Bリーグプレイヤー・富樫勇樹がクロスカルチャーイベントを企画「音楽とスポーツ、お互いにリスペクトする関係に」

2025.8.2
富樫勇樹

文=森 ユースケ 撮影=長野竜成 編集=梅山織愛


プロバスケットボールリーグ・Bリーグにおいて、初の年俸1億円超え選手であり、日本代表でもキャプテンとして牽引するなど、名実ともにトッププレイヤーの富樫勇樹。そんな彼が、バスケ界をさらに盛り上げるべく開催するイベントが『UNAVERAGE FES.』だ。

音楽とスポーツを融合させたクロスカルチャーイベントで、2024年に初回を開催。8月28日(木)に横浜BUNTAIで開催される第2回は、PUFFYやMONGOL800、氣志團などのアーティストに加えて、さまざまな競技のトップアスリートのほか、人気YouTuber「Lazy Lie Crazy【レイクレ】」のともやん、サワヤン、すみぽん(高倉菫)らも参加予定。

そんなイベントを主催する富樫本人は、カルチャーに造詣が深いパブリックイメージがないが、どのような思いでこの企画に臨んでいるのか。これまでのインタビューでは明かしてこなかった好きな音楽の話に加えて、日本バスケ界の未来、NBAに挑戦中の後輩に対する思いなどを語ってもらった。

富樫勇樹
(とがし・ゆうき)1993年7月30日生まれ、新潟県出身。中学時代に全国優勝を果たし、高校ではアメリカに留学。2012年にbjリーグでプロデビューし、2014年にはNBAのダラス・マーベリックスと契約後、傘下のチームでプレイ。2015年からはBリーグの千葉ジェッツふなばしに所属。身長167cmと小柄ながら、日本人初の1億円プレイヤーとなったほか、チームをリーグ優勝に導き、リーグMVP受賞経験を持つなど日本バスケ界を代表する選手。日本代表経験も豊富で、2021年の東京五輪ではキャプテンを務めた

他競技との交流で仲間のありがたさを改めて感じた

富樫勇樹
『UNAVERAGE FES.』を主宰する富樫勇樹

富樫勇樹(以下、富樫) バスケと音楽だけじゃなく、ほかの競技の要素も取り入れているイベントで、昨年に続いて開催できてうれしいです。バスケが好きな人であればほかの競技の魅力を知ってもらったり、その逆も、という感じでいろいろな要素を楽しんでほしいですね。

富樫 そうですね。僕が所属する千葉ジェッツふなばしのファン感謝祭で、ピックルボールをやったとき、「バスケと違う表情が見られてよかった」という感想が多かったみたいで。そういう部分を楽しんでもらえたらいいですね。僕もスポーツをするのは好きなので。

富樫 趣味でゴルフをやっているので、得意とはいえないですけど、ゴルフは好きです。

富樫 はい。バスケットの選手に関しては、すでにチームの練習が始まっている時期なのでスケジュール次第にはなります。とはいえチームメイトは、僕が行けるということはみんな行けるということなので(笑)。

富樫 何かきっかけがあったわけじゃないですけど……。プロとして10年ちょっとやってきたなかで、バスケもプロリーグとして大きくなってきて。ここからさらに、日本のスポーツの中でもっと認知されるリーグになってほしいという思いはあります。

バスケに限らず、何かのきっかけがないと新しいものを見ることがないと思うんです。僕自身、友達に誘われて初めて見て、よかったと思うこともあるので。今回はアーティストやアスリートがたくさん出演するので、その人たちの魅力が伝わるひとつのきっかけになってほしいなと思います。

富樫 大人数の会に行くのは苦手なので、たくさんはないですね。去年の『UNAVERAGE FES.』に出てもらった体操の谷川航選手、萱和磨選手(ともにパリ五輪の金メダリスト)は、千葉ジェッツふなばしの試合を観戦して、セレモニーに出てもらう機会がありました。今回もそうやって、イベントを機に応援し合える関係になれたらいいなと。

富樫 どうなんですかね……。共通点というか、個人競技と団体競技でまったく感覚が違うと思いました。個人競技は自分の成績がすべて。まわりに頼れないし、結果がすべて自分に返ってくる感じ。本人たちはそれがいい、そうじゃないと嫌だって言うんですけど、僕はそれは嫌だなって思う。チーム競技でよかったなって。

