コロナ終息祈願!下半身むき出しの「スカ屁」は、アマビエ以上のご利益(ピストン藤井)

2020.5.3


パワーワード連発の「スカ屁」

とはいえ私が激推ししたいのはクタベではありません。おもむろにデリケートゾーンを晒し、僕らに向かってマリーゴールド色の屁をひるあの娘……。君の名はスカ屁(ベ)。知りませんか、スカ屁。私もこの間まで知りませんでしたが、立山博物館さんがクタベと共に発掘してくださいました。

こちらも江戸後期の瓦版に描かれたものであり、こんな文言が記されています。

越中(富山)のかき山、いまき谷にある“尻が洞”の割れ目から、スカ屁(ベ)なる者が出てきて、こやし取りにこう告げた。「今年から4、5年の間に、名もなきおなら病が流行し、イモベ(芋を食べた後の屁?)を止める薬も効かず、手に汗握る屁となる」

文言の下には、醜い顔をした老婆が、下半身むき出しにダイレクトに屁をひる姿が描かれています。名が体を表すのならば、スカ屁の屁はきっと「すかしっ屁」。具が混じる危険性が及ぶほうですが、スカ屁の放屁に迷いはありません。「ぷぅ」というより「ぶびびっ!」。左手で自分の鼻をつまんでるぐらいなので、あっぱれなほど臭いと思われます。

その姿もさることながら、「尻が洞の割れ目」「名もなきおなら病」「手に汗握る屁」というパワーワードとの一期一会にも心が震えます。屁はいいよな、いいよな屁は。みんな笑っちゃうもの。

疫病退散を願い、スカ屁を描く

スカ屁もアマビエたちと同じく予言獣であり、「私を描け」とお告げしています。しかし三者には大きな違いがあります。「私の写し絵を広めろ」と言っただけで、疫病退散については触れていないアマビエ。対して「難を逃れることができる」と断言しているクタベ。そして、それを上回るご利益をもたらすとされるのが俺たちのスカ屁なのです。

「私の姿を写し絵にすれば、その難を逃れ、家内安全、無病息災、延命長寿となるだろう」

おなら病の回避のみならず、家族みんな健康で長生きできてオールハッピー! ダントツぶっちぎりのご利益をもたらすのがスカ屁なのです。「スカ屁チャレンジ」と題して、広めるべきはスカ屁のほうかもしれません。ということで私も描いてみました。花沢さんとアナゴさんをそらで描ける程度には絵心はあるので、よかったらお納め下さい。

画=ピストン藤井

それにしても立山博物館はイイ仕事をされています。博物館を中心に13ヘクタールという広大な敷地を誇っており、神と仏、地獄と浄土が混然一体となった立山信仰の世界観を表現しています。

なかでも“地獄のディズニーランド”と称される、併設スポット「まんだら遊苑」はデートにうってつけです。「まずは地獄からどうぞ~」と朗らかに案内してくれる受付のお姉さんの右隣から、「ぐぁああ!」「うげええ!」という鬼オールスターズによる狂気のエレクトリカルパレードが響いてきます。

闇の中で赤く浮かび上がる八熱地獄エリアでは、罪人たちが回転ノコギリで身を刻まれ、ホッカホカのふん尿を強制おかわりさせられ、ドロドロに溶けた銅をお尻の穴に流し込まれるという、スカ屁もびっくりのバリエーション豊かな地獄百景が広がります。針山ではミッキーの代わりにガッキー(餓鬼)が、「うー」「あー」とうめきながら出迎えてくれます。

ただ閻魔大王もコロナには勝てないらしく、まんだら遊苑も立山博物館もただいま休業中。ここは地獄だけじゃなくて、ヒーリングミュージックが延々流れて、現世に戻りたくなくなるMADな天界ゾーンも最高なのに!

早く再開できますよう、今宵も疫病退散を願ってスカ屁を描きたいと思います。


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ピストン藤井(藤井聡子)

(ふじい・さとこ)1979年、富山市生まれ。東京で雑誌編集者として勤務後、2008年に帰郷。ピストン藤井のペンネームで、富山ならではの個性の強い場所や人を探るライター活動を開始する。2013年にミニコミ『文藝逡巡 別冊 郷土愛バカ一代!』を自費制作。現在4号まで発刊している。2019年10月に本名名..

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