つんくが明かす「日本一の量産ぶり」その裏側と信念。ロンドン同行、約2万字インタビュー&レポート(1)

2020.7.16


「まあ病気なんですよ、たぶん」

――あの、これ持ってます? 最近出たCDなんですけど。

つんく 持ってないですね。

――じゃあ良かったら。プレゼントします。

つんく ありがとうございます。

――『リヴァプール・サウンド・コラージュ』ってアルバムなんですけど。ポール・マッカートニーがビートルズ時代のセッション・テープをもとに制作して、最近リリースされたんです。スーパー・ファーリー・アニマルズっていう若いバンドも参加してて。もともと(アルバム『サージェント・ペパーズ』のジャケット・アートで有名な)ピーター・ブレイクの個展用に制作されたCDなんで、実験的ですけど。面白いですよ。

つんく へえ。そうなんですか。ありがとうございます。聴かせていただきます。

――ぜひ聴いてください。どうですかロンドンは? もう3日目ですよね?

つんく そうですね。ちょうど3日目ですかね。

――東京にいる時に比べると楽な感じですか?

つんく そうですね。だいぶ楽ですね。ああ、でもあんまり……。

――全然遊んでないじゃないですか。あんまり楽そうにも見えなかったんですけど(笑)。

つんく あんまり楽でもないかも知れないですね。まあ、でも、東京にいるよりは楽かな。今んとこは頭使う時間が少ないから。レコーディング入ると、また使い始めると思うんですけどね。

――今日も朝からずっと撮影でしたけど。あれでもまだ楽?

つんく そうですね。自分は頭使わないですからね。言われてるようにやってたらいいので。

――なるほど。僕は今日、こうやって初めてつんくさんとお話するわけじゃないですか。で、お会いしたら、まず真っ先に聞きたかったことがあるんですけど。すごいストレートに言っちゃうと、「なんでつんくさんはそんなに働くんだろう」っていう(笑)。

つんく ああ。なんでなんですかね。やっぱり日本人を代表して一番働かないとダメかなっていう。

――でも、そのワーカホリックぶりって、はたから見てると理解不能なんですけど。

つんく まあ病気なんですよ、たぶん。

――そうなんですか(笑)。でも、最近の傾向として売れてるミュージシャンの方々がどんどん活動ペースを落とす中で……。

つんく でも、彼女とかはけっこう頑張ってるじゃないですか(目の前にあった『クイック・ジャパン』Vol.32号表紙の“椎名林檎”という文字を指す)。

『クイック・ジャパン』Vol.32

――いや、でも、林檎さんもここ最近はシークレット・ライブを何度かしてるくらいですよ。それに比べても、やっぱりつんくさんの場合は……。

つんく 僕も最近はそのつもりなんですけどね。

――あ、そうなんですか。

つんく 出てるって言っても……まあ、一時のこと思ったら露出してる時間はだいぶ少ないような気はしてるんですけどね。

――メディアへの露出はそうかも知れませんけど、ただ……。

つんく プロデュースしてる時間は長い。

――そう。曲の量産の仕方とか、すごいじゃないですか。量産ぶりでいくと、たぶん今、日本一ですよね。

つんく 曲はそうですね。作ってるかも知れないですね。メジャーで出してる人たちの中でいくと、そう(日本一)かも知れない。

「ヒット曲を作るためだけならば、断る仕事」

――その突進を裏側から支えてるものの正体を今日は探りにきたんです。

つんく どうなんですかね……まあ、その、2年くらい前からずっと思ってたんですけど、「出来る限りの仕事はやろう」「どこまでやれるかな」っていうのがあって。だから、自分のセンスだけで「この仕事はOK」「この仕事はNG」ってやるのって、すごく難しいと思うんですよ。たとえば売れそうな仕事とか、そこそこ結果になりそうなものとか、もしくはギャラがすごくいい仕事とかね。そういうものだけを選んでやるのは、たぶん面白くないと思ったんですよ。僕の人生にとってね。

だからたとえば、こないだ女子プロレスラーのプロデュースもしたんですけど(“キッスの世界”)。まあ、ものすごい歌下手だったんです(苦笑)。でも、それはそれで、それを音楽にするっていう作業も面白かったんですよ。

そういう仕事はたとえば、僕がヒットチャートに入れるためだけに仕事をするプロデューサーだったら、たぶん断ってたと思うんですけど。そういう仕事を僕のところに頼みに来てくれるっていうこと自体が、僕にとっては、これはすごく嬉しいことだと。まあ、もちろんそれだけじゃなくて、スケジュールの調整もあるし、それを理解して動いてくれるスタッフがいての結果なんですけどね。そういうのって、普通、誰かが削除したりするじゃないですか。

――そうですね。しかし、ミュージシャンに限らず大抵の人って、自分の枠というか、自分のセンスや趣味の中で行動を選びがちですけど、つんくさんの場合、それをしないんですね。

つんく それが刺激になってるんですよ。だから、そこで学んだ何かが他に生かされるんです。たとえば“キッスの世界”の時は、やっぱり機材を駆使したんですけど、それによって我々の機材の使い方が進歩するんですよ。それはそれでまあ……。

――自分の枠自体が広がると?

つんく そう。それはいいことじゃないですか。

「記憶にない頃から聴いてた」ビートルズへの想い


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北尾修一

(きたお・しゅういち) 百万年書房の中の人。1968年、京都府生まれ。株式会社百万年書房代表取締役社長。百万年書房

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