富樫 そうですね。自分がどれだけひどい出来でも、まわりに助けてもらって勝つ試合もたくさんあるので。もちろんその逆もあるけど。すべての結果が自分で決まるっていうのは、個人的には嫌だなと。自分でスケジュールを立てて、トレーナーを雇ってトレーニングをして……という感じで自由度は高いけど。それって、その人のやる気次第で相当変わってきてしまう。今はチームに縛られて、強制的に参加しないといけないじゃないですか。当たり前ですけど(笑)。それが自分にとってはいいですね。

富樫 そうだと思います(笑)。決められた時間に練習場に行って、まわりの選手ががんばっている姿を見て、一緒に乗るかたちでがんばる日もあれば、その逆で自分が引っ張る日もある。そう考えると、個人競技はすごいなって思います。

富樫勇樹
自分は団体競技が向いていると語る富樫

第1回のフェスは、プレーオフよりも疲れた

富樫 そういうイメージはないですよね。実際、このアーティストが好き、この曲がすごく好きで誰かを追いかけてなど、特定の何かが好きというのはあまりないので、試合前に曲を聞いてテンションを上げるルーティンは、正直なくて。

富樫 そういうこともありますね(笑)。移動の新幹線でヘッドホンをして音楽を聞く選手も多いんですけど、僕がそうしてる姿は誰も見たことがないと思う。だからいつも、「何してるの?」って聞かれることが多いです。

富樫 普通に隣の人と話したりしますよ。最近は渡邊雄太選手と隣になることが多いので、ずっと話してます。ただ、音楽自体は好きで、車の中ではいつも何かの曲を流してるし、ライブを観に行くのは好きなんです。音楽だけじゃなく、パフォーマンスや現場の雰囲気も込みで楽しむ感じですね。

富樫 昨年ですが、友人とMrs. GREEN APPLEや宇多田ヒカルさんのライブに行きました。最近だと、サザンオールスターズのライブに行く予定が、チームのイベントと重なって……。あれは行きたかったですね。海外のアーティストも、来日したタイミングでけっこう行きますね。誰かに誘われてというより、自分から行くことが多いです。

富樫 それはたぶん、5~6年前に来日したときにライブに行ったので、そのときのインタビューだと思います。

富樫勇樹
意外にもアーティストのライブに行くことは多いという富樫

富樫 小中学生のころに音楽を聴く習慣がなく、高校はアメリカに留学していたので、自分からこういう曲を聴こうというよりは、車の中でランダムに曲を流してる中で気になったアーティストのライブがあれば、行ってみたいという感じです。

富樫 そうです。カラオケで先輩に歌わされて……っていっても、本人もわりとノリノリでしたけど(笑)。

富樫 年に数回、選手全員で食事をするときに、カラオケがついてる場所に行くことがあって、取材で質問をされたときに、そこで彼が歌ってる光景が浮かびました(笑)。

富樫 いや、一回もないです。子供のころから人前に出るのが苦手で。クラスの出席で立つのすら苦手でした。バスケをプレーする以外で人前に立つ、マイクを握るというのは、いまだにすごく苦手です。

富樫 そうですね。去年もイベント後は疲労感がすごかったです……。

富樫 いや、それ以上です。慣れないことばかりだったので、バスケなんか比にならない精神的疲労でした。昔の自分だったら、こんなことするなんて考えられないですね。

富樫 会場の雰囲気、アリーナのサイズ感を含め、似ている部分があるかなと思います。

富樫 自分の感覚というより……。アメリカのバスケット選手って、日本よりもHIP-HOPとか音楽と近い関係にあるんです。留学していた時代から、お互いに憧れてリスペクトしている関係性を目の当たりにして。そういう環境だとやっぱり音楽好きも多い。正直、歌詞は全然わからなかったですけど、音楽、ファッションを含めて、アメリカで感じたよさを取り入れたイベントにしたいと思いました。

NBA挑戦中の河村勇輝はキャラを作っている?

