【『THE LAST PIECE』レポート#3】SKY-HIが10代を気にかける理由「日本の若者が夢を見るようになったら国がボトムアップする。それをやりたいから育成に本気」

BE:FIRST(ビーファースト)、MAZZEL(マーゼル)に次ぐ3つ目のボーイズグループを誕生させるべく、SKY-HIが主宰するマネジメント/レーベル「BMSG」が始動させたオーディションプロジェクト『THE LAST PIECE(通称:ラスピ)』。
『『THE FIRST』』『MISSIONx2』に続いて本オーディションでもプロデューサーを務めるSKY-HIは、「あなたの夢を叶える事が今の俺の夢だ」とコメント。さらに、『THE LAST PIECE』は以下のステイトメントを掲げている。
全ての10代と、
かつて10代だった
全ての人へ。
さあ、世界で一番自由で大きな夢を見よう。
2025年7月11日にYouTubeで配信された『THE LAST PIECE』本編Ep.03では、Ep.02に続いてグループでの課題曲パフォーマンス審査となる3次審査に挑む3チームの様子が届けられた。その模様をレポートする。
目次
求められる“パッションとエモーション”
2次審査を通過した30名による3次審査合宿。Ep.03では、残りの3チームを追う。
まずはRYOMA、GOICHI、RAIKI、ADAM、TAISEIによるチーム。課題曲はDragon Ash「Fantasista」だ。振り付けを作成したコレオグラファーKAITAによれば、歌いながら踊るには激しい振り付けだという。
実はこれにはSKY-HIのある意図があった。頭で考えてパフォーマンスしがちな参加者に、パッションとエモーションで表現してブレイクスルーしてほしいということ。
RAIKIは2次審査でSKY-HIから、「考えて考えて考えて最後それをそこに置いてステージにパッションで立つっていう、この両方を大事にしてほしい」と言われていた。また、同様の課題はADAMとRYOMAにもある。コレオグラファーアシスタントのKANUは、どちらもパフォーマンスにもう少しパワーが必要だと話す。
エネルギッシュな曲を自分にあてられた彼らは、「一番ないと思っていた曲が選ばれたんで……」(RAIKI)、「最難解です。今までやってきた曲とほぼ真逆」(RYOMA)と困惑気味だ。
レッスンを受けるために15歳で長野県から上京したRYOMA。「せっかく東京に出てきて何もできずに帰るのは絶対避けたい。負けられない気持ちは人一倍あると思います」と語る。
すれ違いから不満を抱えるメンバーたち
このチームの課題はほかにもある。BMSG TRAINEEと一般応募者の距離が縮まらないことだ。BMSG TRAINEEであるRYOMA、GOICHI、RAIKIは仲がよさそうな一方で、一般応募者のTAISEIとADAMは緊張気味。食事も別々のテーブルでとっていた。
TAISEIは「どういうふうに仲よくしたらいいんだろうとか考えて、精神面的にもどっと疲れた感じがあって」とスタッフに話す。
合宿2日目。ほかのチームは5人そろって朝練をするなか、Fantasistaチームで集まったのはRAIKI、RYOMA、TAISEIのみ。午後の練習でもフォーメーションのミスを連発し、パフォーマンスの移動でもぶつかってしまう。うまくいかない練習に空気が張りつめる。そんななか、TAISEIはトイレに行くと言ってどこかへ消えてしまった。
チームの様子に気づいてか、コレオグラファーアシスタントのManaは「いい意味でも悪い意味でも、言いたいことをもっと言ったほうがいい」とアドバイス。メンバーたちの表情は浮かない。
TAISEIがその場を離れてから10分以上。心配したRAIKIが探しに行くことに。すると今度はRAIKIも戻ってこない。スタッフが探しに行くと、ふたりは階段に腰をかけて話し合っていた。
「朝練したほうがいいんじゃないかなって僕は思っていたから。でも『来てよ』っていうのは違うなと思ってたから。あのままたぶん振りやってたら、ちょっと無理だった……」(TAISEI)
「俺らいっぱい合宿していて。だから、早く起きすぎて夕方になってきたらめっちゃしんどくて全然やれない、みたいな経験がけっこうあったりするのよ」(RAIKI)
TAISEIは溜め込んでいた気持ちをぶつけ、RAIKIは朝練に来なかったメンバーの気持ちを代わりに伝える。あとから追いかけてきたほかのメンバーたちは、壁越しにTAISEIの思いを聞いている。

