「なぜこんなに若い方がたくさん亡くなっている?」日本人僧侶が明かす“技能実習生の実態”

2021.6.30

コロナ禍で後回しにされる外国人問題

コロナ禍の影響によって、2020年以降は吉水氏への相談は増加傾向にあるという。職や家を失った実習生、学費が払えず退学した留学生、飛行機が飛ばなくて帰国できないといった深刻なものも多い。

──コロナ禍では実習生や留学生にどのような影響があったのでしょうか。

吉水 給料未払いや、本来なら13万円もらえるところが7万円や5万円しかもらえないということが起こりました。そうなると借金も返せず、仕送りもできず、ベトナムの家族が困窮してしまうので、よりよい給料のところに行こうと失踪が起こります。

──吉水さんらが政府へ働きかけた結果、帰国が困難な状況の人たちに向けて週に28時間の労働が許可される特別措置が出たそうですが、それだけではじゅうぶんではないのでしょうか。

吉水 コロナで便数が減って飛行機代が28万円から40万円ほどかかりますが、家賃、生活費を払いながら週28時間の労働で飛行機代を貯めようと思ったら、1年近くかかってしまいます。たとえばそれを週40時間にしたら、もっと早く帰れますよね。

──どうしてこのように対応が後手後手となってしまうのでしょうか。

吉水 外国人の問題というのは、関心を持つ人が少ないので対応が後回しになっていて対応する公的機関がなく、私たちのような民間の団体が中心になって活動しています。政策を作る側の人たちには、もう少し実情に合った、思いやりのある政策を考えていただきたいです。

吉水氏と彼女が支援しているベトナム人たち

見直しが必要な技能実習制度

問題点が多いと言われる技能実習制度だが、それでも来日する外国人が絶えないのは、きちんとした企業で実習し、3年間まじめに働けば300万円近く貯めて祖国に帰ることができるからだ。その点についても伺ってみた。

──技能実習制度にもいい点はある、という意見もありますが。

吉水 そうですね、大学卒業の学歴を持っていない中卒や高卒の学歴でも、技能実習制度を利用すれば来日して働くことができます。必ずしも技能実習制度のすべてが悪いわけではありませんが、見直しは必要です。

──では、技能実習制度のどのような点を改善すればいいのでしょうか。

吉水 まず、借金しなくても来られるようにすること。また、今の制度ではとにかく誰でもいいから人を集めるような感じになっていて、日本語を覚える気がまったくないとか、そもそも仕事を覚える気がないとか、明らかに日本で働くのに向いていない人まで来日しています。

日本語の勉強をちゃんとした上で、本当にやる気があって、働く気がある人だけに来てもらうように受け入れ時にふるいにかける必要があるのではないでしょうか。それに日本側も来日してからも日本語の勉強をさせるとか、ちゃんと稼げるだけの仕事を与えて、賃金を支払う努力ができる実習先で受け入れなければなりません。

映画『海辺の彼女たち』で描かれていたように、日本には多くのベトナム人女性が技能実習生として来日している

──現在およそ37万の人技能実習生が日本にいて、その制度や実習生の待遇が問題になっていますが、実習生の人権を守る機関や実習生のメンタルのケアや保護をする公的機関はないのでしょうか。

吉水 相談窓口となっている外国人技能実習機構があまり機能しておらず、企業側は実習生を人ではなく労働力としてしか見ていません。実習生が仕事の覚えが悪かったり、日本語ができないといったような理由で、使えなければ返品、強制帰国というように軽い気持ちで実習生を採用するような企業もあります。しかし、人間を相手にしているのですから、それは人道的にもよくありません。

無言の帰国をさせないために

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