松田 凌×植田圭輔「板の上で、身も心も投じる」10年越しのタッグで決めた覚悟【舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯】

2024.6.6

文=髙橋裕美 撮影=須田卓馬 編集=高橋千里


出会いから10年以上、お互いに強いリスペクトを持ちながら俳優キャリアを築いてきた松田 凌と植田圭輔。6月から始まる舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯での共演は、かねてからの願いが叶ったかたちとなった。今回のインタビューでは、ふたりのかけがえのない関係性と、舞台にかける想いを紐解く。

「背負わせていただく」という思いで挑みたい

左から、加州清光役・松田 凌、大和守安定役・植田圭輔

──昨年8月、舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭 -夢語刀宴會-の千穐楽で「心伝」の上演が発表されました。おふたりをはじめ出演キャストがキャラクタービジュアルでサプライズ登場したときの大歓声は凄まじかったですね。

松田 凌(以下:松田) 自分の俳優人生の中……人として生きる中でも、一番大きな歓声を聞いたんじゃないですかね。

植田圭輔(以下:植田) (笑)。同じく!

松田 すごかったですね。「地響き」と表現してもいいくらい。本当に愛されている作品なのだなと、得難い経験をさせていただきました。

植田 僕はみんなが紡いできた舞台『刀剣乱舞』という歴史の中にたどり着いた感謝祭だと思っていました。なので正直、(初出演ということで)「お邪魔します」という心持ちでした。その先はもちろん、「背負わせていただきますので」という思いも持って。こういうかたちで出演を発表させていただくというのは本当にありがたいことなので、噛みしめながらやっておりました。

──「心伝」は原案『刀剣乱舞ONLINE』のイベント「特命調査 慶應甲府」を題材とした作品になるということで、新選組にゆかりのある刀剣男士が活躍する物語となりますね。沖田総司の愛刀といわれる加州清光&大和守安定を、役者として強く信頼し合っている松田 凌さんと植田圭輔さんが演じられるということがとても熱いです。

松田 僕はもう、天伝で出演したときから大和守安定は植ちゃん(植田圭輔)だといいなと思っていました。最初に出会ったときからずっと、僕の中でより強い尊敬がある人、俳優だなと思っていたので。なので僕としては今作、本当に植ちゃんの大和守安定と共演できるのは最もうれしいことでした。

植田 「ご縁があればいいな」と思っていたことが叶ったかたちですね。凌は若いころから、自分が突き詰めていきたい役者像っていうものをかなり明確に持っていて。自分を追い込むストイックさみたいなところもいい意味で変わっていない。素晴らしいことだなと思います。

「芯を持ってやってきた人間同士」の共演

──出会って10年以上、変わらずリスペクトし合えるというのはかけがえのない関係性ですよね。もう少し深くお話を聞きしてよいでしょうか?

植田 はい……長い付き合いですし、恥ずかしいですけど(笑)。出会い方も、俺らは最初オーディションで会ってるしね。

松田 そうだね。でもそこからずっと、植ちゃんのお芝居に対しての情熱とか気概……「俳優としての覚悟」みたいなものってたぶん、ほかと一線を画すくらいの燃え上がりがあるなと感じています。

さっき植ちゃんが言ってくれたような「理想像」みたいなものを体現できる人ってなかなかいなくて。でもそれを体現していくからこそ、僕たちはありがたくもこうやって5年、10年、この先も俳優ができているのかもしれないですけれど。自分が出会ってきた中で、最も強くそれを感じたひとりが植ちゃんだったんですよね。

植田 (照れて)ありがとうございます!

松田 最近共演した作品でも、物語に大きく関わっていく役で、なおかつ自分にとって一番つらい物語を演じていたんですけど。植ちゃんは、すごく戦っていました。

息も絶え絶えななか舞台袖にはけてきて、息を自分で整えて、次がもう涙しちゃうっていうシーンとかでも、誰に迷惑をかけることもなく、もちろん文句を言うこともなく、自分のプロとしての仕事をまっとうしていた。「これこそ植田圭輔だよな」ってより惚れ直しました。

だから今、植ちゃんが話してくれたことを聞いて、お互いにシンパシーを感じていたんだろうなと思って。それがすごくうれしかったです。

植田 凌のすごさはもう、俺が今さら言うことじゃないというか。みんなわかっていることなんですけど……凌は与えられた役割のまっとうの仕方がうまいんですよね。

あとはすごく端的な言葉でいうと、板の上で出す「覇気」。これはもう、本当に持っている人にしか出せないものなんですが、凌は昔からそれを持っている。どれだけ芝居がうまくても、やっぱり覇気がないと目を引かないんですよ。これもたぶん、だいぶ自分を追い込んで体現していることなんだろうなっていうのを、俺も舞台『K』(2014年)のときから思っていました。

──舞台『K』は、舞台『刀剣乱舞』と同じ末満健一さん脚本・演出作品で、第1〜2作の座長を松田さんが務められていましたね。10年の時を経て再び松田さんを座長に、今度は舞台『刀剣乱舞』の座組で今のおふたりのお芝居を見られるのが楽しみです。

植田 お互いの生き方なりに芯を持ってやってきた人間同士、大人になってもう一回会って「さあ、どんなもんじゃい」ってことだと思うんですけど。これってすっごいおもしろいですよね。

でも実は、舞台『K』はもちろん凌が真ん中(主演・座長)をやる作品は何度か出させていただいたことがあるんですけど、意外とあまり絡まない役だったりして。今回、がっつり会話できそうだなっていうのがまず、めちゃめちゃ楽しみです。

