欲よりもめんどくさいが勝っちゃう、ニューヨーク嶋佐「いかに40代を楽しめるか」

2025.2.28
ニューヨーク嶋佐

文=浜瀬将樹 撮影=晴知花 編集=梅山織愛


『QuickJapan』では、2025年の一年間、ニューヨークに密着取材を実施。「芸人」としてさまざまな成功のかたちがある今、過去のインタビューで「今後の芸人のためにも、いい芸人像を作っていけたら」と語っていたふたりは、どんな道を歩んでいくのか。取材を通して、ニューヨークと「お笑い芸人としての成功」を考えていく。

密着取材の初回では、それぞれに「ニューヨークの今」についてインタビュー。嶋佐和也は「売れた」という実感は持ちつつ、まだ満足しきってもいないという。今は「いかに40代を楽しめるか」を考えているという嶋佐の理想とは。

バラエティーでの手ごたえはよくわからない

若手のころから、緊張もしないし、プレッシャーを感じることもないので、より、そうなってきているのはありますね。『トークサバイバー!(〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜)』(Netflix)とか『(HITOSHI MATSUMOTO Presents)ドキュメンタル』(プライムビデオ)とか、カロリーが高くて芸人力が試される仕事が決まると気が重くなりますけど、普通に出させてもらっているバラエティーは緊張もなくやっています。

大御所とかタレントさんとやらせてもらうのも楽しいんですけど、知っている人がまわりにいたほうがより楽しいですよね。コロナ前は、上の世代の芸人さん8割、僕らの世代2割だったのが、数年前から僕ら世代が8割いる中に、フジモン(FUJIWARA藤本敏史)さんとかがいる感じで、新しい世代の芸人が出られる番組が増えてきた印象はあります。『ラヴィット!』(TBS)も、僕ら世代の芸人が多く出ているのが画期的じゃないですか。朝の番組で、ニューヨークとそいつどいつのロケが40分流れてますからね。

僕らもそこまでテレビに慣れていない時期だったので、上の人が多かった時代のひな壇はちょっと嫌でした。最近はコロナの影響もあってか、芸人がたくさん出る番組も減っているじゃないですか。それは個人的にはよかったなと思います。たくさんの若手芸人が出ていた『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ)も、コロナ禍で芸人の数が減ったことがあったんですけど、そんな状況でも呼んでくださったんですよ。ひっちゃかめっちゃかな状況じゃないんで、前よりしゃべりやすかったし、すごくありがたかったです。

「手ごたえ」というのが難しいですね〜。バラエティーでの手ごたえってあんまり感じたことないんですよ。『トークサバイバー』とか『ドキュメンタル』とかならわかりやすいですけど、普段のバラエティーってよくわからない。「別に俺らに限らず、現場が盛り上がっていればいいんじゃないの」って思います。個人的に「あそこおもしろかったな」とか「あの流れがよかったな」とか思うこともあるんですけど、余裕でカットされているので、手ごたえもクソもないというか。だからよくわからないですね。

まあ、いろいろしょうがないっすよね〜。本当に「お笑いに興味ない人向けに何かやろう」みたいなことをやらないタイプなんで、こんなもんかって感じはあります。でも、もうちょい単体でMCをさせてほしいかな。特番では経験がありますけど、ゴールデンタイムでがっつりMCをやったことがないんですよ。あと、千鳥さんと、かまいたちさんがMCをやりすぎてるかも。何個か一緒に番組もやっていますよね?

でもそんなもんですからね(笑)。

変わらないネタの作り方

最初は200人くらいから始まって、それが1万人に増えたんで、昔と比べたらありがたいことなんですけど、やっぱりもっとネタを観てほしいです。まだまだ僕らのことを知らない人もいるし、配信チケットもお笑いをある程度知ってる人しか買わないじゃないですか。そこは、難しいところではありますけどね。

