爆笑問題、明石家さんまを迎えて「夢が叶った」。『爆チュー問題』25周年で思うコントの本質とは「漫才よりも素が見える場所」

2024.10.11

文=釣木文恵 撮影=長野竜成 編集=菅原史稀


『爆チュー問題 25チュー年 おめでとう&ありがとうスペシャル』が、2024年10月6日(日)よりFODで配信中。1999年から続く『爆チュー問題』の25周年を記念するこの特別番組には、ナインティナイン、菊池桃子らスペシャルゲストが出演するなか、QJWebはゲストのひとりである明石家さんまとの収録に密着。収録後には爆笑問題にインタビューを行い、ふたりにとっての『爆チュー問題』、そしてコントについて聞いた。

爆笑問題の憧れ、明石家さんまが『爆チュー問題』に登場

(C)TITAN/TOPICS/フジテレビ

ねずみに変身した明石家さんまが現れたとたん、スタジオに弾けるような笑いが起きる。爆チュー問題のぴかりとたなチューはひときわ目を輝かせ、「うわー、ありがとうございます!」とさんまに声をかける。登場から数分も経たないうちに本番が始まった。

最初こそぴかりとたなチューとして「さんまねずみ師匠」を迎えていた爆笑問題。しかしのっけから設定を無視したトークを始めるさんまに、ふたりも素に戻って笑いながらツッコんでいく。

(C)TITAN/TOPICS/フジテレビ

かつて所属事務所を辞め、仕事がない時期にさんまに救われたと語っていた太田光。収録でも話していたが、60歳での引退を宣言していたさんまに「かっこよすぎる。落ちていく姿を見せてほしい」と引き止めたのが太田だったという。そんな太田の「さんまファン」ぶりが表情からも、次々と放り込まれるさんまの最新エピソードからも伝わってくる。

あっという間に収録時間が1時間を超えた。本番前、「どうせ俺とこいつ(太田)は浮かれてまうから」とさんまから進行を依頼された田中裕二が「『でたらめ』さえやってもらえたら大丈夫ですから」と答えていたが、話は縦横無尽に広がり、さんまは変なタイミングで強引に「でたらめ」を発動しようとしたり、田中が仕掛けた「でたらめ」をつぶそうとしたりと、終わりが見えない。

(写真左から)太田光、明石家さんま、ガチャピン、ムック、田中裕二(C)TITAN/TOPICS/フジテレビ

途中から登場したガチャピンとムックにさえ、笑いの指導を入れ始めるさんま。たまりかねた田中が「もういい!」と強引にまとめ、無事収録は幕を閉じた。

設定が崩れていく、あれこそ我々が観てきたコント

さんまとのコント収録後、爆笑問題のふたりに話を聞いた。

25周年おめでとうございます。

ありがとうございます!

ありがとうございます!

記念すべき節目を迎えてのお気持ちを聞かせてください。

まあ、今は毎週レギュラーでやっている番組ではないですからね。年に一回クリスマスライブをやったり、FODの配信で毎年3〜4本やるというのがここ数年は続いていますけど、それでも『ポンキッキーズ』(フジテレビ)の1コーナーから始まって、四半世紀続いたと思うとすごいことですよね。僕らのレギュラー番組としても当然最長ですし。

俺はここ最近ずっと、取材のたびに「自分のやりたいことができてない」と言ってきたんだけど。でもさ、やっぱり『オレたちひょうきん族』(フジテレビ)とかを観て育ってきて、ああやってコントやるっていうのが一番やりたいことだったんだよね。よく考えてみたら『爆チュー問題』がずっとやれているってのは、実は一番やりたいことができてるんじゃないか、と今日思いましたね。

たしかに、スタジオコント番組がどんどん減っているからこそ、『爆チュー問題』は貴重ですよね。そんななかで、今日は太田さんがまさに「観て育ってきた」という明石家さんまさんとの収録でした。見学させてもらいましたが、もう怒涛の1時間で……。

ああなるとは思ってました(笑)。

夢のようでしたよ。本当に俺なんか、『ひょうきん族』のタケちゃんマンで(ビート)たけしさんとさんまさんがコントやってるの観てお笑い目指したんだから。さんまさん自身もああやってコントするのは本当に久しぶりだって言ってたし、夢が叶った感じかな。

今となってはすごい貴重だよね。

さんまさんとの収録は、コントというか……。

もうトークですよ。

そう、トーク。でもね、あれこそが、我々が観てきたコントなんですよ。途中で私生活のこととかいろんなことが入り混じってきて、最初こそ設定があるけどどんどん崩れていって。

たしかに、あの崩れ方こそが。さんまさんはあんなに思うがままに話をされているように見えるのに、最後に一番最初に話していた内容に戻っていったり、うまくまとまったりするのも見事でした。

すごいよね、そこは。全部考えてるんだろうね。

さんまさんは前日に上田晋也(くりぃむしちゅー)さんからガチャピンとムックの情報を仕入れて、今日の共演に臨んだとお話しされていましたね。おふたりはさんまさんを迎えるにあたって準備はしましたか?

