写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
歴史の匂い
第83回。
自転車修理の合間に訪れた古本屋。
店頭には懐かしい黒木メイサさんの写真集が置いてあり、平成を感じた。
平成といえば18歳ごろに謎のマイブームがあり、電車に乗って神保町を訪れては“ひとりカレーからの古本屋巡り”をしていたことをふと思い出した。
古本は一冊も買わなかった上にカレーもそこまで好物ではないが。
なぜかカレー激戦区といわれる神保町に目をつけ、どんなもんなのかと知りたくなり、食べ歩いたのだと思う。
とにかく散歩が好きな自分は、街を練り歩いてはその街の空気や人々の営みを感じることが好きだった。
中でも古本屋はその街の歴史を深く知っているような顔をしていたため、必ず入ってみてはその静けさに耳を澄まして、古本が醸すくたびれた歴史を嗅いでいたのだろう。
結局、わからず出るのだが。
そんな無意味で無益な時間を好んでいた自分のほこり被った思い出がこの日によみがえった。
なんか心地よかったことを思い出した。
また始めよう。
大人になったから締めは銭湯にしよう。
てか、今度こそ一冊は買おう。
NAOYA(ONE N’ ONLY)、中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ、工藤遥、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。