写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
雪の日の記憶
第92回。
先月降った雪の上。
都心の雪化粧も最近はずいぶん見られなくなって寂しい冬を過ごしていたが、この日は珍しく興奮し、犬のように外へ出た。
子供のころは降り積もった雪に足を滑らせながら公園に向かい、家から湧き出た友達と雪合戦をしたのを覚えている。
なぜか冷たくなかったあのころ。
クリスマスの時期に合わせて降ってくれた平成はきっとロマンにあふれていたのだろう。
竹内まりやの声とフライドチキンに感じるノスタルジー。
そんな過去に耽って佇む横断歩道。
反対側に足を汚したオラフが立っていた。
フリー素材の雪だるまは戦力外通告を受けてしまったようだ。
雪合戦は今、どこへ行ったらできるかな。
乾いた冷気を口に含んで湿っぽいため息を吐いた。
車は浮き足立って明治通りを目指す。
私は慎重にそのあとを追っかける。
白塗りの東京も変わらずに冷たい。
NAOYA(ONE N’ ONLY)、中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ、工藤遥、RUI・TAIKI・KANON(BMSG TRAINEE)、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。