松田 植ちゃんの言うとおり、これまで大きく絡めることってずっとなかったんですよね。だから楽しみたいです。もう信頼しちゃってますし(笑)。

もちろん、ちゃんとお客様に観ていただくものにするために汗水流しますし、道としては茨のほうを通っていきたいんですけど。そんななかでも「植ちゃんとだったら」って思います。ほかのキャストもみなさん、茨の道だろうが笑って楽しんでやろうって思える方々なので、自ずと背中を預けられるんじゃないかなって思っています。

血反吐はこうが、身も心も投じることが「一番の近道」

──ではここで少し作品と離れるのですが、舞台『刀剣乱舞』をはじめとするいわゆる「2.5次元舞台」というものの「今」について、おふたりが感じていることをお聞かせいただけますでしょうか。「2.5次元」が演劇界で色物扱いされた時代から、今は新しい演出方法や舞台装置の誕生や、能力値の高い役者を輩出したり、演劇ファンの人口が増えるといった演劇界全体の底上げにつながっていると感じています。おふたりは幅広いかたちの演劇作品に出演され、内側からも外からも見ていくなかで、「2.5次元の現在地」をどう見ていますか?

植田 「舞台に触れる」とか、「足を運んで生の芝居を観に行く」機会が増えたということはあると思いますね。「2.5次元」という言葉が生まれてから、さらにいろいろな作品が舞台化されていって。動いているお金も大きいだろうなと感じています。そうなってだいぶ経ちましたけど、ムーブメントとして、単純に本当にすごいことなんだなと、中にいても感じますね。

松田 メディアのみなさんが俳優や作品を紹介しやすくなったり、応援してくださっている方々が足を運びやすくなったりすることはすごくいいなと思うんですが、僕たち俳優は絶対に、「作品の差別化」をしないほうがいいと思っています。

根本的には、なんの作品でも真っ当にやるしかないと思っていて。お芝居以外、何もできることがないような自分たちだけど、ただ選ばれてやってきた、それだけのものは必ず生み出すっていうことを10年くらいやってきて。それを今作また、舞台『刀剣乱舞』という世界でみなさんに観ていただくだけ。

舞台上とか、お客様に届くものを作るときには、誰よりも真剣に。血反吐はこうが、身も心も投じてやることが、一番のまっすぐな近道だと僕は思っています。業界に対しても、おそらく自分たちの人生に対しても。

──板の上に立つおふたりにとっては、いつどんな作品だろうと変わらず芯を持って、ただ自分のすべきことをまっとうするだけ。

植田 はい!

松田 そんな自分たちの出すお芝居を、楽しんでいただければと思います。

我々なりの「王道」を届けたい

──それでは、そんな熱を持って向き合う今作に向けて、改めて意気込みをお願いいたします。

植田 今回、本当にたくさんの方が待ち望んでいたタイトルだと思っていて。舞台『刀剣乱舞』は上演されるたびに物語のいろんなことがつながっていって……っていうのも楽しみのひとつだと思うのですが、今回の「心伝」が作品全体にまたどう影響をもたらしていけるのかは役者次第、というところもあると思っています。

こんなに素敵な俳優さんや信頼できる仲間がいて、たくさん応援してくださる方がいて。もう本当に、凌が言ってくれたみたいに、ただやるしかないんですよ。当たり前のように、期待を超えていけたらなと思っています。

松田 応援してくださっている皆様にとって、おそらく待望の作品だと思っています。だからこそ、最初に自分たちが答えたような、あれほどの期待と責任を感じることができたのだとも思います。それはすごく大きなものだと思うんですけれど、でも今、植ちゃんが言ってくれたように、我々はもう体現するしかないので。

東京・大阪・福岡、どの公演にもすべてを投じて、ご来場いただいた皆様、観劇いただける皆様に楽しんでいただけるものに必ずしたいと思っています。末満さんもSNSで「王道かつシンプルに立ち戻る」とおっしゃっていましたが、我々なりの「王道」をしっかり皆様にお届けできればと思っております。ぜひ劇場に確かめに来てください。よろしくお願いします。

『クイック・ジャパン』vol.172では、松田 凌と植田圭輔のより深い真意に迫る!

松田 凌と植田圭輔のインタビューは、現在発売中の『クイック・ジャパン』vol.172にも掲載。「2.5次元」という言葉が生まれてから築かれた一時代を、内側から見ていたふたり。“板の上”に立つ俳優として「今、やるべきこと」を熱く語り合う。

【通常版】『クイック・ジャパン』vol.172 【限定表紙版】『クイック・ジャパン』vol.172

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  • 舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯

    東京公演:2024年6月8日(土)~6月30日(日)THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
    大阪公演:2024年7月5日(金)~7月14日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
    福岡公演:2024年7月19日(金)~7月21日(日)キャナルシティ劇場

    <ライブ配信>
    6月9日(日)12:30~[スイッチング映像] …3,800円(税込)
    6月9日(日)18:00~[スイッチング映像] …3,800円(税込)
    7月21日(日)12:30~[スイッチング映像] …3,800円(税込)
    7月21日(日)18:00~[スイッチング映像] …3,800円(税込)
    ※12:30公演と18:00公演のセット販売…5,800円(税込)

    <ライブビューイング情報>
    2024年7月21日(日)18:00~開演
    劇場:全国劇場91館
    料金:3,800円(税込)
    ぴあプレリザーブ(抽選販売)【受付期間】6月13日(木)11:00~6月30日(日)23:59
    一般販売(先着販売)【受付期間】7月6日(土)10:00~7月15日(月・祝)23:59

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髙橋裕美

(たかはし・ゆみ)編集者・ライター。『CD Journal』『spoon.』『FREECELL』などの編集部勤務を経てフリーランスとして独立。2020年より『GIRLS CONTINUE』編集長を務める。梅津瑞樹『残機1』、鈴木拡樹『日々前進』など書籍の編集やライターとして俳優、声優、アーティストの..

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