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『クララとお日さま』太陽光をエネルギー源とするAF(人工親友)
クララは太陽光をエネルギー源とするAF(人工親友)で、買い手がつくのをほかのAFたちと共にお店で待っている最新式より少しだけ古い型のAIロボットです。クララは外界の出来事に対する好奇心が強く、鋭い観察眼を持ったAFとして、冒頭、作者のイシグロによって愛情深く描かれていきます。そんなある日、店にひとりの少女が駆け込んできます。「昨日、この前を通りながらあなたを見て、あっ、この子だって思ったの。ずっと探してたAFがここにいたって」と話しかけてきたのはジョジー。ジョジーは自分が母親と暮らす家からは、クララが愛してやまない太陽が沈んでいく場所が見えることなどをアピールしたあと、迎えに来ることを誓って去っていくのでした。
ジョジーは、でも、なかなか来てくれません。それでも待っていたいクララは、自分に関心を抱く客をそれとなく拒否するというAFが商品としてっしてしてはいけない仕儀に及びもするのですが、その甲斐あって、やっとジョジーのAFになれるんです。
万事控えめな態度を取りながらも、無償の愛情をジョジーに抱き見守るクララは、少しずつ親友を取り巻く事情に詳しくなっていきます。ジョジーには近所に住む仲よしの少年がいること。でも、そのリックは少し変わり者の母親の判断によって、ジョジーをはじめとする多くの子供たちが受けている〈向上処置〉をされていないため、大学進学の道もほぼ閉ざされていること。ジョジーには姉がいたものの、亡くなっていること。エリート技術者だった父親もなんらかの問題を起こして仕事を失い、今はコミューンのようなところに住んでいること。そして、何より、ジョジーが病弱でこのままでは大人になれないかもしれないこと。
お日さまに対して信仰に近い気持ちを抱いているクララは、店にいたころに目撃した光景を思い出します。夕暮れ時に死んでいた(とクララには見えた)物乞いの男性と犬が、〈通りにもビルの内部にもお日さまが射し込み、栄養を注ぎ込んでくれている〉翌朝に〈生き返ってい〉たことを。以来、〈きっと、お日さまが送ってくれている特別な栄養のせいです〉と信じているクララは、その〈特別な栄養〉をジョジーにも分け与えてくれるようお日さまにお願いするために、ある計画を立てるんです。
──と、途中までの粗筋はこうなっているのですが、以降は項目を分けて2作品の違いを明らかにしていきます。
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