学生版『AUN』王者・肉友が見た大喜利プレイヤーvs芸人による大喜利対決「理想はお題の横にあってより輝くような回答」

2024.11.9
肉友

文=釣木文恵 撮影=長野竜成 編集=梅山織愛


2024年1月に開催された『AUN Z ~学生コンビ大喜利王決定戦~』で優勝した森もりとカラスみずによるユニットコンビ「肉友」。芸人になる前から「インターネット大喜利」をしていたふたりは、全試合で圧倒的な強さを見せ、初代王者に輝いた。

そんなふたりに10月26日に過去最大規模で行われた第8回『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』の本選を見学してもらい、プレイヤーだからこその目線で大喜利猛者たちの激闘を語ってもらった。

※本選 第8回『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』写真=レポート記事より(撮影=晴知花)

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肉友
左:森もり(現在は「破壊ありがとう」として活動)右:カラスみず(学生芸人として活動)

『学生AUN』優勝ユニット「肉友」の出会い

『AUN Z ~学生コンビ大喜利王決定戦~』で優勝した肉友

改めて、『AUN Z』優勝おめでとうございます。おふたりのユニットの成り立ちから教えてください。出会いは?

お互い芸人になる前からインターネット上の『大喜利プラス』というサイトで大喜利をやっていたんです。

もうないんですけど、お題に対して3分間で一答するというもので。知り合ったのは学生お笑いが先なんですけど。

そう、最初は噂で知って。『大学芸会』という大会のある予選日に「とんでもないヤツが現れた。(会場の)方南会館が壊れるくらいウケたヤツがいる」と。それがカラスみずでした。

MCのママタルトさんがオープニングで「一番美しく太っていた人にベストファット賞としてマックカードをあげます。このカードは倍ダブチも無料になるんですよ」とおっしゃってたんですよ。で、僕がその日50組くらいのトリで出て、唯一太ってた。しかも、偶然倍ダブチのネタをやったんです。ほとんど初舞台なのにめちゃくちゃウケた。

そのあとライブとかで一緒になって、だんだん仲よくなっていって。あるとき、伝書鳩の山田(陸斗)から、「ハンバーグがウマい店がある」と聞いて。でも山田とタイミングが合わず、我慢できなくなっちゃって。じゃあ誰か連れていこうと思ったとき、一番ハンバーグを食べそうな後輩がカラスみずだったんです。

池袋のハンバーグ屋さんでした。

ほどなくして『AUN Z』が告知されて、一緒に肉を食べに行く友達、「肉友」として出ることにしました。

僕ら「デブモーニングビュッフェ」というデブを10人ぐらい集めてみんなでビュッフェに行く、という催しにも参加しているんです。

優勝賞金でも肉を食べに行きました。

肉友

おふたりの大喜利歴は?

僕は2019年ごろからだから5年くらい。高校2年のとき、自分も『IPPONグランプリ』(フジテレビ)みたいなことをしてみたいと思って「大喜利 できる」で検索して(笑)。

僕は2018年ごろ。大学でスポーツやってたんですけど嫌になっちゃって、大喜利を始めたんです。『大喜利プラス』の歴史でいうと、僕が中盤に参加して、カラスみずが終盤にやってきた感じ。

おふたりはご自分の大喜利スタイルをどんな感じだと自己分析していますか?

僕はあんまりひと言で表せないなあ。お題にまっすぐ従うのがあんまり好きじゃなくて。でもお題に従わないと大喜利ではないから、うまくお題を踏み台にして、いかにお題から離れた知らない景色にたどり着けるかを考えてるかもしれないです。「コンビニ」に関するお題が出たら、あるあるを探すんじゃなくて、コンビニからこんなことは考えないだろう、に行こうとするというか。

僕も似てるかもしれない。コンビニだったら、コンビニで変な人が変なことをするところを想像する、みたいな。ちょうどいい「変さ」を探してるかもしれないですね。

ふたりとも共通して、ふざけてるというか。インターネット大喜利ってみんな大喜利をやりつぶしている人たちがやるから、やっぱり普通の回答じゃウケないんですよ。コンビニのお題で「ファミチキが」とか言ってもウケない。

だからワードとしてちょうどいい飛び方を探してるかもしれない。

もちろん、正統派の大喜利はおもしろいんです。ただ僕らが邪道な回答しかできなくて、そっちが好きだというだけで。だから優勝できるなんて思わなかった。『AUN Z』はライブ形式だったからよかったのかもしれない。

そう。“ライブの”大喜利で勝ったという感じはありました。

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ヨネダ2000の心意気、『新呼吸』組の強さ

そんなおふたりがご覧になった第8回『AUN』の分析を伺いたいと思います。Aブロックから順番に行きましょうか。

まずヨネダ2000さんが変なことずっと言ってた。最初からおもしろくて、「君のいない世界なんて◯◯のない△△だ」のお題で……

(声をそろえて)「小さいヨのない」「チョコだ。チコだ」。

(声をそろえて)「小さいヨのない」「チョコだ。チコだ」。

このお題にまず「チョコって言いたい」と思ったと思うんですよ。で、チョコをおもしろく出す方法を考えて、出した。自分の「おもしろい」に対する出し方がまっすぐなんですよね。

