周囲には理解しがたくても
『リトル・ダンサー』という映画がある。
1984年のイギリス北部の炭鉱町が舞台。主人公は、ビリー・エリオット少年
少年は男らしく生きることが当然という気風で、父親はエリオットにボクシングを習わせていた。
が、エリオットは、華麗に踊るバレエに魅了され、こっそり練習する。
それを知った父親は激怒、何をバカなことをやっておるか、と。
周囲の偏見を乗り越えて、プロのバレエダンサーを目指す過程を描いている。
(めちゃくちゃいい映画で、おすすめです)
周囲には理解しがたくても、本人にとってはそれがとても魅力的で、人生の大きなキーとなるモノがある。
ぼくにとって、それはゲームだった。
そのゲームを、理不尽な理由で奪わなかった両親には感謝している。
理解できないからといって、子どもの大切なものを奪う親になりたいのか。考えてみてほしい。
香川県で何が起こっているのか
「ネット・ゲーム依存症対策条例案」の可決の過程や、その理念についても、少し触れておきたい。
「ネット・ゲーム依存症対策条例案」を推進した大山一郎県議は「ゲーム依存」の具体的な例として、ふたつの事件をあげる(香川県議会会議録:平成31年2月定例会 第2日)。
・埼玉県の33歳の父親と36歳の母親が、赤ちゃんを放置し、死亡させた疑いの事件。
・群馬県の連続殺人事件で殺人容疑で逮捕された26歳の容疑者。
ふたつの事件について、“ゲーム依存が大きく影響していると考えられます”と語る。
ひどい事件であり、しっかり“検証を進め、根本を解決しなければ、同じような事件が繰り返されてしまう”だろう。
これらの事件が「ゲーム依存」が影響しているかどうかは、検証が必要だ。
だが、そもそも、大山一郎が挙げた事件の容疑者は、33歳、36歳、26歳である。
にもかかわらずゲーム規制条例の対象者は、子どもだ。
どうしてなのか?
そもそも、香川県に「ゲーム依存症」と言える事例があるのかどうかすら明示されていない。
検討委員会や、可決までの過程も、疑惑と不合理のなか、数の暴力によるゴリ押しで進んだ。
秋山時貞県議が(検討委員会について)「非公開、議事録がないなど、県民不在の秘密会議とまで批判されています」とコメントしたほどだ。
なぜ、こんなことになったのか。
彼らが規制しようとしているのは「ゲーム依存症」ではないからだ。
規制しようとしているのは、「ゲームに夢中になってしまう子ども」だ。