僕は普段『ヤンタン(MBSヤングタウン)』聴いてるんで。その内容を思い返して、「これを言ったら絶対乗ってくれるだろう」というのは考えてましたけどね。もう全部乗っかってくれましたね。

田中さんは?

僕は何もないです(笑)。さんまさんと絡むときはいつも、どうなるかまったく想像ができないんですよ。今回だって一応台本はあるし目も通したけど、そのとおりいくわけがないし、実際いかなかったし。プランなんか立てられない。

その場で反応するしかない。

そう。

『爆チュー問題』にあるコントのよさ

おふたりが大事にされているコントのよさはどんなところにありますか?

コントには一応設定とか決まりとかがあるから、それを崩したときのおもしろさがあるよね。ラジオなんかだと、普通に素でしゃべっているけど、もうひとつそこを崩してまた戻るという「行ったり来たり」によっておもしろみがふくらむんじゃないかな。

『爆チュー問題』の中の決まりとして、最低限守ろうとしていることはなんでしょう?

一応、いつもの自分と違うキャラクターでやっているつもりではあるけど。それも途中からどっかいっちゃうんだよね。

ネズミだから猫を怖がるという設定だけど、僕も結局「猫はかわいい」とか言っちゃうから。でもしょうがないんですよ。トシちゃん(田原俊彦)を歌わされたりとかするし、片タマの話題が出たりもするし。僕の本当の素のキャラクターが乗っかるような内容をやっているから、「厳密にはたなチューではないんだけど」なんて言ってられない状況になっちゃいますよね。

そうやってお話を聞いていると、『爆チュー問題』は漫才よりも素が見える場所なのかもしれませんね。

そうだね。俺らの漫才はそういうことは話さないし。

たしかにね。

朝4時の地上波レギュラーという野望

特に最近の若手にとっては、コントは決まった台本に沿って演じていくものという考えが強い気がしますが。

もちろん俺らも、きっちり決めたことをやる舞台でのコントも好きですけどね。こうやってスタジオでどんどん崩していくのは、我々がテレビっ子としてずっと観ていたもので。

コント55号とかドリフ(ザ・ドリフターズ)とかね。まあドリフはきっちりやっていたとあとから知るわけですけど。でも子どもが観て楽しめるようなドタバタ、アドリブにも見えるような。そういうもので育っているから。僕なんかは『(巨泉×前武)ゲバゲバ90分』(日本テレビ)のロケコントも好きだったし、その流れの中で登場した『ひょうきん族』の、バラバラと崩れて別の感じになっていくものも。それがおもしろいという感覚はずっとありますよね。

おふたりはYouTubeチャンネルでも、いわゆるスタジオコントのスタイルで動画をアップしていますよね。タイタンの後輩たちがそこに参加することで、スタジオコントのよさを受け継いでいくことにもなるのではと思いますが。

俺はそこまでは考えてないけどね。

考えてるわけない。

田中は後進の育成にけっこう力を入れてますから。

どこがだよ! 後進の育成どころか、後輩自体に興味がないって言われてるんだから。

まあYouTubeもね、自分たちがやりたいからやってるだけですね。

今後、『爆チュー問題』でやってみたいことを教えてください。

もうちょっと回数を増やしたいよね。ねずみ算式に。

うまくねえよ! たしかにこういう番組がもうないから。特に地上波ではほぼ皆無だから、一周回って新鮮なんじゃないかな、若い人たちも楽しんでくれるんじゃないかなと思うんですよ。だから試しに一度、地上波でレギュラーっぽくやってみたらいいんじゃない?とは思っていますけどね。

朝4時とかね。

朝4時ならできるかもしれないけど!

今の若手はけっこう『爆チュー問題』を観てくれてた世代が多いから。そういう人がゲストで来てくれるとうれしいよね。

そう。週替わりで来てくれたりしたらね。

石破(茂)さんにも来てもらってね。

たしかに魔人ブウのコスプレとかしてたけど! 茂チューとして来てくれるかもね(笑)。

まあ、なんだかんだ言ってスタッフがこの番組を大事にしてくれたからここまでやってこられた。もちろん回数を増やしたい気持ちもあるけど、それよりもとにかく続けていけたらなと思いますね。

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釣木文恵

(つるき・ふみえ)ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。

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