TBSアナウンサー田村真子が“書くこと”で気づいた自分らしさとは?1stフォトエッセイ『陽がのぼるほうへ』担当編集と制作振り返り!

2025.8.21

文=於 ありさ山本大樹 撮影=矢島泰輔 編集=高橋千里


「自分のことを伝えるのは、あまり得意ではなかった」──不安と達成感が入り混じった顔でそう語るのは、『ラヴィット!』でおなじみのTBSアナウンサー・田村真子。

8月25日に初のフォトエッセイ『陽がのぼるほうへ』(太田出版)を発売する。同書には『Quick Japan』と『QJWeb』で毎月掲載していた連載に書き下ろし原稿を加えた15篇のエッセイと、60ページ以上の大ボリュームのフォトストーリーが収録されている。

『陽がのぼるほうへ』(太田出版)

今回は、同書の制作について、担当編集の山本がインタビューする形式で振り返り。エッセイを執筆するなかで気づいた自身の一面や、“書くこと”に対する思いなどを聞いた。

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いい文章は「ギリギリにならないと出てこない」

——まずは校了、おつかれさまでした。田村さんには約1年にわたり、エッセイ連載で文章を書き続けてもらいました。アナウンサーのお仕事で忙しいなか、本当にありがとうございました。この連載を始めるときと、書籍化が決まったときの率直な感想を教えてほしいです。

田村 今回のエッセイ連載を始めるとき、担当編集の山本さんに「番組の話とかではなく、田村さんの“個人的なこと”を書いてもらいたい」と言っていただいたので、最初は「どうしよう、ちゃんと書けるかな」って不安でした。もっというと、私自身のことを読んでいただく方に、ちゃんと興味を持ってもらわなければいけないので、そこに対する心配もありましたね。

さらに本となると、お金を出して買っていただかなければいけないので、手に取った方にちゃんと満足してもらえるような、お金を払うに値する文章を書けているのだろうか……というプレッシャーがすごくありました。

——初めての仕事ということもあり最初は苦労していたようにも思いますが、だんだんと田村さん独自の文体が確立されていったような印象を受けました。執筆中にこだわったポイントはありますか?

田村 これまでの人生で、特別たくさん文章を書いてきた人間ではないので、「読んでもらう人におもしろいと思ってもらえるような文章、読み進めやすい文章って、どういう感じなんだろう?」っていうのを自分で書いては読んで、書いては読んで……を繰り返して、書き上げていきました。

毎回締め切りを設定してもらっていたんですけど、読んでもらうための文章を考えると、1日前にならないと筆が進まなくて。よくないなと思いつつ「私はギリギリでぶわーっと出てくるタイプなんだな」と思いましたね。

——でも、毎回締め切りをちゃんと守ってくれていましたし、エッセイの中でしっかり盛り上がるポイントも意識して作ってくれていたように思います。一回も遅れることはなかったですよね。そんな方、普通いないですよ。

田村 よかった、ちゃんとしてるほうなんだ(笑)。

毎回の執筆は、静かな場所で腰を据えて

——「自分のことを書く」というのは想像以上に大変なことだったと思います。実際にここ数カ月はずっとゲラ(印刷前の、文章がレイアウトされた校正紙)の確認作業をしていただきましたが、ご自身で読んでみての感想はいかがでしたか?

田村 自分の書いた文章ではあるんですけど、読めば読むほど自分で読み慣れない部分も出て、わからなくなっていきました。今までの人生で一番文章を書いたのが卒業論文でしたし、アナウンサーはあまり自分の言葉を書くことってなかなかないので、大変でしたね。

——達成感というよりも、不安のほうが大きかったですか?

田村 そうですね。「書いたなぁ」とは思ったりもするんですけど「こんなものでいいのかな?」って気持ちのほうが強かったです。

——ちなみに平日は毎日生放送があって多忙だったと思いますが、連載の原稿はどんなタイミングで書いてたんですか?