富樫 Bリーグが始まったころは、まずホームコートである船橋アリーナを毎試合満員にするための努力を、フロント、選手、チーム全員でしていましたね。(2024年秋より始まった「2024-25年シーズン」から)新しくホームコートになったLaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)のキャパは1万人で、埋まるかどうかわからない状態でスタートして。たくさんの人が集まった会場の雰囲気は全然違うし、たくさんの方に見ていただきたいという意識は、年々上がってきていると思います。

富樫 今、彼を日本で見る機会はなかなかないので、スケジュール的に問題なければ来てほしいと思っています。特に、ああいうくだけた雰囲気を見る機会はないと思うので。

富樫 まあ、メディアの前で固すぎるんですよね。固いというか、(キャラを)作ってる(笑)。

富樫 それで統一したほうが、変におもしろいことを言わなくていいし、ラクなんだと思います。

富樫 高い実力があるのはもちろんですが、“持ってる”と思いましたね。まずはプレシーズンに同じポジションの選手がケガをして、チャンスがあった。しっかり準備をしていたはずだけど、それでもそういった運は大きいです。

海外も含めていろいろ見てきたなかで、NBAの14~15番手(毎試合の登録人数の上限は15)の選手と、今日本のBリーグで活躍する選手で何が違うかというと、そこまで大きな差はない。何かのきっかけや巡り合わせでしかないと思うので、そのチャンスをしっかりつかんだのはすごいと思います。

富樫 そうですね。少し前だと、ユーロリーグの選手が来ただけでうわ〜っと驚いていたのが、今では当たり前のようにNBAで試合に出ていた選手がいて、ドラフト上位だった選手まで来るようになったほど。その選手たちとやり合わないといけないので、国内の選手も確実にレベルが上がってきていると思います。

富樫 もちろんNBAとBリーグのレベルが同じとは思っていなくて。NBAは世界最高のリーグなので、身体能力やスキルの違いはあります。ただ、たとえばBリーグ2024-25年シーズンのファイナル(リーグ内の1位を決めるシリーズ)の琉球ゴールデンキングスと宇都宮ブレックスの対決は、バスケットのおもしろさが詰まった試合だったと思います。

細かいスキルがどうというより、あれを見て何も感じない人はいないと思えるようなおもしろい試合だったので、今回のフェスを含め、何かのきっかけでそういった試合を見に来てもらえたらうれしいです。

富樫勇樹

富樫 それを目的にしたルール変更なので、結果がどうなるか。外国籍の選手ばっかりが出るリーグになって、失敗になるかもしれないし、やってみないとわからないです。まったく出られなくなる選手もいるだろうし、大事な試合に絡む選手もいる。僕の感覚では、レギュラーシーズンはある程度、出場時間をシェアするけど、プレーオフとか大事な試合では、オンフォー(出場する5人中4人が外国籍と帰化選手)で戦うチームが出てきてもおかしくない。

富樫 はい。でも、見てくれる人たちが何を応援してくれるか、というところもあるので。日本人の活躍や成長を見たい人が多ければ、そういう編成になっていくし。そういった環境でリーグのレベルがどんどん上がっていくといいな、と楽しみではあります。

『UNAVERAGE FES.』
2025年8月28日(木)開場15:00/開演18:00/終演 21:00(予定)
会場:横浜BUNTAI
公式サイトはこちら

この記事の画像(全7枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。

関連記事

青木源太アナが忘れられない『スラムダンク』屈指の名シーン「赤木の回想に『チエコスポーツ』店長が出てきて…」

『スラムダンク』は「呪い」だった。映画監督・枝優花が孤独の日々に出会い、取り憑かれたバスケマンガ【わたしと『スラムダンク』#2】

三代目JSB・山下健二郎が語る『スラムダンク』の魅力「NBAやバスケそのものへの愛が詰まっている作品」【わたしと『スラムダンク』#1】

ミキ

ミキが見つけた一生かけて挑める芸「漫才だったら千鳥やかまいたちにも勝てる」【よしもと漫才劇場10周年企画】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「猛暑日のウルトラライトダウン」【前編】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「小さい傘の喩えがなくなるまで」【後編】

「“瞳の中のセンター”でありたい」SKE48西井美桜が明かす“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「悔しい気持ちはガソリン」「特徴的すぎるからこそ、個性」SKE48熊崎晴香&坂本真凛が語る“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「優しい姫」と「童顔だけど中身は大人」のふたり。SKE48野村実代&原 優寧の“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

話題沸騰のにじさんじ発バーチャル・バンド「2時だとか」表紙解禁!『Quick Japan』60ページ徹底特集

TBSアナウンサー・田村真子の1stフォトエッセイ発売決定!「20代までの私の人生の記録」