『阿蘇ロックフェスティバル2021』:PR

泉谷しげるが語る、今の時代の“ロックフェス”のあり方「説教じみた主張はいらない。阿蘇ロックではお客さんが何より最優先」

2021.9.22

「きれいなところで歌ってればいいってもんじゃない」

先の発言の中で「自分の主義主張を押しつける気はない」と語った泉谷だが、彼の話を聞いていると、年長者として、影響力のあるミュージシャンとして、「受け手に考え方や行動を強制しない」ということを、とても意識しているようにも見えた。そこには、長い年月のキャリアを経てきたからこそ、芽生えた意識があるようだ。

「旗を掲げることは、若いころからずっとやってきた。だから、今はもう馬鹿馬鹿しくなったんだよ。特に今はコロナで、みんなが特別な境遇に立たされているわけでさ、特別な人間なんていない。裏を返せば、全員が特別な人間なんだよ。客に向かって『お前らは馬鹿野郎だ!』なんて言えていた70年代とは遥かに違う。

今はどれだけ客を甘やかすかだよ。エンタテインメントが厳しくある必要はない。コロナが収まったら各々勝手なメッセージを言えばいいよ。でも今はみんなが共通のつらい経験をしている時代なんだから、より客を甘やかさなきゃダメ。それが今のエンタテインメントの極意であり、俺はそこを追求したい。『逆らえばカッコいい』なんていうのは、今は通用しないと思う。これは俺の経験から感じること。これが今の俺の本音だよ。本音っていうのは不安定なもんだけど、でも“今”には“今の気持ち”をぶちまけないと、意味ないと思うんだよね」

大型フェスの開催には、地元住民や世間との対話が必要不可欠となる。特に今年は、例年よりもセンシティブな対話が必要とされるだろう。こうした点に、泉谷はどのように向き合ってきたのだろうか。

「下地作りは毎年やるんですよ。地元との交流って思ったより大変で。中には反対する人だっているし、『ロックフェスなんて気に入らない』っていう人もいる。毎年毎年、人の感情も変わる。だからこそ事前のキャンペーンは相当やるし、呼ばれればいくらでも行く。阿蘇周辺の各地域の人たちと会って話すし、福岡とか九州の他県にも行く。もちろん役所にも行くよ。要は根回しに行くんです。根回しは本当に大事。この経験と年齢と名前を利用して、消防から警察から、今だったら医師会だね、すべてに顔を出して脅してますよ、『泉谷だぞ、この野郎』って(笑)。

やっぱり公共の場を使うわけだし、すべてに挨拶回りをしておかないとダメなんだよ。医師会もそうだし、警察も協力してくれないともうアウトですから。『あいつら、勝手にやりやがって』なんて思われたらアウト。そのくせ、高飛車にいくんだけどね(笑)。お願いしに行ってんのか、命令しに行ってんのか、わかんねえよ(笑)。でも、こういうオフの活動の部分を、これからの若い奴らにも育ててほしいなと思うけどね。ロックはきれいなところで歌ってればいいってもんでもないからさ」

デビュー50周年「やったことのないことをやりたい。それが俺の一番やりたいこと」

今年、デビュー50周年を迎える泉谷。そんな彼に、「この先、やってみたいことは?」と質問すると──。

「50周年がなんだっつうんだよ(笑)! どうでもいいよ。むしろ、これだけ長い間活動をやらせてくれたファンの方、および関係者の方に厚く御礼っていうことしかないです。こんな無茶苦茶な野郎を、よくぞまあこれだけ支えてくれたもんだと思う。そこに尽きます。それにさあ、50周年なんて掲げるの、恥ずかしいじゃない(笑)。イヤだよ、そんなの。『明日デビュー』のほうがよっぽどいいよ。俺だって、いいことばかりやってきたわけじゃない、ヤバイことだっていろいろやってきてる、罪人っちゃ罪人なんだから(笑)。

まあ、歳食ったらすべて放り出すくらいの気持ちでいたほうがいいよ。抱えていたって仕方がない。それよりも今は、ひとりで生きる力をつけるためにサバイバルを改めてやってる感じだな。こう言っちゃなんだけど、同世代がポコポコ死んじゃって、まわりに頼れなくなってきてるんだよ。だから、自分ひとりでなんとか生きていかないとダメなんじゃないかって。俺のイメージ的に載せてほしくないけど、まず、不摂生は禁止(笑)。タバコもアルコールもやめたし、宴会も行かなくなった。ドラマの打ち上げに渋々出るくらいで、あとはもう一切やめた。