「チコだ」の部分、いらないですもんね(笑)。

ヨネダさんは勝ち負けよりもこの場を盛り上げようという気持ちなんだろうなと思いました。僕だったら変に勝ち負けにこだわってカタい回答とか出してしまうかもなーと(笑)。その心意気がカッコよかったです。

イベントを盛り上げたヨネダ2000とYes!アキト&サツマカワRPGの絡み

「150cmくらいのものしりとり」のお題で「日本一の」「のこぎり」も。あれ点数入ってないんですけど、めっちゃおもしろかった。何をもって日本一なのか。デカさなのか。

切れ味かもしれないし。あと、BKBさんのコメントもめっちゃおもしろかったよね。

敗退が決まったエバースさんが「正統派なのに」と言ったら、BKBさんが「正統派がウケへんライブはよくないからね」って(笑)。

大会自体を否定してた(笑)。

十九人さんは本当にすごかったな。

同居しているからこその阿吽感がありました。そこにYes!アキトさん&サツマカワRPGさんの芸人イジり、ヨネダさんの変さ、エバースさんの正統派。四者四様。

バランスがよくて、見応えあるブロックでしたね。

続いて、Bブロックに行きましょう。

全組強い人たちばっかりで、これ誰上がるの?と思いましたね。で、AB通して思ったのは『新呼吸』組の強さ。Aブロックの十九人さん、Bブロックのフランツさん。「地獄を見てきた者たちだ、面構えが違う」という感じ。

フランツさん、登場したときのコスプレも当然、大喜利の答えもどっちもすごかった。

あと、ママタルトさんが言うことは絶対おもしろいからゆっくり聞こう、みたいな安心感ありますよね。「地面師に向いてるヤツ、向いてないヤツ」のお題の答えも、僕『地面師たち』観てないのにめちゃくちゃ笑いましたし。あと、そのお題でひつじねいりさんがマナカナを「まなかな」とひらがなで書いてて。ひらがなの「マナカナ」初めて見た、と思った。

文字の雰囲気も相まって「向いてないヤツ」感が増してたよね。言い方も変でしたし。

「有名人にまつわる陰謀論『◯◯は実は△△』」のお題のフランツさんの答えもすごかったし、それに対してBKBさんの「大喜利やな」というのもよかった。大喜利の大会で「大喜利やな」というツッコミありなんだ!と(笑)。

大喜利だけじゃない芸人の力

では、Cブロックを。

僕らかなり前の席で観てたんですけど、まずオダウエダ植田(紫帆)さんのビジュアルがすごくて。ちょっとドキドキもするし。

でオダウエダさん、一言ひと言がもうおもしろかった。

Aマッソで乳首を隠して登場したオダウエダ植田(左から2番目)

マユリカさんもすごかったね。

関西から来た方もたくさんいるけど、マユリカさんってその中でもいろんな人に迎合して、ちょうどいい大喜利してるなって。

なじんでたよな。「◯◯がやられたようだな」「奴は△△の中でも最弱」のお題でも、いいところを突くのがめちゃくちゃうまいなと思いました。その中で永田敬介さん&鈴木ジェロニモさんの「金たまがぬれたアンパンマン」「一部濡れアンパンマン界隈」の答えがすごかった。

キンタマを一部とする感覚とかも。

たぶんあれ、永田さんが書いたのを見せて、それにジェロニモさんが返したんだと思うんです。その返し方、言葉のセンスやっぱすごいなと思いました。ナイチンゲールダンスさんも「キツネでしたー!」「抽選ボケ」とか、ライブシーン感のある、お笑いファンの心をくすぐるような回答でウケてて。

「前説大喜利」では、永田さんがすごかった。

もうほぼ漫談でしたよね。かっこよかった。

Dブロックはどうでしょう?

煽りVTRから荒れてましたね。すごいイジり合いを。

パンプキンポテトフライさんがケビンスさんに「改造人間とモラハラのコンビ」というエグいディス。でも、谷(拓哉)さんが言うことで嫌な感じじゃなく、お笑いになってたのがすごかったですね。

最後にケビンスさんがアンサーしてたし。

ふた組の芸人力がすごすぎた。あれ見て、ふだん平場で恥ずかしがってる場合じゃないなと思いました。勇気もらったというか、すごかった。もちろん大喜利も。

そうですね、全員おもしろかった。

「アンミカが言ってた気がする言葉と言ってなかった気がする言葉」のお題のパンポテさん!

谷さんの「後攻で」。アンミカさんが一対一で戦ってるのかっていうのと、その場合でもアンミカさんは先攻選ぶだろっていう。

何で戦ってるんだろう、ラップのMCバトルとかなのかな、とか。いろいろ観客に想像させる回答だったよね。この前のお題でもパンポテさんおもしろくて、BKBさんが「なんでおもろいんやろ」と言ってた(笑)。

寺田寛明さん&お抹茶さんの、お抹茶さんの「言ってそう」の段階でおもしろかったのもよかったし。あと、こんにちパンクールの答えがすごくて! 警備員が「ハッピー ラッキー ラブ スマイル ピース ドリーム」に、

ぺるともさんが「タイガー ダイナソー ロブスター ウィンナー コンピューター スポーツ」これすごかった!

