「自分自身を愛することが大事」新しい学校のリーダーズ・SUZUKAが心がけるコミュニケーションの意識とは

2024.4.19

新しい学校のリーダーズ。「オトナブルー」で社会現象を巻き起こしたセーラー服の4人組は、今まさにブレイクの渦中にいる。地道に根を張り水をやってきた8年間と、外の広い世界へ飛び出した1年間。彼女たちは激動の日々の中で、肉体的にも精神的にも大きな変化を強いられてきた。

本稿では、2024年4月12日(金)発売の『クイック・ジャパン』vol.171に掲載した80ページ以上にわたる新しい学校のリーダーズ総力特集から、SUZUKAのロングインタビューを一部抜粋して公開。

どんな現場でも場を圧倒するエネルギーを発しているSUZUKA。彼女には視えていたのだ。8年間の地道に積み上げてきた過去、それが報われ花開き時代の寵児となった現在、そしてその先の驚くべき未来が。加速度的に変わり続ける状況の中で惑いもがき息苦しさを覚えながらも、彼女は宇宙と接続し、本能に生き、仲間とともに革命的な未来をつかみ取ろうとしている。

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音楽ってなんでこんなに人の心を動かすんやろう?

新しい学校のリーダーズ・SUZUKA(撮影=ヤスダ彩)

──SUZUKAさんは新しい学校のリーダーズ(以下、AG!)を始めるまでは、特にアーティストになりたかったわけじゃなかったそうですね? 

SUZUKA そうなんです。 AG!を始めてから、音楽の真髄に触れて「ヤバイな、宇宙やな」って思うようになって。

──僕、 AG!がMoney Markさん(ミシガン州デトロイト出身のキーボーディスト、音楽プロデューサー。特にBeastie Boysらとの共作で知られる)と一緒に作った「Pineapple Kryptonite」って曲が、個人的に大好きで。あの曲からは、かなり宇宙を感じます。

SUZUKA Markは本当に宇宙レベルで世界と向き合ってて。彼と一緒に楽曲を作ってるときに「私、この世界に生きている中で、まだまだ感じきれてない部分があるな」って思ったんですよ。音楽や命……すべての物事が本質的に宇宙そのもので、目に見えていないものがたくさんある、ってことに気づいて。

──物質的なものを超えた、世界の“全部”を知覚したいという欲動。

SUZUKA 人と人が出会うことの奇跡が続いていくことの不思議──生きていく中で疑問に思うことって、いっぱいあって……。「なんで、 世界ってこんなに美しいんやろう?」って、いつも考えてます。

──音楽は、その問いの答えに近づける手段のひとつなんですかね?

SUZUKA 社会に出ていろんなことを経験すると自分の大切なものがよくわからなくなって、疲れちゃうときってあるじゃないですか? 自分自身のことすら、忘れたくなる。そういうときに助けになるのが、音楽なんですよね。音楽を聴いていると、自分がどんな顔で、どんな体で、どんな名前なのか、っていうことを忘れられる。ただの生き物として、音楽と魂が共鳴するのは、すごく気持ちいいことで。さっきの問いは「音楽って、なんでこんなに人の心を動かすんやろう?」っていう問いと、ほぼ同義なんだと思います。

──アーティストとして、その問いを追い求めたいという想いがある?

SUZUKA The Beatlesとか、音楽でムーブメントを起こしてきた名だたるアーティストのパフォーマンスしている映像を観ると「ああ、そういうことなのか」って妙に納得するんです。演奏している彼らの表情を観ていると、この人たちにはさっきの問いの本質的な答えがわかってるだろうな、って気がしてくる。自分もアーティストとして活動している以上、そういうレベルまでいきたいなって思いますね。

──特に最近のAG!のパフォーマンスを観てると、そういうレベルを見据えてるんだろうなって感じがしますね。即物的な成功というよりも、もっと違う次元で人の心を動かそうとしているというか。

SUZUKA 去年ぐらいから、今までよりも、もっと大勢の人の前でパフォーマンスする機会が増えて。自分の人のエネルギーを感じ取るセンサーが前よりも敏感になって、研ぎ澄まされてきているのを感じるんです。

革命的な“何か”をつかもうとしている

新しい学校のリーダーズ武道館「青春襲来」(撮影=髙木美佑)

──ちょっと話変わっちゃうんですけど、他者と向き合う上でSUZUKAさんが一番大切にしていることってなんですか?

SUZUKA 自分自身を愛することが、まず大事。自分というものがよくわからなくなってるときに、人と向き合うとよくない。まず、自分を好きになるための道筋を作って、段階を踏んでいく。そのプロセスの途中で、今の自分に必要な人や物事には絶対に出会えると思う。大切な出会いっていうのは、吸い寄せられるみたいにピッと起こるべくして起きるものだから。

──その感覚って、いつごろから芽生えたんですか?

