2月に発表されたアカデミー賞で、韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を含む4部門を受賞。世界中で韓国のカルチャーが認められる一方、メイクアップ&ヘアスタイリング部門を受賞したカズ・ヒロは「日本の文化の中で夢を叶えるのは難しい」と語った。
新宿2丁目などでMIXバーをプロデュースする女装パフォーマーでライターのブルボンヌは、これらの出来事をどう見ているのか。グラミー賞でのパフォーマンスも行なったBTS(防弾少年団)や、もらい泣きするほど感情移入するIZ*ONE、日本のAKB48やJO1などの話題も交えながら、日韓カルチャーの違いを考える。
おじさんゲイも虜になるIZ*ONE
ここのところ、ウンザリするようなニュースばかりでしょ。楽しみにしていたイベントもキャンセルがつづいて、街中も誰かの咳ひとつでピリピリムード。そんなときアタシが、スマホを出して5分観るだけで元気になれる即効サプリが、K-POPアイドルのMVなんです。
洋楽とアイドルソングのいいとこ取りなフックだらけのサウンドに、ビジュアルもオシャレでダンスも完璧、しっかり歌もうまい。特に最近は、日韓合同のオーディション番組『PRODUCE 48』から生まれたIZ*ONEのカムバック曲「FIESTA」にメロメロなの。番組の不正騒動で休止してからの待ちに待った活動再開。公開3日も経たないうちに1500万再生を超えてる大ヒットMVです。もうね、美麗極彩色のFIESTAワールドに陶酔してるうちに、50手前のおじさんゲイが「あれ……アタシもメンバーだよね……」って本気で思えてくるんだからヤバいヤバい。
なんかさ、世の中にはK-POPが好きだってだけで敵視する人もいるみたいだけど、アタシ、アチラの政治姿勢は全然好きじゃないですからね。イチャモンとしか思えないようなニュースも多いし、どこの国にも他国を嫌わせることで内政批判を避ける政治のやり口は昔からあるんだなーとも思うし。
でも音楽とか映画って文化は、一緒にしてほしくないのよ。聴きゃー観りゃーわかる明確な魅力がある。そういう意味では、外交は気にくわなくても、30年前から国策としてやった芸術振興のほうは間違いなく結果を出してきてるのよね。
そう、映画『パラサイト』ですよ。って『半地下の家族』も付けなきゃ、90年代の学園ホラーのほうになっちゃう! あれはあれで、ジョシュ・ハートネットはかわいいし、何よりファムケ・ヤンセン姐さんがタコ化するシーンがたまらない愛すべき作品ですけど、あれじゃアカデミー賞は獲れないわ。
『パラサイト 半地下の家族』はとにかく史上初だらけのぶっちぎりの快挙。米国資本が入ってるわけじゃない純粋な韓国映画が、作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞の4冠。その上お先にカンヌのパルムドールにも輝いてるんだから、間違いなく今年の世界一なわけ。もちろん映画なんて個人のシュミが大きいから、「そこまで評価されるほどおもしろくはない」って感想も全然アリよ。実はアタシもじゅうぶんに楽しんで観たけど、より好みなのは『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督のほう。短髪メガネガチムチだしね、ってそっちの好みかよ!
話題となったカズ・ヒロのインタビュー
映画評論家の町山智浩さんも、国策で十数年前からハリウッドに大量に人材を送って研修をさせてきた成果だって、その評価にちゃんと説得力があることを解説されてる。また、カンヌ受賞の是枝裕和監督も、日本の映画界がガラパゴス化してることを嘆いていて、海外を視野に入れず国内で回収できるタイプの作品ばかりという現状を訴えてらっしゃる。収益の配分もまったく違って、日本は作り手がほとんど儲からないんですって。おゼゼもらえないんじゃヤル気半減よね。
そこにダメ押しするかのように、同じアカデミー賞で2度目のメイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いたカズ・ヒロさんのインタビュー。すでにアメリカ国籍になっているのに日本のメディアは「日本人の名誉」のように取材したがるけど、彼は「まわりに合わせて従順でいなきゃいけない日本の中では、夢を叶えにくい。そんな文化に疲れたから、私はアメリカに帰化したんだ」って。
突出した知識や技術を持って的確なことができたとしても、それよりも取り入ったり我を殺したりして組織の中でうまくやっていくことが求められるのが日本スタイルなのね。うんうん、芸能事務所も映画会社もそんな構造っぽいの、いろいろ思い出す件もあるわよね。あれ、最近じゃ感染症対策の現場でも、そんな出来事があったかも。つまり芸術系に限らず、能力よりコネこそ大事ってのが日本社会全般に根付いちゃってるんだわ。