SKY-HIもまた、そばで見守っていた。しかし、あえて声はかけない。そして、しばらく様子を見たあとで、彼らだけで乗り越えさせようと静かにその場を去った。
「今は抱え込んじゃって爆発したけど、『僕こういうことを思っているんですけど、どう思いますか?』って聞いてくれたら、俺も一緒に考えるから」
RAIKIはTAISEIに寄り添う。TAISEIはチーム最年少ということもあり、無理をしていた部分もあったようだ。言いたいことを伝えられたことで少しずつ打ち解けていく。
少しずつチームワークがよくなってくると、ダンスにも一体感が。フォーメーションミスを連発していたのがウソのように、エネルギッシュで雰囲気のいいパフォーマンスへと成長していた。練習を見にきたSKY-HIとKAITAもこれには大盛り上がり。

SKY-HI「60%のベストは手を抜いた100%には絶対勝てる」
合宿3日目の中間発表で、すでに仕上がっているFantasistaチーム。しかし、この曲の課題は殻を破ること。SKY-HIは「激しい顔とかエモい顔ってもうちょっとあるなって感じ。今まだドアの開け方が一方向」とアドバイスする。
「RYOMAとかRAIKIはこれからどんどん解放していかなきゃいけないんで」と話すのは、ダンス歴12年の実力者GOICHIだ。そんな彼を中心に、メンバーたちは表現の引き出しを増やしていく。合言葉は「パッションの解放」だ。
やがてクールなADAMやRYOMAの表情も豊かに。チームの課題はなくなっているようにも見えた……。しかし、本番前日。ここで深刻な問題が発生してしまう。

RAIKIが喉の炎症によって、本来の声が出なくなってしまったのだ。声を気遣って練習するも、結局本番当日も回復することはなかった。RAIKIはすっかり意気消沈し、メンバーの前でも落ち込んだ態度を隠さなくなっていた。
そんな彼にSKY-HIが声をかける。
「長くアーティストやっていくと、100%でやれることってほぼないから。(……)80%なら80%、60%なら60%の自分を受け入れてベストは尽くす。60%のベストは手を抜いた100%には絶対勝てるから。そこは見せてほしいかな」
そんなSKY-HIの言葉に、RAIKIは「今できることをとりあえずやるっていう気持ちで練習できなかったことがほかのメンバーにも申しわけない」と気持ちを改めることに。残りの時間でやれることをやりきり、いよいよ本番へ。

“パッションの解放”を感じさせたFantasistaチーム
「パッションの解放」を目指して練習してきたFantasistaチーム。迫力のあるラップで引っ張るGOICHIとTAISEI、甘い歌声を効かせるRYOMA、気迫のある表情で惹きつけるADAM、そしてコンディションが悪いなかでも今できる表現方法を見つけたRAIKI……バイブスの高まりを感じさせるパフォーマンスだった。
これにはSKY-HIのテンションも高まり、何度も声を上げる。彼らが殻を破ろうとしている姿に感動しているようでもある。パフォーマンスが終わると、「乗ってたなあ」とまずひと言。
最後に、「単純な審査じゃなくてパフォーマンスとして、アティチュードとして、打ち出しとして、俺たちこんなヤバいんだぜっていうのを俺たち全体を代表してぶつけてもらったような気持ちに、勝手になってます」とコメントした。

KANONが牽引するSuperstarチーム
続いては、YU、KAIRI、 KANON、RAITO、TOMOSHIによるチーム。課題曲はAyumu Imazu「Superstar」だ。
初日にしてすでに明るく仲がいいSuperstarチーム。振り入れ担当のMathewも、みんなが仲よさそうだから逆に心配なぐらいというほど。
中でもチームの雰囲気を明るくしているのがKANONだった。『MISSIONx2』で最終審査まで残るも名前を呼ばれなかった彼は、BMSG TRAINEEとして3年が経つ。「もうやるしかない」とこのオーディションにかけていた。夢は「自分も楽しみながらお客さんも最高に楽しませられる“THE楽しいアーティスト”」だ。

