ハンコいらなくね!?「しょせんは民間の話」ならまず私から(なみちえ)

2020.4.23
クイックジャーナル なみちえ

文・図版=なみちえ 編集=田島太陽


テレワーク(在宅勤務)が推奨されているが、大きな障害となっている要因のひとつが日本の捺印文化だ。「ハンコを押すために出社した。」という皮肉めいたキャッチコピー(クラウド人事労務ソフトを手がけるSmartHR社の広告)も話題となったように、古き習慣に縛られ、この状況でも満員電車で出社せざるを得ない人が多くいる。

ラッパーで、着ぐるみを制作するクリエイターのなみちえも、このことに疑問を抱いている。IT政策担当大臣が4月14日の記者会見で「しょせんは民・民(民間同士)の話」とコメントしたことを受け、ハンコにまつわる思い出を辿りながら「まずは私からやめる」「形式よりも中身を重視しよう」と宣言する。


この世界で大事なことは「ハンコを押したかどうか」じゃない

10年前の夏の日、当時私が中学1年生だったときのことです。夏の水泳の授業では「水泳カード」が必須で、水着もそのカードも持って来たのに、カードに「その日の体温」と「保護者のサイン」の記入、そして「印鑑」をもらうのを忘れた日があった。

ちゃんと記入しないとプールに入れないのでどうしようかと思った私は、ボールペンの黒で母の字に似せ名前を書き、赤色でうまく手書きのハンコ(円の中に田村)を書いた。バレたらどう怒られるかなって心臓はバクバク。平均体温高めの私は、担任に涼しげな、なおかつ何食わぬ顔でカードを渡し、バレずにプールに入った日を思い出しました。一度プールに飛び込むと気負い過ぎた自分を振り返り、よけいに冷めたのでした。

このころから社会の制約に対して敏感になっていたと思います。でもなんとなく抱いていた疑問に向き合わず、指先に任せてハンコを押していました。

疑うことを忘れた私がさまざまな書類に押したハンコの数々。大人になり改めて振り返ると、正直「めんっっどくせーーーーーーーーーーなーーーーーーー」と思っていたのは事実です。

だけど最近になり、コロナウイルスの蔓延(まんえん)で定職についていない私でもハンコ文化の、人間の文明が足踏みしているようなむずかゆさを感じることがありました。

ハンコを押さなきゃいけない仕事のために身だしなみを整え、スーツを着て「これで私は仕事をがんばっている」と思い込まなきゃいけない。そんな現代の儀式、多過ぎません!? 暗黙の了解(それが自分にとって都合の悪いことでも)を理解しなければ“空気が読めない人”になるだなんて。

コロナのパンデミックにより、個人が持っていた不満が顕著になって可視化されている。それを、地球の当事者として一つひとつ解消していかなきゃいけない。図らずもコロナウイルスは、みんながずっと変えたいと願っていた気持ちの背中を押す形となっている。

今後、本当にこの世界で大事になってくることは「ハンコを押したかどうかより、書類と相手を信頼できるかどうか」だと思います。

私と仕事をしたい人は書類にハンコはナシで

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なみちえ

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なみちえ

1997年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ・在住。東京藝術大学先端芸術表現科を首席卒業。在学時には平山郁夫賞、買い上げ賞を受賞。音楽活動や着ぐるみ制作・執筆などマルチな表現活動を行うアーティスト。 音楽活動はソロのほかにギャルサー:Zoomgals、兄妹で構成されたクリエイティブクルー:TAMURA KIN..

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