『Quick Japan』と東急歌舞伎町タワーを運営する株式会社TSTエンタテイメントのプロデュースによる、新しい音楽イベント『CrossFlow』の開催が決定。イベントのテーマは<“ネット”から「世界」を奏でる>。
昨年4月に『「世界の終わり」を紡ぐあなたへ──デジタルテクノロジーと「切なさ」の編集術』(太田出版)を上梓した文筆家・編集者の北出栞は、「“ネット系”とはテクノロジーの力を借りて自らのイメージを操作し、コラボレーション相手やタイアップ先に応じて柔軟にその表現を変えるクリエイティブへの態度」だと語る。
今回『CrossFlow』開催にあたって、アニメーションやボカロ音楽を批評・分析の対象としてきた北出が“ネット系”と呼ばれるジャンルの歴史的な文脈をたどり、出演アーティストの独自性を解き明かす。
Vol.1は5月24日(土)にZepp Shinjuku(TOKYO)で開催となり、NOMELON NOLEMON、4s4ki、三月のパンタシア、Suupeasが出演。アーティストは今後も追加発表を予定している。
目次
“ネット系”の分水嶺は「2007年」
Quick Japan発の新しい音楽イベント、『CrossFlow』がスタートする。動画プラットフォームの登場以降に台頭した“ネット系”と呼ばれる音楽ジャンルやアーティストに焦点を当てており、第一弾アーティストとして、NOMELON NOLEMON、4s4ki、三月のパンタシア、Suupeasの出演が発表されている。
本稿はこの“ネット系”と呼ばれるジャンルの歴史的な文脈をたどり、出演アーティストのその中における位置づけを探るものである。
まず、文中にある「動画プラットフォームの登場」とは、具体的にはYouTubeとニコニコ動画の登場を指しているだろう。本格的な盛り上がりも加味すると「2007年」を分水嶺として考えることができ、iPhoneやTwitter、さらに言えば初音ミクの登場もこの周辺だ。現在にまで続くオンライン・コラボレーションのインフラは、ほぼ同時に出揃ったと言える。“ネット系”と言うとき想定されているのは、「2007年以降のインターネット」なのだ。
「2007年」以前/以後を分かつ変化として、やはり映像メディアへの参入障壁が低くなったことは大きい。テレビが映像メディアの中心にあった時代、ミュージックビデオは「プロモーションビデオ」と呼ばれ、あくまで音楽を売るための二次的な宣伝素材として位置づけられていた。
しかし「2007年」に前後して映像編集用のソフトウェアが安価になりアマチュアの映像クリエイターが増え、さらにソーシャルメディア上のクリエイターコミュニティの発達によって、ミュージシャンが直接映像クリエイターとつながり、ビジュアルなストーリーテリングを自らのコントロールの下で行うことができるようになった。
また、ソーシャルメディアの普及は同時にファンコミュニティも発達させた。たとえアマチュアベースの簡素なリリックビデオであっても、その情報量の少なさを逆手に取って、考察的な広がりに期待するという戦略を取るということも可能になったのである。じんによる「カゲロウプロジェクト」をはじめとして、作曲家自身がミュージックビデオの余白を埋める小説を執筆するといったメディアミックス的手法も、ボーカロイドシーンを中心に確立された。
「憧れ」から「オープンワールド」へ
近年はメガプラットフォームによる囲い込みも問題になっているものの、文化としての「インターネット的」なるものは現在に至るまで「脱中心的」であることを志向している。その自然な帰結として、アーティストに神秘性を持たせて「憧れ」を抱いてもらうモデルよりも、ユーザーひとりひとりが自らを主人公として投影しやすい「オープンワールド」性があらゆるコンテンツにおいて優勢となった(もちろんK-POPグループなど現在においても「憧れ」モデルがうまく機能している事例はあるが、ソーシャルメディアを活用した「ダンスチャレンジ」の仕掛けなど、やはりユーザーの参加を促す「オープンワールド」性との掛け合わせの中で成立している)。
“ネット系”に括られるアーティストの宣材写真がイラスト一枚だったりすることが多いのは、「素顔を隠したいから」というよりは、「そのほうがより世界観に入ってもらいやすいから」だと言えるだろう。
「世界観重視」になったといえど、アーティスト本人の意思がその隅々まで行き届いていることは重要で、その結果としてイラストレーター・映像クリエイター・グラフィックデザイナー・スタイリストなど、さまざまな分野の専門家を集めた小規模なチームが存在感を増すことになる。
「ユニット」や「プロジェクト」、海外では「コレクティブ」と言われることが多く、これはラッパー(演者)とビートメイカー(作曲家)が分かれることの多いヒップホップの世界を中心に定着した経緯を持つが、日本での代表例といえば、常田大希が主宰を務めるPERIMETRONだと言えるだろう。King Gnuは、「憧れ」から「参加」へ、「バンド」から「コレクティブ」へという時代の変化を踏まえつつも、「あえて」擬古的なロックバンドのスタイルにこだわるという強い意思の下に成立したグループだと考えると、その存在を理解しやすい。
