CUBERS綾介が語る「アイドル」としてターニングポイントになった出会い

2024.2.28
CUBERS綾介が語る「アイドル」としてターニングポイントになった出会い

文=坂井彩花 撮影=山口こすも 編集=森田真規高橋千里


2024年3月31日をもって解散することを発表しているCUBERSの“これまで”と“これから”が詰まった書籍『CUBERSメモリアルブック ~ポップデジタルタトゥー~』が3月15日に発売される。

メンバー5名のソロとグループで合計5万字以上のインタビューが収録されている『ポップデジタルタトゥー』から、ここでは綾介のソロインタビューからごく一部を抜粋してお届けする。

※本稿で掲載したインタビューや写真は制作中のものとなり、『CUBERSメモリアルブック ~ポップデジタルタトゥー~』の内容とは一部異なる可能性がございます。あらかじめご了承ください

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果てしなかったインディーズ時代

CUBERS綾介

綾介 やっぱりメジャーデビューが決まった瞬間ですかね。メジャーに行くっていうのは、個人的な目標のひとつでもあったので。決まったときは大歓喜でした。2015年から活動してきて、サプライズ発表されたのが2018年のクリスマスライブ(『CUBERS Xmas Special Live Show ~今君に降り積もれWhite Snow~』)だったかな。

綾介 少なくとも僕は「今の感じならメジャーデビューできる」みたいな感覚はなかったです。ありがたいことなんですけど、毎日が本当に忙しくて。地道にリリースイベントを回ったり、リハーサルやレッスンをしたりするなかで、毎日が忙しなく過ぎていたので、客観的に自分たちのことを見られていなかったんですよね。それにレコード会社さんから声がかかるかどうかって、運やタイミングもあるじゃないですか。「いずれはできるかな」って半信半疑みたいな気持ちでしたね。

綾介 びっくりです! こっちからは、なかなか言えないじゃないですか。「メジャーデビューしたいんですけど……」みたいな(笑)。でも、個人的には「メジャーアーティストってかっこいいな」と思っていたので、クリスマスライブでのサプライズ発表はすごく印象的というか、夢がひとつ叶ったなって感じでしたね。だから、メジャーデビュー決定がCUBERSで活動してきた中で一番うれしかった出来事かも。

綾介 そうですね。この9年間で一番テンションが上がった瞬間も、メジャーデビューが決まったときでした。「メジャーデビューってなんなんだろう」と漠然とはしていたんですけど、露出が増えて今までにない仕事ができるようになって、わかりやすく活動がステップアップしたので燃え上がりました。憧れの肩書をやっとつかめたなって。

CUBERS綾介

綾介 終わってみたらあっという間でしたけど、当時は「果てしないな……」と思っていました。楽しくはやれていたものの、やっぱりキツかった思い出のほうが多いですね。ホテルの宿泊代が出ないのでスーパー銭湯にメンバーもスタッフさんも泊まったり、大阪や名古屋へ行くのに夜通し車で移動したり。体力的にキツすぎると、精神的にも疲れてきちゃうじゃないですか。当時は若くて体力もあったから、なんとかなっていた気がしますね。

綾介 インディーズ時代は、そういう思い出がたくさんありますよ。「電車で2時間かけて、ここに行ったな」とか。スタッフさんはひとりかふたりしかいないし、もちろんケータリングもなし。最初のころはステージドリンクも自分で用意していましたもん。専属の演出家さんや振付師さんもいなかったから、自分たちで曲間とか尺をどうするか考えて、立ち位置の目印になるバミリもして。僕がバミリ担当だったので、リハーサル前になると普通にお客さんの前に出て、テープを貼っていたんですよ。本当に何から何まで、自分たちでやらざるを得なかったんです。

綾介 まだまだありますよ(笑)。当時の僕らはJOL原宿で毎週ライブをやっていたんです。そのあとは決まって渋谷の事務所で打ち合わせがあったんですけど、原宿から渋谷なんてどうせひと駅だしって、みんなでJOL原宿から渋谷の事務所まで歩いた日とかもありました。それくらい麻痺してたんですよね。路上ライブやチラシ配りをするために、コンビニとかファーストフード店のトイレで衣装に着替えたこともあったな……。事務所集合なら、みんなで一緒に着替えてから行動できるので恥ずかしくないんですけど、池袋とか集合だとそうもいかなくて(笑)。大きいスピーカーで「SHY」を流しながら、5人でぞろぞろ歩いてビラを配るみたいなことをやっていました。人が多いからスピーカーを蹴られることもあって、「わ、蹴られた!」なんて言いながら。今じゃ考えられないですね。でも、そんな日々が当たり前だったので、苦労って感じは全然ないです。思い返せばあっという間だし、楽しかったな。