このワードすごくないですか。全部なんでもない言葉じゃないですか。

最後「スポーツ」なのもすごい。

こだわり抜かれてるよな。やっぱこの順番も、ワードの温度感も。

ちょうどよかった。食べ物だけにしないのがすごい。

バランスよく最後「コンピューター スポーツ」の並びなのがいいわ。これね、語ったらめっちゃ時間かかります。

めっちゃネットっぽくもあるよね。

たしかにネットっぽい。ふたりとも「ネット大喜利」の猛者なので、そこが出た回答ですね。

先輩vs友達、どっちが勝ってもの決勝

じっくり聞きすぎたので、敗者復活戦と準決勝は飛ばして、決勝に行きましょう。

十九人は事務所(ASH&D)の直属の先輩ですし、ぺるとも&警備員とは仲いいし。アツい戦いでした。

ふた組の仲もいいからね。冒頭で十九人さんがハチカイさんについて触れたのもよかった。

やっぱ「デュッセルドルフあるある」のお題で風向き変わったよな。まずは十九人さんの物語っぽい回答がすごかった。

十九人さんは準決勝も物語を進めていく感じですごかったけど、長文で溜めて溜めてウケるのがすごいですよね。

物語を感じる回答で得点を重ねる十九人

うちの相方の田中(机)が配信で観て、十九人さんのすごさに泣いたらしいです。なのに決勝で松永(勝忢)さんがダジャレに走った(笑)。その流れをぺるともが「王様通るとき、伏し目がち」でぶっ壊した。ぺるともってこれやるんですよ。

別角度ね。

空気がマンネリ化してきたなというとき、別角度のすっごいの出して、完全に自分の空気に持ってく。ぺるともはあらゆる大喜利をやって、いろんな回答方法を知ってるから。みんなが詳しく知らない「デュッセルドルフ」に対して、なんとなく感じている雰囲気をうまく言葉にして定義しちゃうのがすごい。

しかもボケてないんですよ。本当にその世界の中のあるあるを出している。お題が変だから、普通のことを言うだけでおもしろくなるんですよね。

ボケてない普通のことを添えるだけでおもしろくなる。それを短時間で、この角度でいくのがすごい。僕、さっき自分の大喜利の型があまりないと言ったけど、これが僕の理想かもしれないです。お題に答えるんじゃなくて、お題の横にあってより輝くような回答。ぺるともって王道プレイヤーだと思われがちだけど、自己流のおもしろいことをやってるんですよね。

新しいことをずっとやってますね。

で、5時間を締めくくる最後のお題が「世界の真意に気づいたおばさん」。お題見たときに、「こんなのもう、こんにちパンクールのためのお題じゃん」と思いました。ふたりが強そうなお題。

こんにちパンクールさんは全員おばさんお題に強い。でも、大接戦でしたね。

ぺるともも警備員も、おばさんお題の名回答持ってる気がしますね。というか、大喜利うまい人はみんなおばさんがうまいかもしれない。十九人さんのおばさんもよかったし。先輩と友達で、どっちが優勝してもうれしかったから、めちゃくちゃ楽しかったです。

優勝したぺるとも(左)と警備員(右)

というわけで、全部振り返っていただきました。

警備員&ぺるともさんが優勝して、こんにちパンクールメンバーが出てきてちゃんと変な空気になったのもよかったですね。

BKBさんがこんにちパンクールの名前を呼ぶだけの時間があってね(笑)。十九人さんのかっこよさ、パンクールの強さ、そしてBKBさんのコメント力が光る大会でした。BKBさん、「しりとり大喜利」のしりとりルールに厳しいのとかもおもしろかったです。「“ん”で終わるから芸術点高い」とか(笑)。

いつも「BKB」のルールに従う芸をやってるからこそ、ルールに対して厳しいのかもしれない(笑)。

本当に『新呼吸』組の強さが光りましたね。『新呼吸』、僕らも出てみたいです。出られたら盛り上げるよな。

肉の蝶ネクタイとかします!

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本選 第8回『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』開催概要

AUN

■概要:予選から勝ち上がった2組(各予選の優勝者)を含む16組の芸人が、トーナメント方式で「日本イチ大喜利が強いコンビ」の座をかけてコンビ大喜利に挑戦します
■日時:2024年10月26日(土)15:00開演
■会場:一ツ橋ホール(東京都千代田区一ツ橋2-6-2 日本教育会館3階)
■MC:バイク川崎バイク、奥森皐月
■出場者:Yes!アキト&サツマカワRPG、エバース、オダウエダ、警備員&ぺるとも(こんにちパンクール)、ケビンス、十九人、寺田寛明&お抹茶(トンツカタン)、ナイチンゲールダンス、永田敬介&鈴木ジェロニモ、春とヒコーキ、パンプキンポテトフライ、ひつじねいり、フランツ、ママタルト、マユリカ、ヨネダ2000 ※五十音順

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釣木文恵

(つるき・ふみえ)ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。

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