書店員が『ライフ イズ ストレンジ2』の強烈な体験から「物語」の変化とニーズを考える(花田菜々子)
これまでと比べ、自宅で過ごす時間が圧倒的に多くなった。その影響を受けてか、Nintendo Switchの品薄状態がつづくなど、ゲーム業界には特需も生まれている。
書店員であり、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』などの著書で知られる花田菜々子も、このタイミングでゲームに没頭し「新しい物語体験」に魅了されたひとり。本に精通する視点から「読書好きがハマれるゲーム」を紹介し、物語の価値とその効用を考察する。
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ロードムービーを体感する『ライフ イズ ストレンジ2』
書店員を生業としている自分も例外でなく緊急事態宣言を受けて休業となり、先週4月8日から自宅にこもる日々に突入した。暇に任せてSNSを見つづけているとコロナに関するニュースに怒りや不安で胸が詰まりがちになる。ニュースを追い、社会に声を上げつづけることの重要さを感じる一方、自宅内のエンタテインメントもまたこの日々をサバイブするのに不可欠なものだと感じている。
職業柄、自分の室内エンタテインメントといえば圧倒的に読書なのだが、最近20年ぶりにハードまで購入してハマっているのがPlayStation 4のゲームだ。というわけで今回はゲーム初心者の立場から、アクションゲームが苦手な人でもプレイできて、かつ読書好きがハマれそうなストーリー重視の名作ゲームを2本紹介したい。
まずは3月26日に日本語版が発売されたばかりの『ライフ イズ ストレンジ2』。アドベンチャーゲームと呼ばれるジャンルであり、プレイヤーはストーリーに沿って主人公を操作し、主人公の視点から行動やセリフを選択する。その選択によって展開が変化し、結末も変わるというマルチエンディングシステムだ。
今作は前作同様にアメリカを舞台とし、悲劇的な事件に巻き込まれ警察に追われる身となった10代の兄弟が、弟の持つ超能力に翻弄されながらメキシコ国境を目指して旅をする、ロードムービー的なストーリーになっている。まるで1本の映画を観たときのような感動があるのだが、主人公の未来を決定するコントローラーを握っているために強い没入感があり、物語を「体験した」という感覚が強い。旅の途中の美しい景色のグラフィックや、切ない青春を感じさせる音楽もまたこの作品の大きな魅力となっている。
中毒性と緊張感『Detroit: Become Human』
「『ライフ イズ ストレンジ2』がおもしろかった」とゲームに詳しい人に話せば「だったらこれは?」と100人中100人が勧めてくるのが、同じように主人公の行動を選択することで物語が分岐していく『Detroit: Become Human(デトロイト ビカム ヒューマン)』だろう。発売は2018年ながら今なお話題で、熱狂的なファンを増やしつづけている作品だ。最近でもバナナマンの日村勇紀がラジオ内で「バカリズムに勧められて始めたがおもしろいのでやってみてほしい、買ってあげたいくらい」と熱心に設楽統に勧めていたり、朝の情報番組『ZIP!』でも紹介されていたくらいである。
舞台は2038年のデトロイト。奴隷のように人間に従属していたアンドロイドが感情を持ち始め、自由と権利を求めて立ち上がるストーリーだ。そして最大の魅力は、すべてを把握することが不可能なほどの分岐の多さ・複雑さである。
こちらも『ライフ イズ ストレンジ』シリーズと同様に中毒性が高く、飽きさせない緊張感のあるストーリー展開で、つづきが気になってあっという間に6時間くらいプレイしていたりする。もしこれからプレイするという方には、まず最初のエンドまでは絶対にネタバレを目にせずに自分の物語を進めてほしいと切に願う。