とはいえ、彼らは「代表例にして例外」なのであって、基本的にはボーカリストやコンポーザーを正規メンバーとして中核に据えつつ、固定的なメンバーに縛られない形態が“ネット系”においては中心的であると言えるだろう。
テクノロジーがもたらすクリエイティブの柔軟性
2020年代以降の世界において忘れてはならない文脈としては、ハイパーポップというものがある。これはコロナ禍の閉塞感を吹き飛ばすように出現した、「音割れ」のような通常のポップスではノイズとして排除される要素をあえて取り入れるなどした破壊的な音響表現が特徴のエレクトロニック・ミュージックのスタイルで、音楽投稿プラットフォーム/コミュニティであるSoundCloudを中心に発展した(なお、名称はSpotifyの公式プレイリスト「hyperpop」を由来としている)。ボーカルにエフェクトをかけたり、ピッチを変更することによって生来の「声の性別」を攪乱するなどの実践が見られるのも特徴で、この特徴からクィア・アートの文脈と結びつけて語られることもある。
チャーリーXCXはハイパーポップを代表するアーティストとして見なされる一人だが、2024年の音楽シーンを代表するアルバムとしても評価された『brat』のリリースは、素っ気ないタイトルフォントのみのアートワークに過去作のものも含めてすべて差し替えるというアクションと同時に行われ、これは「女性アーティスト」は自らのポートレートをアートワークにしなければならないとされがちな業界慣習への意義申し立てという意味を持っていた。
イメージを操作・加工することでジェンダー・アイデンティティの攪乱を目論むクィア・アートの実践を超えて、まさしく「イメージ・ゼロ」の極限までたどり着いたと言える試みだったが、日本のボーカロイドによる創作は、ある意味でこのラディカルさを先取りしていたとも言える。
「ボカロP」という呼称にも残っている通り、架空のキャラクターを「プロデュース」するという側面も根強いボーカロイド文化だが、自らの生まれ持った「声の性別」とは異なる歌声の楽曲を一人でも作れるというのは、ツールとしての合成音声が持つ大きな魅力だ。
こうした事例をもとに、“ネット系”とはテクノロジーの力を借りて自らのイメージを操作し、コラボレーション相手やタイアップ先に応じて柔軟にその表現を変えるクリエイティブへの態度だと捉えることもできる。多極化した現在のエンターテインメントシーンにおいて米津玄師やYOASOBIが突出して多くのタイアップを手がけていることと、両者がボーカロイドシーンに出自を持つことは無関係ではないはずだ。
ノーメロ、4s4ki、サンパシら、“ネット系”を象徴するアーティストたち
以上を踏まえて、現在発表されている『CrossFlow』の出演アーティストについて見ていこう。
NOLEMON NOMELONはボカロPのツミキをコンポーザーに、ボーカリストのみきまりあを迎えた二人組のユニットである。特筆すべきはツミキがギター・鍵盤・ドラムなどさまざまな楽器をステージ上で演奏してみせる点だ。ボーカロイドシーン由来の複雑なリズムパターンも随所に見られる楽曲を二人のフィジカルがどのように乗りこなすのかは、ライブの見どころのひとつである。
三月のパンタシアはボーカリストのみあを中心に、楽曲ごとに異なるコンポーザーを迎えるプロジェクトだ。インディーズ時代から数えると10年のキャリアの中でイラストのみだったビジュアルからみあ本人の姿を映すようになるなど、徐々にセルフイメージを刷新しているのが興味深い。みあは音楽と連動した短編小説も発表しており、事前に読み込むことでより世界観に入り込めるはずだ。
4s4kiは日本人として最も早くSpotifyの「hyperpop」プレイリストに楽曲が選出された、国内における同ジャンルの代表的なアーティストだ。トラックメイクも自ら手がけ、海外アーティストとの共作も多い。そのビビッドでサイバーなビジュアルには本人の美意識が貫かれており、『コードギアス 反逆のルルーシュ』にインスパイアされた作品を発表するなどアニメカルチャーからの影響もポイントだ。
Suupeasは新人ユニットであり情報が少ないが、ボカロPを中心にさまざまなコンポーザーを招いているという点は三月のパンタシアに近く、しかしもう少しTikTok的なインフルエンサー文脈に沿った活動を展開しているようだ。ライブイベントという場でどのようなパフォーマンスを見せるか注目である。
「Quick Japan Presents『CrossFlow』Vol.1」は、2025年5月24日(土)にZepp Shinjukuにて開催。「Vol.1」と銘打たれている通り、今後もさまざまなアーティストがブッキングされることが予想される。インターネットは日々の生活に根ざしたインフラであり、したがって“ネット系”の意味するところも時代の変化に応じて変わっていくだろう。イベントが長く続けば続くほど、定点観測の場として貴重なものとなっていくはずだ。その記念すべき第一回に、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
第1弾出演者として4組が決定

