「閉めた男」、吉田
――曲のなかに、「カーテンをちょっとずつ」とか、「カーテン閉まったぞ」という吉田さんの声がサンプリングされてますよね。どういう話の流れであの言葉が生まれたんですか。
吉田 僕、大学時代にピザーラでバイトしてたんです。で、そのバイト自体は4年のときに辞めたんですけど、なぜか今でもそのバイトで一緒だった先輩の実家に住ませてもらってて。一軒家の一部屋を借りて、すぐ隣に先輩のご両親が住んでる棟があるんですけど。
小出 それ、けっこう大きな家だよね?
吉田 そうですね。で、俺が借りてる部屋の前には、ちょっとした庭があって。ある朝起きたら、みんながその庭の草むしりをしてたんです。立場的に、ここは自分も行かないわけにはいかないじゃないですか。でも、その時点でもうお昼前の11時くらいだったんで、今ここで行ったら「あいつ、こんな時間まで寝てんのか」みたいに思われかねない。なので、やっぱりここはやめておこうと。
―――(笑)。
吉田 で、その日はカーテンを開けたまま網戸で寝ていたから、部屋にいることがバレないように、ちょっとずつ、ちょっとずつ、カーテンを閉めたんです。で、なんとかバレずにカーテンを閉めたと思ったら、窓の向こうから「カーテン閉まったぞ!」という声が聞こえて。
小出 それ以来、吉田くんはまわりの人たちから「カーテンを閉めた男」として冷たい目で見られてると(笑)。
――なるほど(笑)。あの音声はそこから拾ったんですね。
小出 そうなんです。「カーテンをちょっとずつ」って、なんとなく興味を惹かれるし、なんとなく深い意味がありそうにも聞こえる。話のオチになってる「カーテン閉まったぞ!」の言い方も、妙にサビっぽいぞと(笑)。あと、このエピソードを採用しようと思った理由はもうひとつあって。吉田くんと飲み会をやった前日に、マテリアルクラブのレコーディングで女優の岸井ゆきのちゃんにリーディングをやってもらったんですけど、そこで僕が用意してたもののタイトルが「カーテン」だったんですよ。これはもう僥倖というか、天啓というか。完全にレコーディング・マジックが起きたなと。
吉田 なにかに導かれたのかもしんないっすね。
小出 やかましいわ!(笑)