その代わり、数年前に『プレバト!!』に出た影響で、何十年もやってなかった料理をやったり、あとは俳句とお花。『なんてことをやらせてくれてるんだよ!』って感じだけど(笑)、やったことのないことをやる快感ってあるよな。最初はイヤだけど、だんだんとできるようになっていく自分のことを『すげえ』って思ったりさ。日々、何気なく新しい挑戦をしていくことが大事なんだよな。年寄りでもさ、インターネットとか使っていいじゃん。それでイタズラすればいいんだよ。遊んじゃえばいいと思う。だから、『この先何がやりたいか?』って、強いて言えば、やったことのないことをやりたいですよ。それが俺の一番やりたいこと。自分の芸歴を公に自慢することなんてやりたくない。自分を大事にすることが、一番やりたいことだよ」

自らの経験や立場を冷静に見据えながら、その上で、どこまでも瑞々しくありつづける泉谷しげる。自分自身の中にある“老い”も“若さ”も誠実に受け止める彼の姿や、その濃密な実体験や実感から発せられる言葉のリアルさには、この時代だからこそ響くものがたくさんある。

「俺は歳も食って、長老みたいな立場なのかもしれないけどさ、『体は老けても心は老けない』。これをモットーにしてますから。きっと、みんなそうだよ。どっかに子供のような部分をずっと残していくわけでさ、『心身共に老けちゃって』なんて、あれは嘘だね。あり得ないよ。そういうことを言う奴は、大事に扱ってもらいたくて同情を誘っているだけ。『甘ったれるんじゃねえ!』って感じだよ。もっと自分を自分自身と闘うところに置きつづけないとダメ。闘いつづけさえすれば、“若さ”は意識しなくても存在しつづけるよ。

もちろん、免許証を返さなきゃいけないとか、そういうところは素直に認めたほうがいい。俺だって最近、目が滲んじゃってさ。これは映画の観過ぎと、あとは、絵を描いてるからかな。そうそう、ついこの間、iPadを買ってさ。1日10時間くらい見ちゃうんだよ(笑)。おもしろいよなあ、あれ。こうやって新しいものに触れながら、闘いを日常に持ち込んでるっていうことだよ。

欲が整理されたっていう感じもあるな。それは、年の功だろうね。もちろん、若いころは自分の欲を整理なんてしなくていいよ。若い奴は欲望の塊でいてくれ。そうでないと若者は健康になれないからね。健康とは“攻め”だよ、本当に。阿蘇ロックだってさ、俺が去ったあとは、若い奴らが自分たちのものにしてくれればいいんだよ。今年の阿蘇ロックでさ、俺がステージを降りるときに『帰れ馬鹿野郎!』『さっさと辞めろ!』って言ってくれていいよ(笑)。『あとは俺たちで楽しくやるよ!』って、そういう声が上がるとうれしいなあ」

阿蘇ロックフェスティバル2021

日程:2021年10月23日(土)・24日(日) ※雨天決行/荒天中止
会場:熊本県野外劇場アスペクタ(熊本県阿蘇郡南阿蘇村久石4411-9)
出演:
10月23日(土)
泉谷しげる with BAND、OKAMOTO’S、KEYTALK、Creepy Nuts、SIX LOUNGE、スチャダラパー、never young beach、ファーストサマーウイカ、ももいろクローバーZ、サイプレス上野
10月24日(日)
岡崎体育、GLIM SPANKY、くるり、ゴールデンボンバー、THE BAWDIES、サンボマスター、SKY-HI、羊文学、Shiki

主催:テトラカンパニー、au、NexTone
制作/運営:メロディフェア、BEA、わが社、ストレート
協力:南阿蘇村商工会青年部、阿蘇地区商工会青年部連絡協議会、エフグランツ、桃MOMO、ジェイ・パッション
後援:熊本県、南阿蘇村、KKT熊本県民テレビ
一般問い合わせ:(株)ストレート 096-334-7711 (平日10:00〜17:00のみ)
チケット:イープラス一般販発売中
URL:https://eplus.jp/asorockfes/

泉谷しげる
(いずみや・しげる)1948年、青森県長島生まれ。3歳より東京都目黒区で育つ。1971年、アルバム『泉谷しげる登場』でデビュー。1972年、加藤和彦がプロデュースした2ndアルバム『春夏秋冬』で注目を集める。俳優としても活躍し、主な出演作に『Dr.コトー診療所』(フジテレビ)、『三匹のおっさん』(テレビ東京)シリーズなどがある。

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天野史彬

(あまの・ふみあき)ライター。1987年生まれ、東京都在住。雑誌編集を経て、2012年よりフリーランスでの活動を開始。音楽関係の記事を中心に多方面で執筆中。

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