SUZUKA 昔からぼんやりと感じてはいたんだけど、ここ2〜3年で、特に意識するようになったかな。海外で活動を始めたっていうのも影響していると思う。自分の力じゃない何かに、焦らされていて、いろんなことをちゃんと理解して動かなきゃいけない、っていう感覚がずっとあって。そのスピードがどんどん1日ごとに加速していくんですよ。毎日、人生を見直している。覚醒し続けながら、革命的な“何か”をつかもうとしている感じです。

──さっきの「人のエネルギーが視える」って話ともつながると思うんですけど、自分が巨大なアンテナになってるみたいな感覚なんですかね? その物事と精神のスピードに追いつくのって大変ですよね。覚醒し続けてるのも楽じゃない。 

SUZUKA そうそう。だからこそ、オン・オフをきちんと切り替えられるようにしないと、現実に戻ってこられなくなっちゃうんですよね。じんましんが出ちゃう(笑)。

新しい学校のリーダーズ武道館「青春襲来」(撮影=髙木美佑)

まだ道半ばの“使命”を果たすために

──今、SUZUKAさんが一番フラストレーションを抱えてることってなんですか?

SUZUKA やっぱり自分の感情をコントロールできないことかなあ。「ああ、またできひんかった……!」みたいなことがよくある。やけど、この1週間くらいで急激にうまくなったんですよ。

──え、この1週間でですか? なんでまた急に?

SUZUKA GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーさんが監督と脚本と音楽をやった『iai(アイアイ)』って映画を観たんですけど……完全に喰らっちゃって。あとは、Jeff Millsを最近よく聴いてて、頭の中でずっとピコピコ鳴ってます(笑)。そういうふうに最近、いい意味で自分自身を忘れられる時間が増えたから落ち着いたのかも。 

──インタビューの冒頭で「自分を忘れたい」ってお話をされてましたけど、SUZUKAさんは「自我なんかなくなってしまえばいい」みたいな欲望を根源的に抱いているような感じがするんですけど。

SUZUKA あ、そうです。本当はもっと本能で生きたい。自我は、やっぱりジャマしてくるから。

──人間としての本質的な部分を今は大事にしたいんですか?

SUZUKA 自分が何者であるのかっていうことを自分で理解することは大事なことだと思うけれど、究極のところ、ゲームをプレイしているみたいな感覚で、この自分というキャラクターで今生きているという事実を自由自在に楽しめればそれでいい。最終的には、それすら捨て去ってしまったっていいし。“私”というどこから来たのかわからない魂のエネルギーに触れてほしいし、私もほかの人の魂に触れたいんです。 

──スピリチュアルな次元で、人に向き合いたいんですね。

SUZUKA この間、Chemical Brothersのライブを観に行ったんですよ。その時に自分のうしろに立っていた人から、すごいエナジーが出てて。それがあまりにも強烈すぎるから、たまらなくなっちゃって近くにあった赤い壁をずっとパンチしてたんです(笑)。そしたら、声かけてきて。ハッと振り返ったら、その人、石野卓球さんやったんです(笑)。

──なんですかその話、最高ですね(笑)!

SUZUKA メキシコでもChemicalのライブを観たんですけど、そのときも本当に素晴らしかったんですよ。ハグしながら観てるカップルとか、半裸で幸せそうに我を忘れて踊り狂ってる人とか、歌詞を噛みしめるように歌いながらボロボロ泣いてる人とか、Chemicalが操縦する音楽のジェットコースターに乗りに来た人たちがたくさんいて、「ああ、この人は解放されてるんだなあ」って、感動しちゃって。そのときと、まったく同じエネルギーを日本でのライブでも感じられたんですよね。人種も国民性も違うのに、みんな泣いてるし、踊ってるし、メキシコのときと同じ景色が広がっていて。「なんて美しいんやろ」って思って。 

──音楽の醍醐味って、まさにそういうエネルギーを感じられるところにありますよね。 

SUZUKA そうなんですよ。だから、そんな体験をしてめちゃくちゃ感動した自分としては、今度はやる側として同じことがしたいなって思うんです。その気持ちを忘れないために日々、思い返したり、想像してます。きっと、自分もその地点まで行けると思うから、みんなには私たちを日々見ていてほしい。

 ──それはもうアーティストとして、そして、人間としてのSUZUKAさんの“使命”と呼んでもいいものかもしれないですね。

SUZUKA そう、本当に“使命”なんですよね。これからまだまだやっていかなきゃいけない。背負い込みすぎずに、自由に楽しくデタラメにやっていこうと思ってます!

新しい学校のリーダーズに100日間密着!

『クイック・ジャパン』vol.171

2024年4月12日(金)より発売中の『クイック・ジャパン』vol.171は、新しい学校のリーダーズを80ページのボリュームで徹底特集。

特集テーマは「境界を越えるとき」

2023年の大ブレイクを経て大きな変化の渦中にあり、今まさに時代を変えようとしている4人が「人生の次の一歩」を踏み出す姿を記録した。そのために、『Clockenflap』(香港)、『COUNTDOWN JAPAN』、日本武道館公演『青春襲来』、新曲のMV撮影やレコーディングなど、100日間に及ぶ密着取材を敢行。およそ3000枚に及ぶ写真の中から厳選して掲載し、現場での様子を克明にレポートしている。

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小田部仁

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小田部 仁

(おたべ・じん)1989年11月20日生まれ。東京都豊島区出身。上智大学文学部英文学科卒。2013年、太田出版に入社。ユースカルチャー誌『クイック・ジャパン』編集部に配属。2015年、退社。現在はフリーランスで文筆・編集業に携わる。

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