新生GAG結成までの3人の思い「20年福井とやってきた以上、今後もやることは一緒」

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文=釣木文恵 撮影=長野竜成 編集=梅山織愛


6月22日に開催した『GAG CONTE LIVE「ピザカッターでチヂミを3等分」』より、安田ファニーを加えた新たな3人体制での活動を開始したGAG。決断するまで、3人にはそれぞれどんな思いがあったのか。

さらにファニー安田は7月7日(日)より、大宮セブンにも加入することを発表した。初期メンバーでありながら、大宮セブンに新たな風を吹かせるであろうGAGに「大宮」の変化を聞いた。

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SJ(えすじぇい/1983年6月7日生まれ、広島県出身/写真左)、福井俊太郎(ふくい・しゅんたろう/1980年8月18日生まれ、兵庫県出身/写真中央)、安田ファニー(やすだふぁにー/1983年10月25日生まれ、大阪府出身/写真右)によるトリオ。2006年3月結成、2024年3月末にひろゆきが脱退し、6月22日より安田ファニーが加入。「大宮セブン」には結成当初より所属。2017年から4年連続で『キングオブコント』決勝進出

ファニーがおるやないかい

福井俊太郎(以下、福井) ひろゆき(現・ヒロユキMc-II)が抜けて、4月1日からふたりでやることになったその翌日か翌々日に、もうSJさんが「今後トリオになってもいいんじゃない?」と言ってくれたんです。

SJ ふたりになるって聞いたときから、「福井はトリオがいいって言い出すやろうな」というのが僕の中にあったんですよ。約20年前、NSCを卒業して福井から声かけられたときも「トリオやりたい」って誘われて、もうひとりを探しながらふたりでの活動を始めた。思えばそのときとまったく一緒の状況になっていたわけで。

福井 SJさんから言われて「その選択肢もあるんか」と思いました。それで、長い目で見て誰かいたら、と考えてみたんです。僕らの色を知ってて、合わせてくれて、楽しくやれそうな人をイメージしたら、「ファニーがおるやないかい」となって。いくつかの条件を一発でクリアしてくれたのがファニーだったんですね。で、「やるならこの人」と決まっているのに変に空気を読んで遅らせる必要もないんじゃないかと。

SJ ふたりでしばらく活動してからのほうがいいんじゃないかとか、いろいろ相談したし、自分とも向き合いました。結果、20年福井とやってきた以上、今後もやることは一緒やし、僕はどんなかたちでもいい、と一番に思ったんですよ。だったらネタを書いている彼のテンションが上がる状況のほうがいいわけじゃないですか。福井を横で見てて、コンビよりも3人のネタのほうが浮かびやすいし、楽しんで書ける人だとわかったんで、じゃあもう3人になろうと。

福井 で、僕が4月上旬にファニーの家の近くまで行き、慣れない街でランチしたあとに僕のテリトリーであるマクドに連れていって、そこで誘いました。

安田ファニー(以下、ファニー) わざわざうちの近くまで来てくれたんで、これはただごとじゃない、もしかしてGAGを辞めるんかなとも思ってました。でも本当に数%だけ「誘われるのかな」とも思っていて。実際に聞いたときは、なんてことを言ってくれるんだと。18年前に芸人を始めたときから僕はGAGさんを見てきて、ずっとおもしろい人たちで、たくさんのファンの方がいる。そこに誘われるって想像もしてなかったので、うれしさはもちろんありますけど、まさかと……。その時点では福井さんからは「気持ちを伝えに来ただけだから、結論は急がなくていい」と言われたんですけど、おふたりの歩みを止めるわけにはいかない。その2日後にSJさんを交えてもう一度話をすることになっていたので、そこまでに結論を出そうと思いました。……トリオ経験もないし、演技もできないですし、不安だらけでした。でも自分の中でいろんな項目のトーナメントを勝ち抜いたのがやっぱりおふたりが「おもしろい」というところで。おもしろいふたりに必要とされたのなら一緒にやらせてください、という決断になりました。

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今の大宮は「一番のポップ期」

福井 大宮というのは、劇場のことですか? それとも概念的な大宮のことですか?

福井 やっぱり10年も経つとすごく変わるんだなと思います。前支配人までは、大宮がスタートしたころの色が濃く残っていましたけど、今の大宮の劇場は、いい意味でそういう色をなくしていってる。新しい劇場になっていっているなという感覚ですね。

SJ 大宮の歴史の中で、一番のポップ期。ルミネ(theよしもと)や無限大(ヨシモト∞ホール)に近づいていってる感じかな。

福井 コンプライアンスも厳しくなっているなか、大宮セブンメンバーが次々中央(東京)のテレビでお笑いタレントとして活躍しているので、その人たちの経歴に傷がつく可能性を限りなく低くしていってる、ということだと思います。

福井 その「今までの大宮」を感じるようなライブを企画されているのが、現在唯一、大宮初期の方々とつながりのあるT氏という方なんですよね。だからT氏のライブでは、たとえば(タモンズ)安部(浩章)ちゃんと(ジェラードン)のアタック西本氏による泥仕合が残っていたりする。最初から今に至るまで、ウケているわけでもないのに。

ファニー 僕はピンになってからぐっと劇場出番が減ったので、あまり状況を把握しきれていない部分はありますが、やはりT氏のライブでは、何をやっても袖でT氏が見守って、笑ってくれている印象が強いですね。

福井 お客さんがシーンとしているのに、袖からT氏の笑い声だけが聞こえるという異常事態。でも僕らもそれがもう普通になってるんですよね。

SJ ただ、そういうT氏のライブがあるからポップカルチャーが生まれた面もあって。無限大や神保町(よしもと漫才劇場)で人気のある若手の方たちは、本来、大宮なんて出なくてもいいんです。それでも来てくれるのは、T氏のカルチャーを知っているからだと僕は思うんですよ。T氏が受け継いでいるものと、新たなポップなもの、お互いの関係があって今の大宮が成立しているんだなと思いますね。

SJ 今の大宮(という概念)は完全にあそこです。

福井 いわゆる「一座」でやる場所がなくなり、ななまがりなんかは仕事が増えて外で活躍をしていて。その中で一座の核……というと褒めすぎですね、一座のために命を投げ出してもなんでもやりますという鉄砲玉、つまり兵隊が誰なのかが曙橋によってクリアになりました。それが、ファニー、井下大活躍、ますかた一真です。

ファニー 先日も曙橋からの配信ライブがあって、その3人でオープニングをやらせてもらったんです。無料配信だったので、けっこういろんな方が観てくださった結果、チャットが荒れまして。プロデューサーX氏から注意されました。

福井 この3人は劇場に出ていないから、時代の移り変わりに気づいていないんですよね。

ファニー 外に世界があると知らずに育ってますので、いつもの感じでやってしまったらチャット欄に「おもしろくない」としっかり書いていただきまして、反省しました。

SJ びっくりしますよ、時代錯誤のことをやっていて(笑)。

福井 ただ、営業妨害になってしまうかもしれませんけど、囲碁将棋さんももともとはそこの人です。

SJ (大宮セブンは)全員そうでしょ(笑)。

福井 まあ、そういう人が時代に合わせて、そこをうまく隠して外と接していたのに、兵隊だけは隠さずやっちゃうんですよね。僕は、それはよくないけどいいな、という建前と本音がある感じですかね。

インタビュー全文は7月7日(日)に発売される『大宮セブン10周年記念本「埼狂のはじまり」』に掲載。現在、予約受付中。

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釣木文恵

(つるき・ふみえ)ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。

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