ホモソーシャルは“空間”が作り出す?序列を窺う「男性的な組織」に思うこと【夕方5時の会議室 #9】

編集=高橋千里


少女写真家・飯田エリカと、QJ編集部・高橋の音声番組『夕方5時の会議室』。メディア業界で働く同世代ふたりが、日常で感じているモヤモヤを、ゆる〜くカジュアルにお話しします。

第9回は、前回に引き続き文筆家・小沼理(おさむ)さんがゲストで登場。著書『共感と距離感の練習』(柏書房)に収録されている「男性的」の章から、自分たちの経験も踏まえて「男性的な組織」へのモヤモヤを語ります。

※音声収録は2025年5月16日に行いました

この記事では、音声の前半部分だけをテキストで公開。後半はYouTubeまたはPodcastよりお聴きください。

「男性的な感じ」は複数人になると出現する

小沼 『共感と距離感の練習』に収録されている「男性的」の章の中で、(ライターとしての)仕事の話にも少し触れています。

飯田 作業量は変わらないのに、(メディアや案件によって)ギャランティに大きく差がある、みたいな。

高橋 本当に耳が痛いと思いながら読んでました……(泣)。私は発注する側なので、ライターさんからそういう話を聞くと、本当に申し訳ありません……と。

小沼 なんか不思議なんですよね。ざっくりと広告案件かそうじゃない案件なのかとか、あとは取り引きをする企業がどのくらいの規模感なのか、みたいなところで(ギャランティの)桁が違ったりとかするんですよね。これはいったいなんなんだろう?っていうのをいつも思いながらやってました(笑)。

飯田 そうですね、母体によって超変わりますよね。それは撮影もそうなので、すごくわかるなぁと思いながら。あと、その話に出てくる社長の描き方がちょっとおもしろかった(笑)。

高橋 本当に、(頭の中に)浮かびました! 「男性的」という章で描かれているのが、小沼さんがフリーライター時代のとある広告案件で、高層のオフィスビルで社長にインタビューするって話で。その社長が、三島由紀夫とトニー・レオンを合わせたような雰囲気で、小沼さんはエッセイの中で三島レオンと呼んでいて(笑)。その現場がすごく男性的だった……みたいな話ですよね。

小沼 そうですね。(自分含めスタッフも)男性ばっかりだったし、そのときの会話の回し方とか、社長のちょっと威圧的な感じというか。

飯田 読んでるだけで、「うわぁ、品定めされてる」とキュッとなる感じがすごく伝わってきて、いるよな〜……って。

小沼 高層ビルで社長をやられている方に対する、ちょっと心的距離がある部分も正直あって、それを抱えてるとすごく威圧的な感じで来られるから、「なんか見抜かれてる?」みたいな気持ちになっちゃうんですよ。そこでドギマギしてしまう自分も嫌だし、かなりの居心地の悪さというか。でも、仕事だしお金が出てるので、こなすしかない……みたいな感じで。

飯田 別に毎回そういうことがあるわけではなく、特に三島レオンの現場は象徴的だったってことですね。あと、高橋さんが『共感と距離感の練習』を読む中で、この話が特に印象的だったって言ったのも、けっこう意外で。

高橋 私、ずっと女性社会で生きてきたんですよ。前は女性向けWEB媒体の編集部にいたんですけど、そこも(社員が)ほぼ全員女性。そもそも3姉妹で育ってきて、親戚も女性が多くて。大学の同級生もそこまで男性・女性とか、性別っぽさみたいなのはなかったので。だから「男性的な組織」っていうのが今までピンとこなかったんですよ。

でも出版社ってけっこう男性が多くて、いろんな会議に出たりするなかで「“男性っぽい”ってこういうことかな?」って思う瞬間が何度かあったりして。実際、小沼さんがその場にいらっしゃったとき、どういうところで特に「男性っぽい」って思ったんですかね?

小沼 僕のときは「その場で一番偉い人の反応を窺っているな」っていう感覚があって。インタビューの相手が社長だからっていうのはもちろんあるんですけど、それとは違う序列のようなものが、もうちょっと深いところから出てきている感じがしたんですよね。仕事だから、クライアントだから……ではない、違う層から出てきているような感覚があって。

あと、そういう男性的な感じって、たとえば1対1で話しているときはあんまり出なかったりするんですよ。複数人になったときにそれがより顕著に出る。そうさせてしまうものがその場にあるのかなっていうのをすごく感じて、それがすごく象徴的だったので、この本に入れたいなと思ったんです。

いわゆるホモソ(ホモソーシャル)といわれることだと思うんですけど、ホモソ的な人がいるっていうよりは、そういう空間が出現するっていうこと。ホモソ的な価値観を、自分の中に深く根差している。1対1の関係でもそれが出る人もいるんだけど、そうじゃない人でも、空間の中に投げ込まれると、自然とそうなっちゃうし、それは自分にもあるなっていうことを書いたんですよね。

【続きはこちらから】男性同士のケアが難しい理由とは?

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次回も、続・小沼さんゲスト回。社会運動に抵抗がある人でも少しずつ始められる「アクティビズム柔軟体操」について話します。

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  • 『共感と距離感の練習』(柏書房)

    「わかる」なんて簡単に言えない、「わからない」とも言いたくない。ゲイ男性の著者が、自他のあわいで揺れながら考えるエッセイ。

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