野球部のマジメさがフリになる?人気コント師たちが“野球コント”を考える「監督だった親父が、ネタを観て泣いたんです」

2021.8.28
ゾフィー上田×ザ・マミィ林田×吉住の“野球コント”

文=斎藤 岬 撮影=前田 立 編集=山本大樹


古今東西、お笑いにおける「野球ネタ」は芸人の誰もがひとつは持っているほどの鉄板ネタとなっている。高校球児、プロ野球選手、マネージャー、補欠、監督……ネタの設定やキャラクターも多種多様。芸人たちは「野球」のどんなところに惹かれてコントや漫才の題材にしているのだろうか?

座談会の前編では、ゾフィー上田航平、吉住、ザ・マミィ林田洋平の3人が、それぞれ野球との距離感や野球部のイメージを語りながらコントの題材としての「野球」を議論した。後編では、未経験者だからこその野球への視点、さらには野球というスポーツの未来まで話題は広がっていく。そして、ゾフィー上田の実の父親である元慶應義塾高校野球部監督・上田誠氏との「野球コント」にまつわる感動秘話(?)も飛び出して……?

白熱の「野球コント」鼎談、いよいよ後半戦!

上田航平(ゾフィー)
お笑いコンビ・ゾフィーのネタ作り担当。主な野球ネタに、ねずみ講と化した高校野球部を描いた『野球部の末路』、手術の約束を結ぶ野球選手を描いた『ホームランを君に』。

林田洋平(ザ・マミィ)
お笑いコンビ・ザ・マミィのネタ作り担当。主な野球ネタに、夏の大会で大敗した野球部を描いた『野球部』。

吉住
ピン芸人。2020年、『女審判』のネタで『女芸人No.1決定戦 THE W』優勝。そのほかの野球ネタに『時をかける女』。


「野球部=まじめ」が壮大なフリになる

──お三方は本格的な野球は未経験とのことですが、一方でダンビラムーチョさんのように、しっかり野球をやっていた人の野球コントもあります。経験者と自分たちのようなタイプとで、題材の切り取り方や着眼点の違いは感じますか?

上田 (自分たちのタイプは)野球への愛情がないんじゃないですか?(笑)

林田吉住 (笑)

上田 だから雑に切り取っていくというか。昔、千原兄弟さんと世界のナベアツさんが3人で単独ライブをやったときに、野球のネタがあったんですよ。「タイム!」って言ってピッチャーとキャッチャーがこう(グラブで口を隠して)しゃべってて、ずっとその状態で人の悪口をグチグチ言うみたいなコント。たぶん、その所作がおもしろいと思ってそこだけ切り取ってるわけですよね。それって、野球の外側にいるからできることなのかもしれない。内側にいて愛情がある人は、そんな場面は当たり前だから違和感を覚えないっていうのはあるんじゃないでしょうか。

吉住 確かに、そこにおもしろを見出さないのかも。

林田 内側にいるとなかなか客観視できないですよね。

上田 できない。だから愛情がある人は野球部のあるあるだったりプロ野球選手のモノマネだったりにいくんじゃないか。こっちはもっと構造的に「ここだけもらいます!」みたいなガサツさがある。

林田 遠巻きに野球部を見て「変だな」って思ってたところの蓄積もありますからね。学生時代、野球部の友達と廊下をしゃべりながら歩いてて、すっごい話が盛り上がってても先輩とすれ違うと急に「オザーーッス!!」って挨拶するんですよ。そういうのとか「変だな~」ってずっと思ってた。でもそいつはなんの違和感も持ってないし「挨拶しないと怒られるだろ」って謎の正論を言われるんですよね。そういう経験があるから、外側から切り取りたいと思ってるのかもしれないですね。

──今回の企画の担当編集者は野球部出身なんです。

高校野球の監督だった父の厳しい指導により、野球にトラウマを持っているゾフィー上田航平

林田 あっ、失礼しました。

上田 嫌いとか言ってすみません。

吉住 すみません。

編集 いえ(笑)。今お話しされてたように、内側にいた人間が野球コントを観ると「ここがおもしろいんだ!?」という発見があります。大会で負けたあとのミーティングで泣くのが当たり前の風景だと思ってましたけど、外から見るとちょっとおもしろいんだなって。

林田 皆さんがまじめにやってきてくれたおかげで、我々はコントにできてるんですよ! 壮大にフリを振ってくれてるから。

吉住 ありがたいよね。みんなが文化を知ってる状況を作ってきてくれたわけですから。

林田 ありがたい。本当はもっと長く振らなきゃいけないコントも、だいぶ端折って始められますからね。

上田 まじめにやってなかったらフリが効いてないわけだからね。

林田 感謝してます。

厳密さが邪魔をする、矛盾したスポーツなのか?

最近はエンゼルス・大谷翔平選手に夢中だというザ・マミィ林田洋平

──吉住さんはテレビで審判の動きを見て研究したりしたんでしょうか。

吉住 いや、そんなに……なんとなく頭の中にあるイメージでやってます。すみません。でも印象的な人はけっこういますよね。

上田 それもサッカーだとまた違うんだろうね。

吉住 野球の審判は動きもけっこう大きいですしね。

上田 俺、わかんないんだよな。なんで(ジャッジするのを)機械にしないんだろうって思わない?(笑)

林田 だいぶスポーツから遠い人の意見だ。

上田 全部機械でできそうじゃん(笑)。前に審判のドキュメンタリーをたまたま観て、それに出てた人が最後のほうで「もし今後これが機械に取って代わられることがあったら、誰も野球を観ません!」って言ったんだよね。俺は「観ると思うけどなぁ?」って思ったの。

吉住 それは言っちゃダメですね!

林田 いま、過渡期ですからね。

上田 あ、そうなの?

林田 わからないときはモニター確認したりします。

吉住 プロ野球でも「チャレンジ」(※注1)とかありますよね。

※注1:判定に異議がある場合に、監督が映像での検証を求めることができる制度のこと。MLBではチャレンジ、NPBではリクエストと呼ばれる。NPBは2018年シーズンより導入

林田 そのあたりもちょっと前まではもっと意見が二分されてたんですけど、今は反対する人は少なくなってきてますね。でも全部機械でいいかっていうと……。

上田 解説で、「関東と関西ではストライクゾーンがちょっと違うんですよ」みたいなことも言ったりするじゃないですか(※注2)。「それマズくない!?」って、俺の感覚では思うの。

※注2:野球を忌避して育った上田さんの記憶です

林田 「この審判はアウトコース取るんですよ」とかは言いますね。

上田 それも含めてそういうスポーツなんだっていうなら、それはしょうがないんですけど。厳密さが邪魔するスポーツなのかな。

林田 矛盾はしてますよね。テレビで観てて、アウトコース取られると野球ファンは怒るじゃないですか。でも「じゃあ機械化しましょう」ってなると「いや、それは」って議論が起きて、不思議な討論になる。「どっちかだよ?」ってことですよね。今後もアウトコースを取られていくのか、機械化するか。

吉住 そうなるとやっぱり温かみって話になっちゃいますね。……すごい大きい話になってきた。

上田 やってこなかった人が野球の未来を勝手に考えてる(笑)。

「本物のソックスってどうやって履くの!?」


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斎藤 岬

(さいとう・みさき)編集者・ライター。1986年神奈川県生まれ。編集担当書籍に「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」(サイゾー)など。「芸人芸人芸人」「月刊芸..

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