一方、SKY-HIには気になる参加者がいた。
一般応募から参加したRAITOだ。伸びやかな歌声が持ち味な彼だが、ダンス・歌はすべて独学。ポテンシャルの高さにSKY-HIは注目していた。ただ、やはり初日の段階ではほかのメンバーに追いつけていないようだ。
ダンス経験者のメンバーですら苦戦する振り付け。しかも翌日は歌レッスンがメインで、ダンスの時間が取れない。短い時間での振り入れに、RAITOは笑顔を見せる余裕もなかった。だが、それでも前向きさは失わない。「ここは負けたくない」と必死にくらいついていく。
SKY-HI「このチームのグッズが欲しい」
2日目の歌レッスンは順調。初めは地声と裏声の切り替えがポイントである課題曲に手こずるメンバーもいたが、レッスンの終わりにはなんなくクリア。練習を見にきたSKY-HIも「めちゃくちゃいい」と安心していた。
雰囲気もよくうまく進んでいるようにも見えるSuperstarチーム。だが、ここで問題が。高低差のあるメロディーと激しいダンスが特徴のこの曲。いざ歌いながら踊ってみると、振りがまったく追いつかない。
そこでMathewはこんなアドバイスをする。
「こういう気持ちでやりたいとかを共有したほうがいいかも。個人戦じゃなくてチーム戦だから。それがダンスに出ると思うから」
必死に練習するなかで忘れかけていたチーム意識。焦る気持ちを抑え、パフォーマンスの方向性を話し合うことに。すると、すぐにダンスに変化が。急成長ぶりに先生たちからも褒められ、表情には自信があふれている。
Superstarチームは中間発表も順調。SKY-HIからは「マジで言うことないかも。グッズが欲しい、このチームの」とこれ以上ない評価を得た。

理想は「チーム全員で合格すること」
しかし、ひとり浮かない顔つきのTOMOSHI。喜ぶチームメイトをよそに体育館を去ってしまった。
スタッフが声をかけると、「歌がもう本当にダメだったから……」と話す。サビのポイントである地声と裏声の切り替えがうまくいかなかったようだ。
一般応募者のTOMOSHIは、歌いながら踊るのは初挑戦。BMSG TRAINEEとの差を埋めようと、ひとりで朝練をするなど誰よりも練習に励んでいた。だからこそ悔しかった。
「自分だけこんな歌で……チームに申しわけない」とスタッフに話していると、「なんか落ち込んでる? そういうの似合わへんからやめて!」とRAITOが声をかけてきた。

するとほかのメンバーもTOMOSHIのまわりに集まる。「ていうか、めちゃくちゃ(声)出てたやん! 超よかったよ!」と励ますKANONに、続けて自分もミスしたと明るく話すRAITO。大丈夫だと元気づけようとする彼らの優しさに触れ、TOMOSHIは涙が抑えられなくなってしまった。
TOMOSHIの悔しさをメンバーたちもよく理解しているのだろう。そのあとの練習はいつも以上に明るく盛り上げ、彼を元気づけていく。この日の練習を通してさらに深まったチームの絆。彼らの理想は「チーム全員で合格すること」になっていた。

審査会場を盛り上げた“いい曲”
そしてついに本番へ。初めはクールな表情で惹きつけていくも、徐々に表情を崩しながらエモーショナルな歌声を響かせていく。風通しのよさを感じながらも、歌やダンスには隙がない。ラスサビに向けて会場の熱が上がっていく様子が映像ですら伝わってくる。
曲が終わると、SKY-HIは腕を高く上げて拍手したあとで「最高! ありがとうございました!」と歓喜。「何がうれしいってさ、最初に出てくる感想が『うわーいい曲だな』なんだよね。(……)体と顔と声を使って音楽を演奏する人として、ものすごく高いレベルのパフォーマンスをしてくれたからだと思います」と大絶賛した。
チームワークの重要性を意識する最年長のREN
最後は、KEISHIN、 AOI、REN、TAICHI、KANによるチーム。課題曲はKREVA「音色」だ。質感とニュアンスが大事というこの振り付け。あまり激しくはないとはいえ、短時間での振り入れはやはり難しいようだ。「角度とか見せ方とかが難しい」(AOI)、「ついていくのに必死です」(KEISHIN)と困惑している。


