噴出する「東京差別」恵まれた人たちが耳を傾けるべき理由(中川淳一郎)

2020.4.28
nakagawajunichiro

全国的に感染拡大がつづく新型コロナウイルス。最も感染者数が多い東京都を叩く風潮がネット上で広がっている。
ネットニュース編集者の中川淳一郎は「地方からの東京への怒りもある程度理解できる、都民(の中の恵まれた人々)は目を通しておいたほうがいい」と述べ、ネットにおける東京叩きを分析する。


朝日新聞編集委員のツイートが炎上

新型コロナウイルス感染拡大について朝日新聞の小滝ちひろ編集委員が3月13日に「あっという間に世界中を席巻し、戦争でもないのに超大国の大統領が恐れ慄(おのの)く。新コロナウイルスは、ある意味で痛快な存在かもしれない」とツイートした(現在は削除)。

死者が多数出ているのにさすがにそれはないだろう。いくら反権力の思想を持っていようが立場を明かしながら大企業のエラい人が実名で言っていいことのレベルを超えている。当然大炎上し、翌日に朝日新聞は謝罪。本人は何の釈明もないままIDごと削除して逃亡した。その後、朝日新聞関係者の感染が確認されたり、朝日新聞とも関係がある『報道ステーション』(テレビ朝日)で富川悠太アナを含めた複数名が感染し「クラスター化」したが、この話題のとき、「痛快」の2文字がネットに多く書き込まれた。いわゆる「ブーメラン」というヤツだ。

それにしてもツイッターというツールはいい年した立場あるオッサン・オバサンがいかにバカかをどれほど炙り出してきたことだろうか。誰が言ったかは知らないが「バカ発見器」として相当優秀である。

ネット上で激化する「東京叩き」

さて、今、ネット上では、感染者数が日本最大である「東京叩き」が激しくなってきている。インターネットにおける東京への恨みというものはもともとあったが、今回は見事なまでに噴出している。今の状況は東京以外の人間(大阪や名古屋、横浜などの大都市圏住民は除く)にとっては「痛快」な面もあるかもしれない。

コロナ禍の初期、中国人を入国させることに反対でもしようものなら「レイシスト認定」がもれなくついてくるような状態だった。その論調の急先鋒が朝日新聞だったわけで、小滝氏はさて、今何を思うか。あなたが「痛快」と言い放ったウイルスにより東京都民が全国から差別される状況になっているんですが、そこについてあなたの見解を伺いたいところです。

まだ「痛快」って思っていますか?


地方民が東京を見下すポイントとは

ここからネットの論調の紹介に入っていくが、もともとネットでは東京のことを「トンキン」と呼ぶ風潮があった。語源に関しては諸説あるが、東日本大震災以降から東京を揶揄する文脈で使われ始めたようだ。
現在、コロナ禍に伴いこの言葉が多数使われているのだ。歴史的に地方民が東京を見下す場合の重要ポイントは以下に挙げられる。

・悶絶の満員電車
・ありとあらゆる場所で行列が発生する
・渋滞が頻発する
・犯罪が多い(人口多いから絶対数が多いのは当然なのだが……)
・雪が降ると交通がマヒし、タクシー待ちやバス待ちで大行列が発生
・電車の人身事故が多く駅のホームが人であふれる
・渋谷スクランブル交差点の「人がゴミのようだ」状態やJR品川駅高輪方面へのトンデモない人数の通勤者

基本的には、人口が多過ぎることによる過密状況が揶揄されるのだが、その一方で、最先端の娯楽や大企業の本社があること、政治の中枢であることなどから「格上」扱いされるのも事実である。賃金もほかのエリアよりは高い。私もモノカキ業の総本山である東京で仕事をしているが、ライターとしてはもしも東京にいなかったらまったく通用していなかったと思う。大阪であっても年収は7分の1、それ以外だったら10分の1だったことだろう。

著名人のイベントに自由に参加している様を東京及び近郊県の人々がツイッターに書くと「ウチの県にも来てくれないかな。でも来てくれないよね」のようにうらやましがるツイートも出てくる。

東京という存在は、憧れの存在ではあるもの、常に「でも人が多過ぎてウチらには考えられないような不便もあるんだよね」といった意識も持たれている。そして、行列や満員電車を揶揄し「トンキン土人」という言葉がネットには書き込まれる。

東京民と地方民の終わらない対立


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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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