2019紅白で起きた奇跡 2丁目から大御所ババアが消えた日(ブルボンヌ)

2020.1.24


MISIAによる、紅白史上かつてない「虹色化」

2019紅白で起きた奇跡 2丁目から大御所ババアが消えた日(ブルボンヌ)

そこからちょうど12年、2019年末の紅白で起きた奇跡が、紅組のトリMISIAさんのステージですよ。

まるっと同じ期間、アタシの大晦日といえば、新宿2丁目のクラブイベント『女装紅白歌合戦』の紅組司会でした。マツコさんやミッツさんが育てた2丁目らしいおフザケ企画で、毎年「全員女装のおじさんなのに何が紅で何が白だよ!」とセルフツッコミをするのも、「本家の勝敗はただのお遊びっぽいのに、女装紅白は負けたチームの女装が全員ギャラ半額って、そこだけガチ過ぎるわ!」と訴えるのもお約束になってる年越し。

そんな2丁目女装紅白の楽屋から、こないだは大御所ババアのみなさんがごっそり消えていたんです。嗚呼、合掌……。って死んでない死んでない。まさに奇跡、本家のほうの紅白ステージに召喚されていたんですよ!

実はMISIAさん、20年前からコンサートのダンサーとして、マーガレットさんやホッシーさんら大御所ドラァグクイーン(ド派手な女装パフォーマー)を起用しています。昨年末も『LIVE PRIDE』と題されたLGBT支援のコンサートを、ユーミンさんや清水ミチコさんらと共に盛り上げてくれている筋金入りのフレンドリー歌姫なんですね。そんな彼女だからこそ、オネエハウスのアゲアゲ定番曲として長く愛されるアルバム曲『INTO THE LIGHT』をメドレーの中に仕込んで、紅白のトリの舞台にクイーンたちを大集合させてくれました。

衣装も手がけるホッシーさん制作の豪華ヘッドドレスで、MISIAさん本人も女装寄りになったクイーン祭! よく観りゃコーラスのお三方も、ミッツさん率いる女装シンガーユニットの「星屑スキャット」だし!

そして、メドレーラストの『Everything』とともにMISIAごしに画面いっぱいのレインボーフラッグ(世界共通の性的少数者のシンボル)が映し出され、会場内のアーティストさんたちも紅白分け隔てなく、みんなが手にしたレインボーの旗を振るという、紅白史上かつてない「虹色化」の瞬間を迎えたのでした。オネエキャラが桃組だと笑うわけでもなく、性同一性障害の切ない一面を伝えるわけでもなく、紅組トリの歌手が堂々と、絵面と表情でハッピーで多様なアイノカタチを見せつけてくれたわけです。

茶化してた人もきーちゃんの偉業にひれ伏すべし

そして忘れちゃいけないのが、自ら「きーちゃん」キャラへの進化を宣言した氷川きよしさん。昨年はコンサートでも、浜崎(あゆみ)さんか『年忘れにっぽんの歌』のお恵ちゃんかってくらいの裾広がりのドレスを着てみたり、ビジュアルのジェンダーレス化が話題となっていたきーちゃん。

そんな彼がまずは紅と白の片身替(かたみがわり)の着物で登場し、(きーちゃんの変化に、みなさん動揺してるかもしれないけど)「大丈夫!大丈夫!」と念押し。と思ったら、ギラギラタイトな衣装に早替えして、巨大ドラゴンに乗って場内を飛び回り、固定観念の「限界突破」を叫びあげてくれました。なんて自信に満ちたトランスフォーム! 一時期は「オセロ中島かと思ったわ〜」なんてニヤけてたいけずなオカマたちも彼の偉業にひれ伏すべし。きーちゃん最高~!

今回の紅白、視聴率が良くなかったというニュースもありましたが、文春の大規模アンケートからは「良かった出場歌手」の1位が氷川きよし、2位がMISIAだったという結果も伝えられました。そう、まさに自由な虹色演出に挑んだおふた方こそ、一般が支持したツートップでもあったんです。アーティストとしては保守層に眉をひそめられるかもしれない、賭けともいえる開き直り表現が、結局「本人も心から楽しんでいるのが伝わる良いステージ」になったってこと。時代を読むセンスという意味でもばっちりの芸能サバイバー!

令和初の紅白は、まさに紅か白かに分けられない時代の幕開けを感じる歴史に残る回でございました。現実の世はまだまだウンザリなニュースも多いけど、着実に進んでることだってあるわ。大丈夫、大丈夫だよぉ〜♪


この記事の画像(全3枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

ブルボンヌ

Written by

ブルボンヌ

女装パフォーマー/ライター。1971年生まれ、岐阜県出身。早稲田大学文学部在学中の1990年、ゲイのためのパソコン通信を立ち上げる。ゲイ雑誌『Badi』の主幹編集と同時に女装パフォーマー集団を主宰し、現在は新宿2丁目のセクシュアリティフリーMIXバー「Campy!bar」グループをプロデュース。20..

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。