大切なことはいつもラジオが教えてくれた。コロナ禍をタフに生き抜く視点と想像力

2020.4.20

大喜利とライブあるある披露が同時進行したような『三四郎ANN』

3月14日。“三密”が声高に叫ばれるようになり、WHOがついにパンデミックと認定。日本でも改正特別措置法(新型コロナ特措法)が成立したころだ。この日、『三四郎のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)は5周年を記念して、番組初となるイベント『バチボコプレミアムライブ』を東京国際フォーラムで開催する予定だった。チケットはあっという間に売り切れ、全国でのライブビューイングも決定していたが、残念ながらコロナ問題で中止になった。

三四郎のオールナイトニッポン ゲラヘー!
番組5周年を記念して作られた『三四郎のオールナイトニッポン5周年プレミアムブック ゲラヘー!』(扶桑社)

そこで番組が仕掛けたのが「エアライブ」である。ツアーが延期となったL’Arc-en-Cielのエアライブが盛り上がったことにあやかり、イベントが開催される予定だったその日その時間に、イベントを行っている体(てい)で、リスナーがツイッターで妄想実況をすることになったのだ。同じタイミングで、三四郎は翌週分の放送を収録。ふたりがどんな反応をしているかわからない状態でもリスナーはやりたい放題に楽しんだ。

自宅を出発する報告から始まり、席の場所に関する悲喜こもごも、開始直前の興奮、関係者の目撃情報などが次々にタイムラインに並ぶ。翌週放送された番組内でも「普段聴いてないけれど、友だちに無理矢理イベントに連れて来られた」「会場前のカフェがグッズを整理するファンで微妙に混んでいる」といった妙にリアルなツイートが紹介された。まるで大喜利とライブあるある披露が同時に進行しているようだった。

その後もイベント内のサプライズ演出やトーク内容、感動のエンディング……と妄想実況は止まらず、終了後の余韻や帰宅報告までつづく。同時刻に番組を収録していた三四郎も意味深げなツイートを投入。この時点でリスナー側は番組の中身が一切わからないにもかかわらず、奇跡的にシンクロする場面もあった。

『三四郎のオールナイトニッポン』を聴いている人間以外には意味がわからない、あくまで番組側とリスナーだけのささやかな楽しみだったが、ツイッターでトレンド入りを果たし、参加者はなんとも言えない満足感に包まれた。この体験がいつか実現するであろうイベントの盛り上がりにひと役買うことになるだろう。

ピンチをチャンスに変えた、と断言するには些細な出来事だったかもしれない。だが、どうにもならない現実を逆手に取っておもしろがるという姿勢と隙間を埋める異常なほどの想像力は、今のご時世を乗り切るために必要な要素ではないだろうか。

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