今パチンコで勝てるわけがないのだけど……
新型コロナウイルスが流行っていようと、一定期間営業を停止すれば潰れてしまうからやむを得ず開けている店は多い。パチ屋も例外ではない。そもそも自粛要請というのは「できるだけやめて」ということであって、なんで禁止だ、やめろと言わないかというと、それをやると補償などの責任を負わないといけなくなるからで、政府や自治体が責任を負いたくないから「自粛」という言い方をしている。その上で「ここ叩いてくださいよ」と店名を公表するのは、それはナシだろ、と思う。
かと言って、この状況下になってもパチンコを打とうとする人はもちろん支持できない。お前は感染してもいいかもしれないがコロナの媒介になっている自覚を持てよ、と普通に思う。そして一般の人にはどうでもいいことかもしれないが、私が肌感覚としてイラっとするのは、今パチンコで勝てるわけがないのに打ちつづける奴のギャンブルに対する意識の低さだ。この状況で店側が釘を開けてくれるわけがなく、平常時より勝てる期待値は確実に下がっている。パチプロもネットの記事でそう言っていた。他県まで遠征してパチ屋に行っている人がインタビューを受け「パチンコを打たないと生活していけないから仕方なく打っている」と答えているのを見たが、絶対そいつは勝ててないと思うし、一端(いっぱし)のギャンブラーめいた口を聞かないでほしい。
まあいわゆるギャンブル依存症なのだろう。肯定できるものではないが、広い視野で見ればそんな人が出てくるのは止めようがない。この期に及んで「不要不急」の極みであるパチンコ店に出入りする奴に怒りを感じるのはわかる。しかし社会全体の割合で見れば実際上そんな例外は大した影響力を持たないとも思う。パチ屋のほうだって、店名を公表される前から大阪府にある647店舗(P-WORLD調べ)のうち641店舗、率にして99%以上が自粛に応じて営業を停止している。「自粛」という言葉の語義に従うなら、閉めない店を叩くより閉めている店を褒めるべきだろう。
成長や洗練から逆行する、なんとも言えない快感
パチ屋がここまで槍玉に挙げられていることの潜在的に大きな要因は、そもそもパチ屋が取るに足らないもの、もっと言えば頭の足りない低所得者向け遊戯として多くの人に見下されているからだと確信している。だから大阪府やその他いくつかの県が批判の矛先をパチンコに向けたのはかなり空気を読めている。パチンコをかなり打っていた私自身、低所得のバカだと言われたら強く言い返す言葉はないが、でも、そういうくだらないパチンコや私が堂々と存在できる世の中であってほしいとは、オドオドとした態度、震えた声になってしまってもなんとか口に出したい。
開店前のパチ屋に並んで釘の空いている台を確保する。サンドに1万円札を入れて500円分の球を出した後、体に悪そうな缶コーヒーをすすり、タバコに火をつけてから深く息を吐いてハンドルを握って球を打ち出す、その瞬間が好きだった。あのときの、成長や洗練から逆行するような快感は何ものにも代え難い。
この4月から禁煙法(改正健康増進法)によってパチ屋でタバコが吸えなくなった。パチ屋が今後営業を再開しようと、あのルーティンを再現することはもうできない。タバコを吸う人間の平均年収は低い。パチンコもタバコも、まさに百害あって一利なし。
益のないものが存在を許されない世界は地獄だと思う。
▶︎【総力特集】アフターコロナ
『QJWeb』では、カルチャーのためにできることを考え、取材をし、必要な情報を伝えるため、「アフターコロナ:新型コロナウイルス感染拡大以降の世界を生きる」という特集を組み、関連記事を公開しています。
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