「香川県ゲーム規制条例」は、数の暴力によるゴリ押しで進んだ悪夢だ

2020.4.8

ゲーム規制条例は何を規制したいのか

「親御さんからゲームに依存して困っているという声をたくさんいただく」と答えている議員がいる。
親御さんが言っている「ゲームに依存」というのは、大山一郎が語った事件を引き起こすような「ゲーム依存」ではないだろう。
もし、そういう子どもがたくさんいるのだとしたら、異常事態である。
重点的に香川県で、“検証を進め、根本を解決しなければ”いけないだろう。
だが、おそらく、香川県だけそんな緊急事態に陥っているとは考えにくい。

「子どもがゲームばかりして勉強をやらない」「ゲームを深夜までやって、起きてこない」「ゲームを取り上げると子どもが怒る」
そういったことなのだろう。
ゲームに夢中になりすぎて困っている親御さんがたくさんいるのは、想像できる。
だが、親御さんたちの言う「ゲームに依存」と、WHOが定義する「ゲーム障害」を同じものとして扱ってはいけない。
大山一郎議員たちは、これらを同じものとして扱っている。
いや、外部から見れば、巧みに使い分けて、わざとズラして、香川の「ゲーム好き」に「ゲーム障害」というスティグマを刻印しようとしている。

ゲーム脳はなぜしぶといのか

大山一郎議員は、2020年のインタビューで、“10年以上前から、問題にかかわっています。当時、小学生の娘が友人たちと部屋に閉じこもりテレビゲームに没頭するのに驚き「ゲーム脳」を勉強”したと答えている。
「ゲーム脳」というのは、2002年に出版された森昭雄の著書『ゲーム脳の恐怖』(NHK出版)で使われた造語だ。
多くの研究者から批判され、疑似科学であることがわかっている。
というよりも、目を閉じれば出てくる「α波」を異常な脳波としたり、まばたきを測定して脳波だと主張したり、ゲーム脳はお手玉で治ると説いたり、疑似ですらなく珍説のたぐいだ。
負の予言(ゲームを遊ぶと前頭前野が壊れる等)を作り上げて、「よい子でいること」を押しつける。
こういった方法論を、大のおとながやっているのを知った子どもは、どう感じるだろうか。

大山一郎議員は、こうも言っている(香川県議会会議録:平成31年2月定例会 第2日)
“愛着を不安定にする要因として、虐待やネグレクト、親の不在、親との離別、支配的な養育とともに、親の離婚、転居なども挙げられます。これらは、いずれもインターネット・ゲーム依存の背景によく出くわす状況であります。逆に、親との安定した愛着は、子どものインターネット・ゲーム依存に抑止的な効果を認めているのであります。”
理屈も検証もない「結びつけ」は、さらにこう発展する。
“保育所等入所児童数は年々増加し”ており、“大切な時期に、親の都合で保育所等に預けられる子どもが増えていることについては、親子の絆や信頼感の醸成が阻害されることが懸念される”。
「インターネット・ゲーム依存」と同じ文脈で、「保育所等に預けること」が語られている。
親子が触れ合って、会話して、親子の絆や信頼感を大切にしようというのが、大山一郎の基本的な考え方なのだろう(いい考え方だと思いますよ)。
「保育所等に預けること」や「ゲームやスマホを遊ぶ」ことは、それを阻害する要因だ。
「ゲームやスマホを遊ぶ」ことが規制できた今、次のステップは「保育所等に預けること」の規制かもしれない。



この記事が掲載されているカテゴリ

米光一成

Written by

米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。