フェミニズム的に読み解く、男性漫画家の3作品『やれたかも委員会』『生理ちゃん』『妻と僕の小規模な育児』

2020.6.16

2:異性の立場から「生理」を理解することに挑んだ小山健

こちらも同じく映画化までされたヒット作『生理ちゃん』。男性が語ることがタブー視されている「生理」に正面から取り組み、多くの女性読者に支持された。物語は基本的には一話完結で、さまざまな立場にある女性を主人公に、突然の生理によるトラブルや不調などを絡めながら人生の一場面を爽やかに描いていく。

小山健『生理ちゃん』(KADOKAWA)

このようなテーマに挑めば、一部の女性から生理の表現や理解度について批判されることは覚悟の上だったのかもしれない。実際に何度かSNSで非難の声が上がったことはあり、確かに女性蔑視に見える表現があったことは否めない。しかし『生理ちゃん』という作品全体を通して見ると、女性を元気づけ応援するストーリーがメイン。じゅうぶんに生理を理解していない男性がまわりの女性たちに取材を重ねながら、男性にとって異文化である生理を想像で描いたことによって、独特のおもしろさを生み出しているのが大きな魅力になっている。

男性漫画家が描いたことで男性にとっても手に取るハードルが下がり、「生理ってこういうものだったのか」と知るガイドとして、女性にとっては「つらいのは自分だけではなかった、誰かが理解してくれた」と癒されるような作品として。それぞれの性に別々の効果があったのではないか。

『生理ちゃん』については、大阪のデパートの女性向けフロアで、生理中の女性が任意で「生理ちゃんバッジ」をつけ、女性客とのコミュニケーションに促したいというアイデアが発表され、炎上の末に中止となった。ただ、これについては小山氏は直接の関係はなく、炎上に巻き込まれた形と言える。しかしながら、先日発売になった3巻(『生理ちゃん 3日目』)では、そのバッジについての物語を、デパートのスタッフの視点からきっちりと描いていた。炎上に触れずにやり過ごすこともできた件を発案者の思いを伝える形で作品に落とし込んでいるところに、小山氏の誠実さと闘う姿勢を感じた。

個人的には彼には彼の闘いを貫いてほしいと願っている。彼の作品はほかのフェミニストがリーチできないところへ届く可能性をじゅうぶんに持っていると思うからだ。また、自身の妻、さち子をモデルにしたエッセイ漫画も人気だが、育児を描いた『お父さんクエスト』のあとがきインタビューとして、さち子が小山氏にかなりキツめの苦言を呈すちゃぶ台返しがここでも行われているのが興味深い。

3:正統派ガロ系漫画からエッセイ漫画への転身がハマった福満しげゆき

この記事の画像(全4枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

花田菜々子

(はなだ・ななこ)書店員。ヴィレッジヴァンガードほか複数の書店勤務を経て、現在はHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に自身の体験を元に綴った『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人..

関連記事

移ろうこと、それを知ること――『青のフラッグ』完結に寄せて

花田菜々子

書店員が『ライフ イズ ストレンジ2』の強烈な体験から「物語」の変化とニーズを考える(花田菜々子)

清田隆之_クイックジャーナル

田嶋陽子が再ブーム。“日本でいちばん誤解されたフェミニスト”はこんなにカッコよかった(清田隆之)

エバース

「ウケるからやるは『M-1』では失敗する」。3位だったエバースは2026年、自分の感覚を信じる【よしもと漫才劇場10周年企画】

豪快キャプテン×ダイタク

ダイタク×豪快キャプテン、認め合うお互いの漫才の魅力「簡単そうに笑いを取る」【よしもと漫才劇場10周年企画】

三遊間×ゼロカラン

三遊間×ゼロカラン、人気投票との向き合い方の正解は?「やっぱり有名にならなあかんな」【よしもと漫才劇場10周年企画】

Furui Rihoが『Letters』で綴った“最後の希望”「どんなにつらい日々であっても、愛は忘れたくない」

Furui Rihoが『Letters』で綴った“最後の希望”「どんなにつらい日々であっても、愛は忘れたくない」

EXILE NAOTOが語る、「勝負する身体」がステージと水面で魅せる“攻めの0.1秒”。大きな影響を与えるオーディエンスのパワーとは【『SG第40回グランプリ』特別企画】

4年目の今、重荷だった「王子様」を堂々と名乗れる。Last Princeが語る、プリンスを背負う勇気と楽しさ

甲斐田晴/ローレン・イロアス/3SKMの撮り下ろし表紙を公開! VTuberのトップランナーたちを徹底解剖【春のQJ×にじさんじ祭り!】

ニューヨーク『Quick Japan』vol.181

ニューヨーク、60ページ総力特集「普通は勝てない?」を考える。バックカバーにはSHUNTO×MANATO×RYUHEI(BE:FIRST)が登場【Quick Japan vol.182コンテンツ紹介】