劇団かもめんたる、落語会、リットン調査団…2020年、コロナ禍に劇場で観たお笑いライブ

2021.1.3

100点の言葉を連発するう大「劇団かもめんたる」

脚本・演出をかもめんたる・う大さんが務める劇団の公演。数年前から定期的に公演を行い、お客さんも徐々に増えて、2019年度には新人劇作家の登竜門である岸田國士戯曲賞に芸人の脚本としては初めてノミネートされるなど評価を上げている「劇団かもめんたる」。今年はコロナの緊張感存分に漂う7月と、第3波が訪れた12月に開催。その12月公演の『HOT』は衝撃でした。

僕が好きなのは、「劇団かもめんたる」は、演劇要素とお笑い要素がうまく融合していて、どちらのお客さんにも楽しめる作品となっているところです。お笑い好きの方は「劇団」と聞くと、ジャンル違いの、少々小難しいものに捉えがちですが、「劇団かもめんたる」は大丈夫です。お笑いの文脈でしっかり笑えます。

この『HOT』公演は本当に笑った。物語はおもしろかったですし、劇団の役者の皆様も活き活きとされていました。でも、今回無双状態だったのはう大さんでした。祭りをコンサルするエキスパートとして古い形式の祭りに携わる神主さん(ラサール石井さん)たちに、上から目線で追い込むう大さんは最強でした。

相手に何も言わせなくする一言必殺の研ぎ澄まされた言葉。それを選び抜くセンス。それはけっしてシュールというものではなく、そのシーンにおいて笑いを生むための正解の言葉がいくつかある中で、その中から100点の言葉を選びつづけて連発するう大さんの姿に、25年以上前に「お笑いっていいな」と思って、この世界に飛び込んだときの自分の心のときめきが蘇りました。そして涙を流しながら笑っていました。

誤解を恐れずに言うと、演劇では収まらないう大さんの笑いが放たれた瞬間にそれは演劇とは別次元の笑いとなり、僕に迫って来た。その現象は特に前半の導入部分で見受けられる現象でしたが、とても強く心に残っています(たまたま僕のツボにはまったのかな)。

まだまだ飽くなき挑戦がつづくであろう落語会『コンテニュー』

落語家・立川吉笑と「伝説のハガキ職人」として名を馳せたツチヤタカユキとの落語会。

リスナーであるハガキ職人から、とある芸人のラジオ番組の作家として重用され上京。ただ、人間関係にうまく対応できずに笑いの現場から離れて野に下るも、やはり笑いのことを忘れられずに、落語作家として再起を目指すツチヤタカユキ。

そしてかつては芸人としてコントと向き合い、笑いを突き詰めたが、自ら限界を感じてしまい、挫折。その後立川志の輔師匠の落語を聴いて、衝撃を受け、落語家という生き方で今一度笑いと向き合うことになった立川吉笑。

落語という共通点がふたりを近づけた。

今となってはもう忘れられた笑いに対する姿勢。自分が一番おもしろいと信じて笑いと向き合っていたあのころの「つづき」をするかの如く、もう一度自分たちが熱く笑いを突き詰めるために開催された落語会。ツチヤタカユキがネタを書き、立川吉笑が演じる。

創作落語なのだが、その展開や発想は高座で話をするという落語のかたちは残しつつも、落語の範疇を超えた斬新な内容だった。これはシュールと呼ぶべきなのか、にしてはその話術のせいか、しっかりと情景を思い浮かべることができて、業のおかしみを感じてしまう。演出面では幕間VTRがあり、落語以外の笑いの表現方法を取り入れながらも、しっかりと落語会と融合させていた。まだまだ飽くなき挑戦がつづくであろう落語会『コンテニュー』の第1回目が観られて本当によかった。

今田耕司が駆けつけたスペシャルなライブ『リットン調査団の推し芸人~ネタショー~』

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