「太田エロティック・マンガ賞」受賞作品と山本直樹による講評を発表

2020.2.28

太田出版主催の「太田エロティック・マンガ賞」の選考結果が発表され、200作品以上の応募の中からエロティクス賞・優秀賞・奨励賞の合わせて5作が入賞した。エロティクス賞のzngo「苦楽外」は、後日「pixivコミック」への掲載が予定されている。

「太田エロティック・マンガ賞」はエロティシズムをベースに、独創的、刺激的、官能的な作品を、プロ・アマ問わずに募集。入賞作品には、審査委員長を務めた山本直樹からの講評も寄せられた。

また、選考結果の発表サイトでは、最終選考に残るも受賞とはならなかった10作品への講評も掲載されている。

入賞作品と山本直樹による講評

エロティクス賞:zngo「苦楽外」

ずば抜けて自分の世界ができていました。エロスという観点とは少し違うかもしれませんが、絵もうまく幻想文学的な味わいもすばらしくて、文句のつけようがないと思います。もしかしてプロ経験ある人なのかな。

今回同時に応募されていた『婆偶』のほうが、もしかしたらこの人本来の作風かもしれないけれど、その持ち味が出すぎていて、入っていける読者が少ないかもしれないと感じました。こっちはもう少し門戸が広いような気がする。同じく同時応募だった『大雨小歌』はわりとスケッチ的な感じで、僕も含めてそれが大好きな人はいますけど、作品としてバランスがよいのはやはり『苦楽外』だと思います。

優秀賞:上田たんぽぽ「ランデブー」

不思議な世界を描こうとする人はたくさんいますが、実際にこのように描ける人はなかなか少ないです。エロさもちゃんとあって、男の子も女の子も生き生きと動いてる。作中でキャラクターの気持ちがちゃんと動いているのが伝わるというのはそれ自体ですばらしいことです。終わり方もかっこよかったです。ゴトウユキコさんっぽい世界も感じさせつつ、しっかりと独自の世界を持っていると思います。絵もざっくり描いているようでうまいですし、作品の雰囲気とばっちり合っていました。

奨励賞:いからしひなこ「睡蓮華」

自分の間で描けていますし、お話のリズムやテンポに合わせてページが進んでいくのが読んでいて気持ちよかったです。必ずしもエロがメインではないけれど、しっかりと人物の気持ちが描けているのもすばらしい。この何気ない内容で41ページは多いと思われやすいかもしれないけれど、ちゃんと空気感が出ていて、このマンガに必要なページ数だった気がします。最後、雪の中に蓮華だけっていうのもうまいなと思いました。好きな世界です。

奨励賞:熊と翼「ゲスの極み家族」

絶望的だけどどこか明るい。作者の実体験かと思わされる迫力があります。これが想像だとしたらそれもすごいですけど。同時応募作『ショートエログラム』も、短いなりにまとまっていてよいと思いました。でもこの作品くらい長いほうが読みでがある。ただ絵のほうが、言わば本番とラフが半々くらいの完成度なので、次はよりしっかりと仕上がったものを読んでみたいです。

奨励賞:海岸亭「美大予備校生の苦悩」

お話に勢いがあって、作中世界をしっかり描けていました。それだけでいいですよね。主人公も相手の女の子もちゃんと生きて動いている。終わり方も安易なハッピーエンドにするでもなく、無理やりどん底に行くでもなく。キャラふたりとも美大予備校生活がずっと続いていくと察せられるところがいいと思いました。

山本直樹 総評

今回は全体的にレベルが高く、大賞と優秀賞をどれにしようか迷ったのは初めてですし、本当なら奨励賞を20本出したいくらいだったし、講評した以外にも光る作品は多々ありました。その中で大賞を獲得したzngoさんと優秀賞の上田さんの評価には、実際あまり差がありませんでした。奨励賞の3名も含めてみなさん個性をじゅうぶん持っている人たちなので、細かくどうこう言うことはありません。とにかく描き続けてください。どんどん行っちゃってください。

残念だったのはネームの字が小さく読みづらい作品があったことかな。好きな長さにできるのがweb投稿のよい点だと思うので。ストーリーやネームの量に合わせてページ数を変えるのもひとつの手でしょう。あと最近の傾向として近親相姦ネタが多いですね。ドラマチックなお話にしやすいように見えますが、ショックが続くとお話が平板になってしまいます。

マンガを描いていると、読者に対してだけじゃなく描いてる自分すらも「こんなはずじゃなかった…!」っていうよい意味の裏切りが顔を出すときがあるんです。そこを逃さず首根っこを捕まえると、もっとお話がおもしろくなるはずです。

「太田エロティック・マンガ賞」
審査員:山本直樹、太田出版編集部、pixiv編集員
賞金:エロティクス賞 10万円(1名)、優秀賞 5万円(1名)、奨励賞 3万円(若干名)
※次回の募集については「太田エロティック・マンガ賞」募集ページで案内予定
公式サイト
2019年上半期 選考結果発表ページ
「pixivコミック」選考結果発表ページ


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