さすらいラビー×ママタルト大学お笑い対談<後編>「学生お笑いなんて恥ずかしいと思え」と言われた時代を経て



さすらいラビー、ママタルトが注目する学生芸人

——ふた組とも『大学芸会』のMCを経験されていますが、今と昔で学生芸人に違いは感じますか?

中田 今の人たちのほうが、技術は上がってるなって思います。

さすらいラビー中田和伸
学生芸人のレベルの高さを語る中田が、まるで刑事ドラマのワンシーンみたいになった

肥満 ビデボーイズ(昨年、法政大学お笑いサークルHOSを卒業)のネタとか観てて、すごいなって。たまたま昨日サスペンダーズさんのYouTubeでダージリン(サスペンダーズ依藤たかゆきが大学時代に組んでいたコンビ)の動画を観てて、当時はめちゃくちゃうまいと思ってたけど、今観ると、これくらいの人は多いなって。ただ、さすらいラビーだけは、当時からめちゃくちゃうまいなって思ったけど。

中田 “上手な大学生”っていうネタをしてたよね。

肥満 安全ナイフ(現:ひつじねいり細田祥平とストレッチーズ高木貫太が組んでいたコンビ)とかもうまいけど、今の学生芸人のほうがうまいなって思っちゃう。ブラウン管ベイビーとかもそう。

——では、今の学生お笑いでおもしろいと思う芸人は誰ですか?

檜原 カラス水ですね。あと、喜劇研究会のとれたて力もおもしろいと思います。

ママタルト檜原洋平
おすすめの学生芸人を聞かれて笑顔が戻ってきた檜原

肥満 同志社の喜劇研ってすごいよね! とれたて力、おもしろいよなぁ。ベグBOGとかも。

中田 それこそ俺らも、カジナガサキとかの大阪組と交流してたけど、喜劇研じゃないもんね。

檜原 僕が2013年にわらゼミ受けたとき、喜劇研からも5、6組くらい受けに来てたんですよ。喜劇研に入っていた友達が、「みんなも、もっとわらゼミの大会に出たらいいよ!」って言ったらしくて。でも、みんなで勇気出してオーディション受けに行ったけどダメで、なかなかなじめなくて帰る感じになってたから、喜劇研のみんなは「そりゃあ優勝したら楽しいよ」ってなってて。当時の喜劇研はたぶん、東京に対して、いいイメージがなかったんじゃないかなぁ。

肥満 それがのちに爆発するんだね。

ママタルト大鶴肥満
視力がめちゃくちゃ低いのに裸眼で取材を受けたので、実はなんにも見えてない肥満

檜原 ……あと、ユーロビート!

肥満 急に話戻ったな! ユーロビートがありだったら、キミガヨも!! あと、へび!

檜原 あと逆鱗クラブとか! 警察と謹製のコンビ(電王)とか……!

ママタルト檜原洋平
おすすめの学生芸人について話していたら元気になってきた檜原

肥満 ひわちゃんどんどん出てくるなぁ……。

さすらいラビー、ママタルトが芸人として志す道

——今の芸人さんは昔に比べていろんな活躍の道があると思うんですが、ふた組の今後の目標は?

檜原 僕は……M-1チャンピオンです……!

肥満 言わずもがなM-1チャンピオンです!! あと、テレビ王になりたいですね!

ママタルト大鶴肥満
トムとジェリーと肥満

宇野 M-1はもちろんですけど、“ネタがおもしろい人たち”ってことで世に知られたいですね。

——でも、『M-1グランプリ』がない時期もありましたよね?

檜原 確かに、僕らが大学生のときはずっと『THE MANZAI』でした。僕は2014年に就職活動して、AVの制作会社から特待生みたいなかたちで内定もらったんですけど、2泊3日の内定者研修で茨城の奥に行ったときから、ちょっとだけ「やっぱり就職するのやめたい」と思い始めて、最後の最後で内定辞退して……。

ママタルト檜原洋平
M-1のことを聞かれたのに、自分が内定を断った話に着地しちゃった檜原

肥満 M-1がなかったらなかったで、お笑いやりたいみたいな気持ちはあるんだろうなぁ。

中田 卒業したてのときは、本当に“芸人”になりたくて、とにかく“芸人”を名乗りたいって思ってました。でも今は、ラランドやアンゴラ村長が出てきて、いろんな働き方や芸人のかたちがあって、それも素晴らしいと思ってて。僕は今こうやってスタートしちゃってるから、このまま走り切って、テレビスターまで行きたいです。

さすらいラビー×ママタルト
阿佐ヶ谷ロフトAで取材をしたが、この日イベントの出演予定はないさすらいラビーと、このあとイベント出演したママタルト

2021年の今、「大学お笑い」はひとつのブランドになりつつあるが、ほんの数年前まで「学生お笑いなんて恥ずかしい」というイメージがあったことを私も覚えている。2011年、当時中学生だった私は、『渋谷ばちーんんんLive』というよしもと若手芸人のバトルライブの生配信内で「お笑いサークルのノリw」「学生芸人w」といったイジり方をされている若手芸人を観ていた記憶があり、お笑いサークルに入るまでは、“お笑い”好きとしては学生芸人に対していいイメージを持っていなかった。

しかし、昨今のLUDO出身芸人の賞レースでの活躍やラランド、令和ロマンの台頭など、お笑いサークル出身の芸人が結果を残したことで、今では「大学お笑い」がブランド化している。まさに、その変化の渦中にいたのが、今回インタビューしたママタルトやさすらいラビー、そして真空ジェシカやストレッチーズ、ひつじねいりといった同世代の芸人たちなのではないだろうか。

彼らの世代は、『わらいのゼミナール』から今に至るまで、ずっと共に戦いつづけ、「学生お笑いなんて恥ずかしい」と言われる風潮の中でもスタイルを崩さず、ネタを磨きつづけた。言わずもがな、個のコンビとしての強さもあるが、個以上に世代としての強さを感じた。インタビュー時に4人が「細田が~」「かんちゃんが~」「真空のふたりが~」と同世代芸人の話を楽しそうにしていたのも印象的で、彼らは自分たちの“おもしろい”という価値観を、ずっと信じつづけている強さがあるのではないだろうか。時代によっておもしろいとされるネタの傾向も、お笑いファンも変わる。だからこそ、“おもしろい”の価値観が同じ友達のことはずっと信じていたい。


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