インスタというのは、大したことがない投稿でもみんなで褒め合うSNSではなかったのか
現在、新型コロナウイルスの感染者数は以前にも増して増えつづけているが、なぜか外出自粛ムードは薄まり、他人に会う機会も多くなっている。そのせいか、一時は髭を伸ばしていた男たちも続々と髭を剃り、元の姿に戻っていった。仕事上剃らなくてはいけなかった人もいるだろうが、髭が似合わないことに自分で気がついたか、誰かに「剃ったほうがいいよ」と言われ泣く泣く髭を剃った人も何割かはいると思う。
私も人に会ったり写真に写ったりしないといけない仕事があった。そのタイミングで髭を剃るべきかとも思ったのだが、まだ自分に髭が似合うのか客観的に確認できていなかった。さすがに伸ばしっぱなしのままでは失礼に当たるだろうと考え、ハサミを使って一定の長さに整えたあと、久しぶりの仕事に向かった。
どんな反応をされるのか少しビビりながらマスクを外したときのリアクションは、「ああ~。吉田さん、髭伸びましたね~」というものだった。似合うとも似合わないとも言われなかったが、どちらかというと似合っていない場合に人が取る反応だとは思った。しかし、ひとりの意見だけではわからないこともある。事実、その後もしつこく髭を生やしつづけたまま生活するなかで、「おお、髭いいじゃん」と言ってくれた友人も何人かいたのだ。私は彼らを信じることにした。
そのまま数カ月を過ごし、もはや髭を意識することも減ってきた先日。告知用に仕事で撮った写真をインスタグラムに上げたところ、告知内容にはほとんど触れられないまま「髭どした笑」「死相が出てる」「コロナで老けたな~」と私の外見に対する否定的なコメントばかりがつづき、「清潔感がない」というメッセージがDMで送られてきた。インスタというのは、大したことがない投稿でもみんなで褒め合うSNSではなかったのか。
同じタイミングで、姉からも「あんた、ほんまヒゲ剃ったほうがええで」「清潔感のなさがヤバイ」「麻原感あるんよなー」と連続でLINEが来たがシカトしている。
意固地になっていても仕方がない。そこまで言われたら認めざるを得ない。やはり私は、髭によって見た目が完成するタイプの人間ではなかったのだ。髭のない今までがポテンシャルのすべてで、その先には何もなかったのである。不自然な髭を伸ばしていたって、発言に一目置かれることはないだろう。
正直もういつ髭を剃ってもいいと思っているのだが、批判されてすぐに剃ると「似合うって言われると思ってワクワクしてたのかな(笑)」などと思われたらムカつくので、しばらくの間は意地でも剃らずにいようと考えている。
コロナ禍で髭が板につき、イメチェンを成功させた方に拍手を送りたい。そして、私と同じような思いを経て髭を剃り落としていった同志の方々、コロナが収束しどこかで出会えたら、お互い愚痴を言いながらお酒を酌み交わしましょう。