エキストラ一人ひとりに、人生がある
『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』に登場するエキストラたちは、一見するとクセが強い。カメラの前でどうしても目立ちたい俳優志望や、エキストラのリーダーとして張り切りすぎてしまう人妻、顔出し絶対NGのサラリーマン、死体役を熱演するおじいちゃんなど、さまざまなエキストラがそれぞれの想いを胸に演技をする。
そんな彼ら彼女らを観ていると、エキストラは誰でもいいはずなのに、誰でも良いわけではない気がしてくる。
第1話に登場した俳優志望の青年(間宮祥太朗)のエピソードが象徴的だった。彼は「私服で」というスタッフからの指示に、悪目立ちするような和服姿で登場し、現場を困惑させる。おまけに、エキストラなのに独自の演技プランを持ってきて、カメラの前で度を越した演技を繰り返す。ついに「自分の演技に納得いかなかったからもう一度やりたい」とお願いし始めた彼に、助監督の矢部(水上京香)は言い放つ。
「エキストラは、役者じゃないんで」
はたして、本当にそうなのだろうかと考えてしまう。役名がないというだけで役者でないのであれば、エキストラが演じる名前のない人々は人間として描かれていないのだろうか。
同じくエキストラの女性は彼に「誰も気にしてないですよ。エキストラのことなんて」と声をかける。それでもなお、彼はもがく。
「いや、そりゃエキストラですけど。僕はただ、血肉の通った人を演じたいだけなんですよ」
「諦めたくないんですよ! そっちの世界に行きたいんですよ! どうしても! 誰かに、柴崎翔を見つけてほしいんですよ!」
そんな叫びは現場にむなしく響き渡るだけで、ほとんどの人は彼の存在を気に留めず、ただ撮影が始まる。このときに気づいた、というか思った。このドラマは、「エキストラが主役の物語」なんじゃなくて、「主役になれなかった人の物語」なんだ。
自分の人生の主役は自分だと、気づく瞬間
各回の主人公たちのセリフにも表れている。
「私はいてもいなくてもいい人間じゃない。みんなに認められて愛される、スーパーエキストラになってみせる」
「主役だとか、脇役だとか、そんなこと誰が決めたんだよ。俺たちの人生の主役は、俺たちじゃないか!」
すべての人が自分の人生の主役であると同時に、誰かの人生のエキストラでもある。では自分の人生の主役が自分であると、実感できる瞬間はいつだろうか。それは、「自分を見てくれている人がいると気づいた瞬間」なのではないかと思う。
撮影が再開する直前、矢部は柴崎に向かって叫んだ。
「柴崎翔さん! ちゃんと見てますから!」
このような、誰かに見つけてもらえた瞬間が、このドラマにはたくさん描かれていて、そのどれもがじんわりと心に残った。
主役だからとか、脇役だからとかそんなものは関係なく、人は誰しもその両面性を持っている。画面上では名前もない存在だけど、その一人ひとりにも光が当たる瞬間はどこかにあって、そんな風にエキストラに思いを馳せることは、ドラマの見方を変えてしまうかもしれない。
エキストラは誰が演じても良い。でも、誰でも良い存在を、何者でもない存在を演じることって、ものすごく難しいことのような気もしている。
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