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「アイドル」であることの意味

綾介 考え方は、大きく変わりましたかね。なんだろうな……。精神的に未熟だったところを、この9年間でいろいろ考え直させられたというか。ずっと要領よくやってきたタイプだったんですよ、小学校でも中学校でも高校でも。なんとなく生活していても、なんとなくまわりに助けてもらえる。先輩にもかわいがってもらえていましたし、「綾介だから」って許してもらえてきたんです。部活とか本気になったことにはまっすぐなんですけど、それ以外は本当にのらりくらりやってきました。でも、仕事となると……ダンスでお金をもらうのとも、また感覚が違ったんですよね。言い方は悪いんですけど、ダンサーってチヤホヤされて当たり前なんです。一方でアイドルは、普通にマネージャーさんに怒られるし、ファンの方に対しては丁寧に接しないといけない。そういう経験を通して、改めて「自分って雑だったんだな」って感じました。マインドだったり、物事に対する熱量だったりが。

綾介 いやいや、雑でしたよ(笑)。今では考えられないですけど、一番遅刻魔でしたし。朝も起きられなくて、マネージャーさんの電話で起きることもめっちゃありました。インディーズ時代は、だらしなかったですね。自分に甘すぎました。「私生活は別にいいだろう」みたいな感じで、ちょっとトガっていたのかもしれないです。「俺は俺だ」とか「こっちはこっちで楽しんでいるんだから」とか思っていた気がする。

CUBERS綾介

綾介 メジャーデビューして、夏まゆみ先生に出会えたことが、精神的な面でのターニングポイントになった気がします。自分の表現の仕方が、すごく変わりましたね。夏先生に出会ったころって、これから自分の魅せ方をどうしていけばいいのか、ちょっと行き詰まっていた時期なんですよ。ダンスは人よりキレを出してかっこよく踊るように意識して、歌うときは笑顔を中心にして……といった感じに、なんとなくパフォーマンスでのルーティンができ上がっていたんですけど、そこから先にはなかなか行けなかった。そんなとき、夏先生と出会って熱量やオーラの出し方を教えていただいたんです。

綾介 夏先生と出会うまでの僕は、技術を高めないとって常に思っていたんですよね。簡単にいうと、「スキルを見せつけてやろう」ってタイプだった。ダンスにしても「俺、カッコイイだろう?」みたいな感じだったんです。でも、単純にうまい人を見たいなら、プロのダンサーやプロの歌手を見ればいいじゃんって話になっちゃうんですよね。夏先生と出会ったことで、内側から出てくるものを解放したときに、お客さんは感動するんだと学びました。歌うときには自分の気持ちをちゃんと歌詞に乗せて、ダンスにしても小手先の技術でうまくやろうとするのではなく、一つひとつの動きに気持ちを乗せていく。それに、しゃべり方とかお辞儀の仕方とか、人に届けるものは歌とダンスだけじゃないんだなって。もし歌やダンスが下手だったとしても、人に伝わるものがある。改めて「なんでCUBERSの綾介は、歌とダンスをやりながら、5人組のアイドルとして活動しているんだろう」と考えたとき、熱量の届け方や伝え方が大切なんだなとすごく感じたんです。それにより、パフォーマンスにおける自分の考え方にも、またひとつポンッと伸びしろができて。「まだ成長できるじゃん」って思ったのを強く覚えています。

綾介 そうですね。「まだ成長できるんだ、自分!」ってワクワクしました。今となって思うのは、自己満でライブをしていた時期もあったかもしれないなということ。当時は当時で一生懸命だったんですけど、やっぱり緩慢な気持ちになっていたというか。夏先生の指導を受けたあとは、「ライブってこんなに疲れるものなんだ」って改めて思いました。インディーズのころって、今と比にならないくらい毎日いろんなイベントに出たり、リリースイベントをめっちゃ回っていたりしたのもあって、やっぱり“こなしていた”部分があったんですよ。ライブの数も多すぎるし、毎日がハードすぎるから、なんとなく「これくらいの熱量でいいや」みたいな感じになって、80%くらいの力でライブに臨んでいたような気がします。気づかないうちにこなすようになってしまうのは、人間の性だとは思うんですけどね。夏先生から「一個一個のライブで、120%、200%を出さなきゃいけない。そうじゃないと伝わらない」と教わって、「ライブってこんなにハードなんだ」って感じました。あの言葉は、いまだに何度も思い出しますね。CUBERSで活動したからこそ、人間として成長できたかな。普通に大学を卒業して就職していたら、たぶん今の感じの自分にはなっていなかったですね。

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『CUBERSメモリアルブック ~ポップデジタルタトゥー~』表紙・裏表紙

タイトル:『CUBERSメモリアルブック ~ポップデジタルタトゥー~』
発売日:2024年3月15日(金)
定価:4,400円(本体4,000円+税)※送料別
仕様:B5判/80ページ
販売:QJストアAmazon(特典なし)
予約ページ:https://qjweb.myshopify.com/products/cubers
発行:太田出版

※発売日や仕様などは変更の可能性があります
※発売日が商品の到着日ではありませんのでご了承ください
※現在、一般書店での販売は予定しておりません
※第三者への転売、オークションでの転売等は禁止致します、ご了承ください

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坂井彩花

(さかい・あやか)1991年、群馬県生まれ。ライター、キュレーター。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。『Rolling Stone Japan Web』『Billboard JAPAN』『Real Sound』などで記事を執筆。エンタテインメントとカルチャーが..

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