ランジャタイ国崎「スベっても、笑うまでやる」感性で勝負する男の信念

ランジャタイ国崎『芸人雑誌 volume5』

文=鈴木 工 撮影=夢 一平 編集=山本大樹


漫才の構造を解析し、笑いのアルゴリズムに則って結果を出す賢者の芸人が増えている。そんな風潮に背を向け、枠に収まらない己の感性で愚直に勝負する男がランジャタイ・国崎だ。黄色いジャージと勝手過ぎるアクション。しばしば話の筋が見えなくなる漫才。ただただふざける笑いの原風景のような芸は、お笑い界に巨大な風穴を開けるのか。

『芸人雑誌 volume5』(12月17日発売)に掲載されているランジャタイのインタビューから、コンビのボケ・国崎和也のインタビューを全文公開!

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「もういい加減にしてくれよ、わかったからさ」という笑い

ランジャタイ表紙ver『芸人雑誌 volume5』(限定版/丸善ジュンク堂書店各店とhontoにて限定販売)

──『M-1』の準々決勝を見ました。トレードマークの黄色いジャージではなく、Tシャツで漫才していましたね。

国崎 そうでしたね。動きやすいことが一番なんで。

──決勝に進んだ場合、Tシャツで舞台に上がる可能性もあるんですか?

国崎 全然ありますよ。上半身裸で肌にゼッケン貼ることもありますから。ポイズンさん(POISON GIRL BAND)が『M-1』に初めて出たとき、ほぼ私服で漫才していたのがあまりにカッコよすぎて、その影響が強いかもしれないです。伊藤も僕も、ポイズンさんイズムは流れてますね。僕、阿部さんと仲が良いんですよ。山登りに行って麓ではすごい仲良くしているのに、どんどん無口になっていつも頂上で大喧嘩して帰るんですんですけど。

──いつも動きがキレてますが、体のコンディションによってウケるウケないは変わったりします?

国崎 あんまりないんですよねえ。それよりもお客さんのコンディションによるところが大きいような……。風邪引いたり気持ちが塞いでいたり、お客さんの体調が悪ければ悪いほど、僕らウケるんです。たぶんあまりにバカバカしくて、「なんでこんな小さいことで悩んでいたんだろう?」と思えるんじゃないですか。

──逆にお客さんのテンションが上がっている状況だと厳しい?

国崎 それは結構不利です。『M-1』準々決勝も前の芸人が全員ドカウケだったんで、相方と「やっべえぞ」とずっと言ってました。

──舞台でウケなくて調子崩すことはあります?

国崎 もうウケとか関係ないかもしれないですね。こないだ若い女性がたくさん集まるイベントに呼ばれて漫才やったら、本当にゼロ笑いでした。でもそのときも同じボケ、同じツッコミ、同じ間でやったので、どこ行っても変わらない気がします。

──どんな状況でも崩れないのは昔からなんですか。

国崎 ソニーに在籍していたころからでしょうね。それこそ8年間くらい、劇場で全員スベってたから、もう麻痺しちゃって。耳だけよくなって、クスクス笑いが大爆笑に脳内変換されちゃうんです。スベっても、お客さんが笑うまでやってました。だから僕らって「もういい加減にしてくれよ。わかったからさ」みたいな笑いなんだと思います。

メイウェザーが言ってたんです「食いたいものを食う」って

ランジャタイ・国崎和也(左)、伊藤幸司(右)(『芸人雑誌 volume5』より)

──ランジャタイさんのインタビューを読むと、コント愛を感じるんです。

国崎 コント、大好きです。『ごっつええ感じ』を見てたし、よく考えたらコントやりたくて上京したんですよ。気がついたらずっと漫才やってたんで、最近「あれ? なにやってんだろうな」って。

──今コント番組に呼ばれたら参加します?

国崎 いや~、もう遅いでしょう。それよりも、バレないようにフワッてやるぐらいがいいです。今、自分たちのYouTubeがあるんで、そこで出すのが一番ですね。

──コントを作ることはあるんですか?

国崎 昔、『キングオブコント』にも出たんですよ。自分たちのデカいキ○タマをボール代わりにサッカーするというネタをやりました。小道具のでっかいキ○タマをぶら下げて舞台に出たら、すっごいスベってその勢いのままハケていきましたね。だから7秒くらいしか出てないと思います。

──ランジャタイさんの漫才って、不思議と同じネタを何度も見られる感覚があるんです。やってる側としては、同じネタに飽きたりすることあります?

国崎 いや、何回もできますね。お客さんが飽きても、自分たちはあまり飽きないかもしれないです。ネタが決め打ちじゃないから、全然違うものになったりしますし。

──昔のネタをやったりもしますか。

国崎 ありますよ、全然。手振りや身振りの所作が上達して、昔100伝えていたことを今やったら200伝えられるネタもあるんで、今のほうがウケるというネタもありますね。

ランジャタイ(『芸人雑誌 volume5』より)

──動きや発想で、ネタのためにトレーニングしてることあります?

国崎 これはなにもしてないですね。メイウェザーが昔言ってたんですよ。「ボクサーは昼に練習して辛い思いをして減量する。だけど俺は夜に走るし、食いたいものを食う」って。それを真に受けて全部やってないです。だから調子いいときは100出ますし、ダメなときは0で。台本もまったく読まないから、番組の進行がわかんないこともありますし。台本読んじゃうと頭の中に入っちゃって、あんまり面白くならないんですよね。子供のときから宿題をやりたくないタイプだったんですよ。

──ネタづくりは宿題という感じではないんですかね。漫才の設定みたいなものは普段から意識的に考えてるんですか。

国崎 考えないです。パッと頭に浮かんでパッとやってみたっていうのがいいネタだったりしますね。面白い!と思ったら、体が動いちゃって、それを自分で撮ってみて判断してます。僕がずっとアルバイトしていたガソリンスタンドが誰も来ない環境だったんですよ。職場行くと9時間ひとりで部屋にいたから、暇すぎてマジックミラーの鏡にずっとボケたり、外に出て電信柱に話しかけたりしてました。あっちの電信柱が道の外の電信柱のことを好きだって言っている。でも恥ずかしがっているから、代わりにあっちの電信柱に伝えに行ったり……。それを10年やってました。今考えたらゾッとしますよね!

──しますね。

国崎 自分を撮影して自分を笑わせようみたいなことを何回もしたり、ネタも撮影してました。こんな風に。(国崎がカメラに向かってひとりで動きまくるスマホの動画を見せる)

──これ、ネタなんですね。

国崎 普段からなにをしてるというわけではないんですけど、これがたぶん糧になってますね。

死んでもおかしくないネタ「なっちゃんのピアノ」


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鈴木 工

(すずき・たくみ)ライター。雑誌『プレジデント』、『芸人芸人芸人』など、芸人関係からビジネスまで執筆する。