『梨泰院クラス』『愛の不時着』に見た、何がなんでも楽しませるという韓国エンタメの真骨頂

2020.6.10

欧米のドラマのトレンドとは真逆の試みが成功している『愛の不時着』

そして2本目は『愛の不時着』。“下剋上”の痛快さを一番の売りにした『梨泰院クラス』と異なり、北朝鮮と韓国の対立という、韓国映画でもここまでやった作品はなかったほど生々しい現実が背景。しかし、エンタメ色を前面に出したのがまず出色。

韓国の財閥の令嬢で、セレブでもあるユン・セリ(映画『私の頭の中の消しゴム』のソン・イェジン)はパラグライダーに乗った直後、竜巻に巻き込まれてしまうが、不時着したのは北朝鮮。そこでイケメンの軍人リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)と出会い、韓国への帰還を目指すが、彼と互いに愛情を抱くようになる。

『愛の不時着』予告編

ひとつネタバレすると、筆者は当初、舞台は北朝鮮からすぐに韓国に移ると予想した。38度線を間に挟んだ韓国と北朝鮮は社会が大きく異なり、ドラマにするのが大変だからだ。しかし本作はかなり長い間、北朝鮮で展開。そして北朝鮮のある村に住む、兵士たち・おばさんたちも重要な登場人物になっていく。なので超シリアスな場面の直後、コント風のコミカルな場面がつづいたかと思えば、その反対もしょっちゅうで、シリアスドラマとコメディドラマの境界線が明確な欧米の作品と比べると、本作はまるで“カオス(混沌)”を思わせる。

上級軍人・政治家・実業家から下級軍人・庶民まで幅広い登場人物が集まるなか、恋愛、陰謀、冒険など多彩な見どころを満載。とびきりロマンティックな場面(スイスでもロケをしている)と『マッドマックス』風の改造トラックが登場するアクションが同居して、独自の相乗効果を発揮しているのだ。近年、欧米のドラマは老若男女の視聴者、それぞれの好みに沿う傾向があるが、真逆の方向に進み、それに成功しているのがおもしろい。

もちろん、韓国と北朝鮮の分断という題材そのものが世界的にもユニークだ。なおかつ、今なお『冬のソナタ』に通じる“初恋”、“四角関係”、“雪”といったベタな要素も駆使。ジョンヒョクはあるエピソードで宿敵にこう言い放つ。「俺の恋人がお前と同じ空の下にいる限り、俺は去らない」。世界の大衆はこういうのを望んでいるのではないか。

『梨泰院クラス』と『愛の不時着』、日本人の感覚からするといずれもやり過ぎている部分が多いのだが、その情熱に接し、人はなぜドラマを観るのかという原点を考えさせられる。

この記事の画像(全20枚)




関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

関連記事

qjweb_ikeda_satoshi_movie_200415_main

外出自粛要請が長引く今こそ観たい!映画スターが主演した海外ドラマの注目作

BTS_MAP-OF-THE-SOUL:7

BTSの4thアルバムから読み取れる次作へのマニフェストとは?(imdkm)

『パラサイト』だけじゃない韓国芸能パワーと「モッタイナイ」日本(ブルボンヌ)

エバース

「ウケるからやるは『M-1』では失敗する」。3位だったエバースは2026年、自分の感覚を信じる【よしもと漫才劇場10周年企画】

豪快キャプテン×ダイタク

ダイタク×豪快キャプテン、認め合うお互いの漫才の魅力「簡単そうに笑いを取る」【よしもと漫才劇場10周年企画】

三遊間×ゼロカラン

三遊間×ゼロカラン、人気投票との向き合い方の正解は?「やっぱり有名にならなあかんな」【よしもと漫才劇場10周年企画】

Furui Rihoが『Letters』で綴った“最後の希望”「どんなにつらい日々であっても、愛は忘れたくない」

Furui Rihoが『Letters』で綴った“最後の希望”「どんなにつらい日々であっても、愛は忘れたくない」

EXILE NAOTOが語る、「勝負する身体」がステージと水面で魅せる“攻めの0.1秒”。大きな影響を与えるオーディエンスのパワーとは【『SG第40回グランプリ』特別企画】

4年目の今、重荷だった「王子様」を堂々と名乗れる。Last Princeが語る、プリンスを背負う勇気と楽しさ

甲斐田晴/ローレン・イロアス/3SKMの撮り下ろし表紙を公開! VTuberのトップランナーたちを徹底解剖【春のQJ×にじさんじ祭り!】

ニューヨーク『Quick Japan』vol.181

ニューヨーク、60ページ総力特集「普通は勝てない?」を考える。バックカバーにはSHUNTO×MANATO×RYUHEI(BE:FIRST)が登場【Quick Japan vol.182コンテンツ紹介】