昨年、アーティスト活動10週年を迎え独立し、さらに約1年を経て、新曲「だから終われない恋」をリリースしたシンガーソングライター・MACO。11年というキャリアの中で貫かれるアーティスト性や、途中で1から作り直したという新曲の制作過程について話を聞いた。
活動10周年で独立を決意
2024年4月で、MACOさんは活動10周年を迎えましたよね。この10年間は、長く感じましたか。それとも、あっという間でしたか。
肌感覚的には、短かったかもしれないですね。10年前に住んでいた家や街並み、一緒にいたスタッフさんを思い浮かべると「めっちゃ昔!」って思うんですけど、この10年はあっという間だったなって。「10年も経ったっけ?」って感じで、今となっては、すべてが決められた運命だったようにも感じるんですよ。悪くいえば鳥かご、良くいえば親元を離れて独り立ちすることは、あらかじめ決まっていたんじゃないかなって。
そもそも2024年5月に事務所を辞めて独立したのは、何が決め手だったんですか。
簡単にいうと、方向性の違いですね。
とはいえ、独立を決心するのは簡単なことではないと思います。
裏のことは何もやったことがないし、PDFすらわからない状態だったんですけど、応援してくれているまわりの人たちが背中を押してくださったので、一歩踏み出すことにしました。自分の人生なんだから、グズグズするのはやめてもっと好きなことをしようって。

決まっていた運命に乗っかったというか。
本当に運命的でした。10年越しにまた一緒に仕事をしている方々もいて、この空白の10年間で、お互いに違う学びの時間を重ねてきて、再会を果たして。葛藤している時期があったのはここに行き着くための伏線だったんだなって思うんです。こうなる運命だったんだなって。これまでのアーティスト人生の中で、今とても充実しています。
2024年の12月に開催した『MACO ~MY LIFE, MY LOVE LIVE 2024~』も、本当に楽しくて。どんなライブでも少しずつ記憶が薄れていってしまうものじゃないですか。だけど、あの日のライブは、全部が記憶に残っているんですよね。今までで特に楽しかったライブかも。
これまでのライブとは、何か違う点があったのでしょうか。
初めて自分でセットリストを決めたんです。「一般的にセットリストは14、5曲くらいで、アンコールはこれくらいでしょう」っていう呪いをちょっと飛び越えて、自分が少し無理してでも、歌いたい曲を詰め込みました。
あと、ありのままのMACOをちょっとだけ見せられた気がしたんですよね。私、ふざけるのが大好きなんです。それを許容してくれる温かいファンのみんなとスタッフさんがいたから、今までで一番楽しかったのかもしれない。これまでもふざけたことはあったけど、あそこまで自由に3時間もライブをしたのは初めてでした。
ありのままの姿で、ステージに立てたことが楽しさにつながったと。
そうですね。以前はキャラクターを隠そうとしていた時期もあるんです。でも、その鎧を取っ払う時代かなと。私が好きなことをやって楽しい気持ちでいたら、その波長が伝わって、パフォーマンスを観ているみんなも楽しくなるんだって気づいたんです。
それに、予定調和なライブって、おもしろくないじゃないですか。その場で生まれる何かが楽しいし、素敵だし、おもしろい。12月のライブでも、わざと振り付けとは違う動きをして、ダンサーの子を驚かせてみたりしたんですけど、そういうイタズラだって私が楽しいことなので。結果的に、その楽しさが空間で伝わっていくんですよね。やっぱり魂が入っているものは届くんですよ、不思議なことに。

“みっともないね”と思われようと自分のアーティスト性を貫く
4月16日にリリースされた「だから終われない恋」は、どのような作品になっていますか。
事務所に所属していた時代から、ずっと温めていた曲で。実はSNSに、ちょっとだけ載せたこともあるんです。歌詞も2番まででき上がっていたんですけど、今回のリリースのためにアレンジャーを変えて、また一から作り直しました。
1から作り直そうと思ったきっかけが、何かあったんですか。
ミュージシャンの方々のレコーディングに立ち会ったときに、あまりにも演奏が素晴らしくて、「今の歌詞じゃダメだ!」って思ったんです。そこで、いろんなミュージシャンの方と顔を合わせて、生の音を聴いたら、めっちゃいろんなことを思い出しちゃって。インスピレーションが降りてきて、「あんなにも余白があるなら、言葉をもっと詰めたい」って思ったんです。
だけど、もともとあったメロも捨てきれなくて。(アレンジャーの)島田(昌典)さんに相談したところ、「最初のメロも素敵だったけど、ぶち壊していいんじゃない? 今日、ここに来てそう思ったんだから仕方ない。MACOさんの好きなようにしたらいいよ」って言ってくださったので、思いきってアップデートすることにしました。
素晴らしい演奏に引き連れられて、歌詞やメロディが磨き直されたと。
本当にそんな感じですね。いいスタジオって、いろんな方のいい残り香があるというか。個人的には、それが妖精やお化けになっていると思ってるんです。私が好きだったSound City Annexという東京タワーのふもとにあるスタジオも、「お化けが出る」で有名で。トイレとかはすごく怖いんですけど、そこでレコーディングすると一発OKなんじゃないかと思うくらい、いい曲が録れたりするんです。島田さんのスタジオもそんな感じでしたね。