NOMELON NOLEMON(ノーメロン ノーレモン)
クリエイター・ツミキとシンガーソングライター・みきまりあによる音楽ユニット。2021年にデビュー。今年1月の配信リリース曲「ミッドナイト・リフレクション」は映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』挿入歌にもなっている。

4s4ki(アサキ)
作詞、作曲、編曲、DTMでのトラックメイク、ピアノでの弾き語りなどをすべてひとりでこなし、世界に向けてオルタナティブ・ポップスを発信する新世代アーティスト。今年1月にはアメリカのEDMプロデューサーYULTRONとのユニットで、配信EP『44th Dimension』をリリースした。

三月のパンタシア(さんがつのぱんたしあ)
ボーカル「みあ」を中心とした、“終わりと始まりの物語を空想し、青くて痛い青春時代の繊細な感情を暴く”プロジェクト。2016年にメジャーデビュー。“音楽×小説×イラスト”を連動させた自主企画『ガールズブルー』をWEB上で展開している。3月29日(土)自主企画イベント『三月の春のパン(タシア)祭り 2025 -リベンジの春-』(w/Sou,ナナヲアカリ)を開催。イベントに向けてナナヲアカリとの初コラボ曲「天使になりたいっ!」を3月7日(金)に配信リリース。

Suupeas(スーピーズ)
見た目も性格も“ゆるゆるふわふわ”なふたりが、ボカロPによる“ボカロック”を歌う「お昼寝系」ガールズ音楽ユニット。歌手だけでなく声優やプロ雀士としても活躍するひなぷ(武田雛歩)と、ちょっと変わったことも真顔でできる謎の美少女・はるぽんによるふたり組。最高の睡眠を応援したい気持ち応援ソング「しーぴんすりーぴん」をリリースした。
『CrossFlow』Vol.1 開催概要

公演名:Quick Japan Presents『CrossFlow』Vol.1
日程:2025年5月24日(土)
時間:開場14:15/開演15:00/終演20:00 予定
会場:Zepp Shinjuku(TOKYO)/東京都新宿区歌舞伎町1-29 B1F-B4F
出演:NOMELON NOLEMON、4s4ki、三月のパンタシア、Suupeasほか
チケット料金:一般6,000円(税込)/U-22特別割引4,000円(税込)※限定数販売
※入場時には本人確認を行います。【顔写真つきの身分証明書1点】を必ずお持ちください
主催:株式会社TSTエンタテイメント、Quick Japan
協力:株式会社TWIN PLANET(ツインプラネット)
制作:株式会社リーディ
【チケット販売スケジュール】
<第一次先行抽選>2月19日(水)18:00〜3月10日(月)23:59
<第二次先行抽選>3月15日(土)12:00〜4月7日(月)23:59
<一般発売>4月12日(土)12:00〜
注意事項
<U-22チケットについて>
・U-22チケットは22歳以下の方が購入できる限定数販売の割引チケットです。
・入場時に顔写真つき身分証による年齢確認を行います。(運転免許証、パスポート、学生証等)
・22歳以下の方が一般チケットを購入することも可能です。
<本人確認について>
・有効な身分証明書は以下のとおりです。
パスポート
運転免許証
学生証(顔写真つきのもの)
住民基本台帳カード
障害者手帳(顔写真つきのもの)
マイナンバーカード(個人番号の通知カードは対象外です)
外国人登録証明書・在留カード・特別永住者証明書のうちいずれか
・顔写真のないものは無効となりますのでご了承ください。
お持ちでない場合は、あらかじめお問い合わせフォームからご連絡ください。
<会場について>
・会場外への外出や再入場はできません。
・会場内への飲食物のお持ち込みは禁止となります。
<公演について>
・開場時間や公演時間は予告なく変更になる可能性がございます。
・アーティストの撮影、録画、録音等は禁止となります。発覚した場合、データは直ちに消去し、悪質な場合は退場していただきます。
・出演者変更・出演時間変更に伴う払い戻しはございません。
<そのほか>
・20歳未満の方の飲酒・喫煙は法律で禁止されております。20歳未満の方へのアルコールの販売はいたしません。
・会場内は喫煙所以外すべて禁煙です。
・会場内外で発生した事故、盗難、ケガ等のトラブルについて、主催者および会場と出演者は一切の責任を負いかねます。
・会場内外において迷惑行為を行う方、スタッフの指示に従わない方は退場していただく場合がございます。
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