い出作りと思って暮らしている。
話は少しそれるが先日、真心ブラザーズのYO-KINGさんから「走馬灯は脚色していいとみうらじゅんさんが言っていた」と聞いて、この”人生は思い出作り論”もさらになんでもアリに思えてきて楽しくなった。
自分も歳を取ったのか、苦しいほうを選ぶ時期を過ぎて
楽しいほうを選べというフェーズに入ってきたのかもしれない。
そんな僕には阿佐ヶ谷姉妹の笑いがたまらなく心地いいのだ。
夏の夜の風呂上がり、畳の上でビール片手に笑いたい。
今回の写真に一切触れていなかった。
“見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ”
阿佐ヶ谷姉妹のつかみネタである。
この撮影がいい思い出になったかどうか、
そこが阿佐ヶ谷姉妹にとっても僕にとっても大切なのだ。
阿佐ヶ谷姉妹
木村美穂(1973年11月15日生まれ、神奈川県出身)と渡辺江里子(1972年7月15日生まれ、栃木県出身)によるコンビ。ASH&Dコーポレーション所属。劇団東京乾電池研究所で知り合い、2007年に結成。美しい歌声と対照的なアクロバティックな動きの歌ネタを得意とし、『女芸人No.1決定戦 THE W 2018』優勝。