田村 移動中にちょこちょこ書く人もいるらしいって話を聞いたこともあったのですが、私はそれができなくて、「ちゃんと書こう!」って静かなところで腰を据えないと書けないタイプでした。連載中は「こういうことを書いたほうがいいかも」ってアイデアが思い浮かんだら、とりあえずそれを文体気にせず書いて、最後にまとめたりもしましたね。

ただ、そういうやり方をしたところで、やっぱりギリギリにならないといい文章が出てこないことが多かったです。宿題とかもギリギリで終わらせていたタイプなので、もうこれは性格なんだと思います(笑)。

「1エピソードごとに…」文章に自信がついた瞬間

——今だから言える、連載で大変だったことは? 担当編集に対するダメ出しもあったら聞きたいです。

田村 いえいえ、そんな!(笑) 連載を始めるときの打ち合わせで各回のテーマをいくつか挙げていただいて、それに沿って書いたりはしていたんですけど、これは難しいなぁというエピソードはたまにありましたね。「大失敗エピソード」とか、「黒歴史」とか、結局書いてないと思います。平凡な人生を歩んできたので、そんなにエピソードがなくて(笑)。

でも、テーマを設定してくださったのも「本にするときに困らないように」という理由からだったので、基本はテーマに沿って書かせていただきました。それで、ゲラができ上がったとき、山本さんが1エピソードごとに鉛筆で感想を書いてくださって!

——連載時は毎月1篇ずつ読んでいたので、すべての原稿がまとまったタイミングで全体を通して読んでみると、連載時には気づかなかった田村さん自身の心の動きや日常の中で意識しているポイントが見えてきたような気がして。なので、改めて一つひとつに感想を書かせていただきました。「もっと詳しく書けますか?」「このときどう思ったか覚えてますか?」とか、注文も多かったと思いますが……。

田村 あれは感動しました。連載のときもメールで感想をくださったことはあったんですけど、自分の文章が読んでもらう人にどう受け取られるのかわからないまま書いていたので、「一応、ちゃんと書けてたんだなぁ」と自信がつきましたね。

——田村さんの文章は、情景描写よりも感覚的な捉え方が多いのが“らしさ”だなぁと思いました。たとえば食事のエピソードでは、食べているときの感情や思考の流れは丁寧に書かれている一方で、味について一切書かれていなかったですよね。

田村 (頭を抱えながら)本当に覚えていないことが多いんですよね……。普通においしいんですけど、私の記憶には具体的なものより感覚的なことしか残っていなくて。

でも、アナウンサーって、リポートとかするにあたって情景描写が上手じゃなきゃダメなんですけどね(笑)。仕事とはまた違う感覚で記憶をたどって、言葉にするのは楽しかったです。

——その情景描写も、連載を重ねるうちにどんどん上手になっていきました。特におもしろいエピソードや届けたいメッセージを的確にまとめて伝えられるのは、さすがアナウンサーさんだな、と思いました。

田村 そう言っていただけてよかったです。

「言葉を届ける仕事」と「文章を書くこと」の違い

——アナウンサーとして言葉を届けるお仕事と、文章を書くことの違いってどんな部分にあるのでしょう?

田村 全然違うなと思いました。でも私は話しながら、自分のことや、自分の考えていることを伝えるのって、あんまり得意ではなくて。番組でも、ワンショットで抜かれて何か言わなきゃいけないシーンが、いまだに苦手なんですね。

そう思うと、文章のほうが自分で言葉を吟味して書き上げられるので、好きかもしれないです。大変さもあるけど、楽しかった!

——最終的な文字数もかなりのボリュームになって、相当ハードな執筆作業になってしまい申し訳ない気持ちもあったのですが……(笑)。楽しんで書き進めていただけたようで、よかったです。

田村 そうですね。書くのは楽しいし、自分の中でもいい振り返りの機会になりました。言葉で経験を落とし込むことってなかなかないので、今後も続けていけたらなと思います。

でも、その一方で「書いてください!」って言われないと書かないタイプだろうなと思います。自発的に書き溜めることはできないタイプなので、もしも人に読んでもらう文章をまた書くのなら、ぜひテーマと締め切りを設定していただきたいです(笑)。

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山本大樹

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山本大樹

(やまもと・だいき)クイック・ジャパン編集部。1991年生まれ、埼玉県出身。

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