スポンサーさんだって番組のファンだから
恩田 「ファン」という方向だけじゃなく、マネタイズを考えるとスポンサーさんも必要じゃないですか? 新型コロナウイルスの影響で、しばらくはスポンサーさんが厳しくなっていきそうですよね。
石井 それはどこの企業もそうだろうね。
恩田 となると、これからの音声コンテンツの大部分は、スポンサーさんじゃなくて、やっぱりファンに支えられる時代になるんですかね?
石井 だから結局、そのスポンサーさんもファンじゃないかと。要は、スポンサーさんの中にもリスナー(ファン)がいて、番組を応援してくれるとか、そういう流れがあると思う。だから「GERAが好きな人を増やす」っていう作業は、必ずしもファンビジネスっていう方向だけじゃなくて、スポンサーさんの中からGERAが好きな人を探して「うちと一緒にできませんか?」と提案するような営業活動が、今後必要になってくる気がするけどね。
恩田 「スポンサーさんもファン」っていうのは目から鱗でしたね。
石井 今後は、そうなってくるんじゃないかな。急に1000万人にリーチするようなコンテンツにはならないから、スポンサーさんの中に「この番組好きです」っていう方がいたとしたら、その方がいろいろやってくれたりすると思う。GERAのいちエピソードに企業がついてもいいし。“なんとかプレゼンツ”っていうネーミングライツでもいいじゃない。ラジオに限ったことじゃないけど。
恩田 なるほど。まだまだやれることはありますね。ただ、stand.fmやRadiotalk、Podcastみたいに、各々が番組を作れちゃう時代じゃないですか。そこでGERAが制作側としてどのように価値を出していくか考えてるんですけど、石井さんはどうしてますか?
石井 それはYouTubeに対してのテレビと、Podcastに対するラジオも一緒だと思う。たとえば『オールナイトニッポン』のいろんなパーソナリティの方と話すと「ここに来てしゃべることに意味がある」と言ってくれるんだよね。
コロナ禍になって、パーソナリティは別の場所からしゃべることもあったんだけど、やっぱりニッポン放送のスタジオに来て、スタッフと一緒にみんなで『オールナイトニッポン』という場所でしゃべる。そのブランドに価値を感じていただいてる気がする。彼らもリスナーだったわけなので。
恩田 ブランド……GERAはその価値をどうやって作っていこうか……。
石井 だからGERAも、聴いてくれている若い人たちが憧れるような存在にしていくしかないんじゃないかな。「GERAでしゃべると売れる」とか「おもしろい」みたいにしていくことが、ブランドの価値を上げていく。スタッフもそうだけど、パーソナリティも「GERAでやりたい!」みたいな人たちを増やす。そうしていかないとこの先、生き残っていけないと思う。
だって、自分で作った作品がNetflixで配信されたらすごいブランドになる。テンション上がるよね。雑誌もそうじゃない? 自分が描いたマンガが『ジャンプ』や『サンデー』に載ることがうれしいわけで。「自分がしゃべってる番組がGERAであることがいい」ってなるためには、もっともっとつづけていかないと。
『オールナイトニッポン』は2021年で、放送開始から54年。ニッポン放送自体で言えば創立67年。そういう歴史がある番組でも試行錯誤しているわけだから、1年や2年でそういうムーブメントを作ろうっていうのはちょっと……ナメてんのかっていう(笑)。
恩田 「そりゃ『ナメてんのか』って言われるわ」と思いました、今。
石井 そういう意味では、『オールナイトニッポン』はずっと終わってないんだよね。諸先輩方が作ってきた、血と汗と涙の結晶だから。かといって、「1、2年だから何も結果出さなくていいよ」っていうのは嘘じゃん。だから、長期的な目標と短期的な目標を持って達成しないと、みんな待ってくれなくて番組が終わっちゃう。
いろんなパーソナリティの番組を終わらせないことも大事だけど、GERAそのものを終わらせないようにした方がいいんじゃない? これは、音声メディアすべてに言えることだと思うけど。
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