『FLU 運命の36時間』(2014年)
製作国:韓国
ウイルス名:変異型の鳥インフルエンザH5N1
ウイルス発生源:韓国に不法輸入された移民を乗せたコンテナ
ワクチン:抗体から採取
潜伏期間:48時間
被害者数:感染者23万人(韓国盆唐区)
正常化までにかかった期間:数日(政府は盆唐区を中心に治療剤を優先供給)
利用した配信サービス:Amazon プライム・ビデオ
とにかく気の強い女が登場して、工事現場へ車ごと突入。いきなり窮地に立たされる。現場へ向かった救助隊員の男は彼女にひと目惚れ、命を助けた上に忘れ物を現場に取りに行くよう強引に頼まれる。まんざらでもない顔。忘れ物を届けてみてわかったのだが、女は医者であり一児の母でもある。父親とはすでに別居中であるらしい。まんざらでもない顔パート2。みたいな、いかにも韓流というベタな設定と、韓国へ不法に移民してきた連中が持ち込んだウイルスによるパンデミック。二重構造で物語は進む。
韓国の大統領が国民第一主義を貫こうとするが、アメリカからの使者がそれを阻止。側近も裏切ろうとする。みたいな一人称の大きな描写が織り込まれるのも特徴的。韓国で300万人を動員した映画だけあって、国民性が内容に色濃く反映されている。途中、ウイルス感染の恐れがある人間をビニールで包み死体のように扱い、山になったそれを焼こうとする描写がある。ああいうのをどういう感情で観ればいいのか。戸惑う。韓国の観客は、あのシーンをどんな顔で観たのか。映画はただ上映するだけではなくて、観客の表情も記録しておいて欲しいところ。
最後の最後で「盆唐の皆様、撮影のご協力に感謝します」とクレジットが出たが、我が町でああいう映画を撮影されて、現地の人間はうれしいのだろうか。疑問は残ったものの、生存者にとっては希望のある映画。大統領は最後まで勇敢だったけど、あとで揚げ足を取られそうな隙もたくさんあった。まさに韓国映画だと思ったし、こういう種類の商業映画をポン・ジュノは見過ごさなかったのだと感じた。