生音の演奏にMACOの歌が映える一曲になりましたよね。
島田さんからも「雨が降った日にひとつの傘で歩くふたりが思い浮かぶ一曲になったから、生音で録ってよかったね」と言われて。私も本当によかったと思ってます。
ほかにも、アレンジャーさんが変わったことによって、原曲から変化したところってありますか。
曲の始まりかな。違うアレンジャーだったときは、前奏があったんです。私は島田さんが作る特徴的な前奏が好きなので期待していたんですけど、「今回はMACOさんの歌始まりで」って言われたのがきっかけで冒頭の“みっともないね”というフレーズが生まれました。「まだ“I love you love you”なんて歌っているなんて、みっともないね」っていう自分に対する皮肉が込められています。だから、その後には“またこんな歌歌って”と続けているんです。
なぜ皮肉を込めようと思ったんですか。
今って平成に流行ったような普遍的な愛や恋が、届きにくくなってきている時代だと私は思っていて。俯瞰して見たときに、相変わらずそういったことを届け続けている自分が、くだらなく思えたんですよね。
第一線で活躍しているアーティスト、たとえば、Official髭男dismの藤原(聡)さんは私と同い年なんですけど、「こんな歌詞書けないよ」って思います。アニメーションを使ったり、顔を隠したりして、歌っている方も増えていますよね。そんな時代の中でも、たとえ“みっともないね またこんな歌歌って”と思われようとも、私は変わらずに今のアーティスト性を貫いていく。結果として、流行りの音楽では埋められない気持ちの穴を埋められる存在に、MACOがなっていけたうれしいですね。
ニューシングル「だから終われない恋」

配信リンク
Written & Composed by MACO
Arranged & Sound Produced by 島田昌典
Drums by 佐野康夫
Electric Bass by 須長和広
Electric & Acoustic Guitar by 佐々木“コジロー”貴之
Piano & Other Instruments by 島田昌典
Recorded & Mixed by 甲斐俊郎 and Chloe(ONEly Inc.)
Recorded at Great Studio
Mixed at Kai Kai Studio
Mastered by Maor Appelbaum at Maor Appelbaum Mastering - California - U.S.A
Label: Project Asteri
MACO 〜CAN’T END THIS LOVE TOUR 2025〜

5月4日(日)東京:大手町三井ホール 開場15:45 開演16:30
5月5日(月・祝)新潟:NIIGATA LOTS 開場16:00 開演16:30
5月25日(日)名古屋:Electric Lady Land 開場16:00 開演16:30
5月31日(土)仙台:誰も知らない劇場 開場16:00 開演16:30
6月7日(土)札幌:PLANT 開場16:00 開演16:30
6月8日(日)函館:CLUB COCOA 開場16:00 開演16:30
6月13日(金)福岡:Gate’s 7 開場18:00 開演18:30
6月15日(日)大阪:GORILLA HALL OSAKA 開場15:30 開演16:00
6月20日(金)広島:広島Yise 開場18:00 開演18:30

MACO
1991年5月10日生まれ、北海道函館市出身のシンガーソングライター。2014年、テイラー・スウィフトの「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない~ We Are Never Ever Getting Back Together」の日本語カバーで注目を集め、第29回日本ゴールドディスク大賞新人部門を受賞。その後、MACOの名は瞬く間に広まり、2015年にリリースされた1stアルバム『FIRST KISS』は、レコチョク総合1位、オリコン最高5位を記録し、SNSでも話題となり、YouTubeでの総再生回数では日本人アーティスト最速で1億回を突破。2018年、デビュー5周年を記念して初のベストアルバム『BEST LOVE MACO』を発表、各ストリーミングチャートで1位を獲得、オリコン週間ランキングでも6位にランクイン。さらに同年、国内に加え、台湾や上海でアジア公演を実施。2019年、アコースティックワンマンツアー『My Acoustic Tour 2019-2020』を開催。全国11都市を巡るツアーは全公演SOLD OUTとなり、彼女の人気を改めて証明した。2020年、AbemaTVのドラマ『僕だけが17歳の世界で』にオリジナル曲「桜の木の下」とレミオロメンのカバー「3月9日」が挿入歌として同時起用される快挙を達成。また、月に一度のライブ配信『Endless Love Tour』を実施し、コロナ禍においてもファンとの強い絆を築いていった。2023年9月、シングル「ラブソング」をリリースしたあと、事務所を退所し、約半年間の休養を経て新たなチャプターに突入。2024年9月、ファンクラブ「MACO fam+」を設立し、独立後初のシングル「MY LIFE, MY LOVE」をリリース。年末には特別な一夜限りのライブ『MY LIFE, MY LOVE LIVE 2024』を開催。そして2025年、全国9都市を巡るヘッドラインツアー『MACO~CAN’T END THIS LOVE TOUR 2025~』を発表し、4月16日には待望のニューシングル「だから終われない恋」をリリースした。情熱的な歌声と繊細な歌詞で多くのファンの心をつかんでいるMACOのこれからの活動にさらなる期待が寄せられる。