常にそういう事象はあるし、感覚も年々変わってはきていますけど、作り方自体は変わってないですかね。

2024年の単独ライブで作ったネタで『ドリーム東西(ネタ合戦2025)』(TBS)でやった「男すぎる」みたいな漫才があるんですけど、年末の大きいイベントでもやったんですよ。そのとき、たまたま出番が近かった囲碁将棋の根建(太一)さんが「お前らまだこんなネタ作ってたの? これで『M-1』いけるよ!」ってすげえ褒めてくれたり、ルミネtheよしもとでやったら、パンクブーブー黒瀬(純)さんが褒めてくれたり、あと、大阪で練マザファッカーさんの漫才をやらせてもらったときは、モンスターエンジン大林(健二)さんが褒めてくださったり……。そういうのはうれしいですけどね。ただ、僕ら的には「自分たちがおもしろいと思うこと」をやってるだけなんで、全部同じくらいです。

ちょいちょい出たいって言ってるんですけど、単純にオファー自体がないっぽいっすね〜。それなのに、モグライダー芝(大輔)さんがいい役で映画に出てたり、見取り図・盛山(晋太郎)さんが反町隆史さんとドラマに出たりするじゃないですか。僕はコントもやってんのに、なんでドラマとか興味なさそうな漫才師ばかりにオファーがあるんでしょうね。

単独ライブを見てくださった大根仁監督が、僕らの番組に出てくれたんですけど、僕の演技はドラマや映画では、ちょっと違うみたいです。前に「もし、『地面師たち』の次回作があったら出させてください」と言ったら、はっきりと「いや、嶋佐くんにオファーをかけることはない」って言われました。なんか違うんでしょうね。

昔は年に2回単独ライブをやったり、隔月で新ネタ2本をおろしたりしていましたけど、ここ数年は単独ライブだけで、年に7本しか作ってないんですよ。でも、そう決めたら、やる気が出るというか。「それくらいはがんばろう」と思うし、1万人以上のお客さんが観に来てくださっているんで、やる意義があるというか。あと、年末年始もネタ番組に呼んでいただくので、そのとき一番新しいネタをやりたい。総合的な面でネタは作っていきたいです。

「めんどくさい」が勝っちゃう

普段あまり話さないので、週1回ラジオでしゃべる機会があるほうがいいタイプのコンビなのかなと思います。『ニューヨークのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送/2016年〜2017年)をやってたときに「ラジオのファンってすごいな」、「ラジオ好きってこんなにいるんだ」って思ったんですよ。聴いてくれている人は僕らのファンというより、ラジオが好きで聴いてくれている人もいると思うので、ラジオファンに対してのアプローチとして、ひとつ取れているのは大きいのかなって思っています。

前はスケジュールがパンパンでしたけど、今はいい具合の量だし……。でも難しいところっすよね。もっと稼ぎたいんですけど、そうするにはでかい仕事をするしかない。だからマックのCMとかありがたかったですけどね。

そうっすね。そこは欲が出ちゃうっていうか。でもめっちゃムズいんだよな〜。芸ごとだけじゃ稼ぎに限界があるのはわかってきちゃったんで、どうしようかなって感じです。

さすがにそれはありますね。これだけいろいろ出させてもらっていますし、劇場や地方でも知ってくださる人も増えていますからね。だから今は「現状に満足はしてるし、別に満足もしてない」って感じです。もうちょいなんかあればいいけど、でも、めちゃくちゃおもろいのに、なかなかテレビに出られない人もいっぱい見てきているから、そういう意味では満足もしてるって感じですかね。

20代、30代以上に「いかに40代を楽しめるか」っていうのはすごく思っているところです。ただ、相方がやけにゴルフに行ったり、車を買ったりしていますけど、僕にはその欲がないんですよ。「めんどくさい」が勝っちゃうんです。

でもそれもないんだよな〜。あ、でもヨーロッパ旅行とか行きたいっすけどね。ここ数年、休みをもらって後輩とアジア旅行に行っているんですけど、それが楽しいので、みんなで行きたいです。

Netflixの映画・ドラマ出演、ゴールデンタイムのMCもそうっすけど……やっぱ海外ロケっすね。

ニューヨーク密着①嶋佐
嶋佐和也(しまさ・かずや)1986年5月14日生まれ、山梨県出身

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浜瀬将樹

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浜瀬将樹

(はませ・まさき)1984年生まれのライター、インタビュアー。お笑い、ドラマ好き。移動中に深夜ラジオ聴くのが癒やし。

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