そんななかで特に焦りを感じていたのは、チーム唯一の一般応募者・KANだった。ダンスを始めて3年という彼は、BMSG TRAINEEとの実力の差を感じていた。
そんなKANを気にかけていたのが、チーム最年長のREN。気さくな性格で距離を縮めながら支えていく。RENは2023年にBMSG TRAINEEに合格し、トレーニー期間はRUI、TAIKI、KANONに次ぐ。その経験からチームワークの重要性をよくわかっているのだろう。

SKY-HIが影響を受けたMummy-Dの姿勢
この課題曲は、SKY-HIいわく“自分の声色、発声、声を見つけなければ曲に食われる”という。音色チームは自分らしい声を求められる──そんななかで、TAICHIは自分に自信を持てずにいた。
自信を持てていないのは、TAICHIだけではない。この合宿にはまだ自信を獲得する過程の中にいる参加者もたくさんいる。そんな彼らにSKY-HIは何度も「すぐできるじゃん!」と連発していた。これはSKY-HI自身が20代のころに言われてうれしかった言葉だという。

忙しい中でも参加者たちが練習している教室を駆け巡るSKY-HI。熱心に指導するのには、とある人の影響があった。
「RHYMESTERのMummy-Dさんがすごく親身に悩みを聞いてくれていて……」
SKY-HIがまだ何者でもないころから気にかけてくれていた。若手たちの相談を聞くMummy-Dになぜそんなに気にかけるのか聞くと、彼はこう答えたとか。
「だって俺にしか見えない、俺からしたらちょっと前の俺だもん。それは優しくするだろ、自分には」
そんなMummy-Dの精神に、SKY-HIは影響を受けていた。実際に、オーディションに参加している彼らは少し前の自分にしか見えないという。
「今回メンバーになる子以外もこの世代がヤバイ子たちになって、日本の若者みんなが夢を見るようになったら国がボトムアップする。それをやりたいから育成に本気」

一丸となってパフォーマンスを磨いていく音色チーム
合宿3日目。音色チームはようやく歌とダンスの通し練習をスタートさせた。やはり歌が難しい。練習をチェックしにきたSKY-HIにも、「ボイトレでやったこととか、動きながらだとポロっと抜けてたよね」と指摘されてしまう。
中間発表でも歌の表現が課題に。「弱くは歌えているけど、優しく歌うとか繊細に歌うとはまたちょっと違うかな。(……)これは音符をゆっくり味わって」とSKY-HIからアドバイスを受ける。
自分たちの歌声を探すメンバーたち。本番が迫るなかで焦りが募る。RENはそんな空気を察してかチームを鼓舞し続けていた。
「ずっといいねいいねいいねってなってるから、バンって伸びたいのよ」
「ここらへんで1回、3段飛ばしぐらいした進化をしていかないと」
「本当にいい感じだな、めっちゃ(体に)入ってきてる」
RENを中心にチーム一丸となってパフォーマンスを磨いていく音色チーム。本番前日の合宿4日目では、細かいポイントの最終調整を行い、納得するできに仕上げていた。

それぞれの声と顔が見えたパファーマンス
本番がやってきた。KEISHINは情熱的に、 AOIは大人びた色気で、RENは凛々しくエモーショナルに、TAICHIは儚く繊細に、KANはエネルギッシュに、愛情を表現していく。この曲のそれぞれの解釈が歌声から見えてくるようだった。
「音色」という曲は、裸になる瞬間が多いからこそ難しいという。SKY-HIは「しっかりと声が剥き出しになるので、声を磨くには非常によかったと思う」と話し、パフォーマンスでそれぞれの声と顔を見せてもらえたと評価した。
次回は3次審査の結果発表へ。30人中約半分が脱落するという本審査。「まだ決めきれていないぐらいの気持ち」というSKY-HIが、最終的に選んだのは誰なのか。
【『THE LAST PIECE』配信スケジュール】
■Ep.03:2025年7月18日(金)20時~
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