「民放キー局がネット同時配信」で、可処分時間の奪い合いはどうなる?(UUUM鎌田和樹)
もともとの知名度の有無を問わず、多くの人が参入してくるYouTube。それだけではない。あらゆるコンテンツにおいて、「クリエイターになる」ことのハードルは市場も技術もずいぶんと下がってきた。
民放キー局がテレビ放送と同時にネット配信を今秋にも開始検討をしていることが報じられたが、さらに加速する可処分時間の奪い合いは一体どうなるのだろうか。HIKAKINや水溜りボンドなど有名YouTuberたちの数多くを擁するUUUM株式会社の鎌田和樹氏が、動画コンテンツの今とこれからについて語る。
動画コンテンツ戦争は、テレビのネット同時配信によって変わるのか
可処分時間。「消費者が自分の意志で自由に使える時間」を意味する言葉だ。特にエンターテインメント業界で言及されるようになって久しいが、今ほど、可処分時間の奪い合いが激化している時代はあっただろうか。
可処分時間を何に使うか。アウトドア、芸術鑑賞、読書、SNS……人それぞれだが、動画配信サービスなどの動画コンテンツに費やす人は増えている。コンテンツを提供する側は、日本国内のみならず、世界と戦わなければいけない状況だ。
「Netflix」の勢いは凄まじい。有料会員数は1億6700万人(2019年第4四半期調べ)に達している。制作費のスケールも桁違いだ。日本のテレビ局は数百億円規模なのに対し、「Netflix」の2020年の番組予算は約2兆円にのぼる。ユーザーにとっては、小規模予算のドラマも巨大資本の映画も、YouTubeの動画も、すべて「動画コンテンツ」という同じ土俵の上にあるものだ。
そんななか、2月1日に『民放キー局がネット同時配信』というニュースが飛び込んできた。3月から地上波放送のテレビ番組をインターネットに同時配信するNHKに追随するように、今秋以降、キー局5局がインターネットに同時配信する方向で準備している。若者層をメインターゲットに、スマートフォンなどで番組を見てもらうのが狙いとされている。日本のテレビ市場はシュリンクしていると言われるが、視聴者の母数は圧倒的に多い。テレビ番組がスマートフォン上で見られるようになることは、可処分時間の奪い合いに一石を投じることになるのだろうか。