ピンキリだったオリパラ報道で考えたこと「啓発っぽいものによる啓発を超える啓発力って重要ね」(マライ・メントライン)

2021.9.9
マライ・メントラインサムネ

第2ドイツテレビ(ZDF)プロデューサーとして、東京2020オリンピック・パラリンピックを現場で見届けたマライ・メントラインのオリパラ報道総論。只者でない解説陣に衝撃を受けて気づいた“「私にできること」のひとつ”とは?

オリンピックは、新体操解説の田中琴乃さん!

東京2020オリンピック・パラリンピック(2021年に実行しても2020なのよ)について、そもそも的な意見は前回記事(「ドイツ公共放送の東京五輪中継現場で湧いてきた直観について。別に神秘体験でもなんでもないんだが」)で思いっきり述べました。

あれは概念的、戦略的な話だった。

じゃあ現場じみた話はどうよといえば、ドイツ公共放送ZDFテレビのクルーとしてオリパラ報道に最初から最後まで携わるなか、「どう伝えるか」について感じたことがいろいろありました。それらについてツイッターや『文春オンライン』のインタビューでも語ったけど、昨日(9/5)、国立競技場でパラリンピック閉会式のドイツ向け中継を行ったあと気づいたことがあったので、あくまで自分が見た範囲の話で恐縮ですが、書いてみます。

前回述べたように、東京2020は無観客化によって「開催地にいる人にとっても『テレビで見る外国開催の五輪』とあまり変わらない存在になった」わけですが、それゆえ、テレビ報道や実況の質がいつも以上に問われる状況になったと思うのです。ツイッターでも書いたように日本のオリパラ報道はまさにピンキリで、オリンピックではたとえば、

「では予選ハイライトをご覧ください!」と言いつつ出てくるのが、日本代表のリプレイと視聴者からの応援メッセージ読み上げだけ、という現実がなんとも言えません。
せめて最高得点チームとセーラームーンぐらいは流すのが義理というものではなかろうか。

新体操の中継、田中琴乃さんの解説が、全出場国、全選手への「ベストパフォーマンス発揮」への願いと競技愛に満ちていて、しかも情と理のバランスが取れていて素晴らしい。
愛があって贔屓はない。
「解説者の資質」って、実はスポーツ文化の価値にとってすごく重要だと思うのです。

マライ・メントライン@marei_de_pon 2021年8月7日ツイートより

新体操 女子団体決勝、ブルガリア、ロシア、イタリアの熱戦、そして田中琴乃さんと清水俊輔アナの実況はやはり素晴らしかったが、余韻もへったくれもなく強引に日本オンリーの話で〆てしまうフジテレビのスタジオでした。

マライ・メントライン@marei_de_pon 2021年8月8日ツイートより

こんな様相でした。
新体操団体の予選にて、日本の強力なライバルのベラルーシがすごい大失敗をした次の試技で圧巻のリカバーを見せた際、それって日本チーム予選落ちの主因になるかもしれないのに思わず感動で涙声になっていた解説の田中琴乃さん(いうまでもなく日本チームと深い付き合いがある)って素晴らしい。あれこそ「燃える魂」というもの。私のオリンピック・ザ・ベストは実にあの瞬間でした。世間的にはブルガリア対ロシアの熱闘で沸いた決勝こそ注目かもしれないけど、私的には予選なのだ。

パラリンピックは、車いす陸上解説の花岡伸和さん!

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