『トークサバイバー!』シーズン2の進化と、特に注目したい3人
Netflix『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』(以下、『トークサバイバー!』)シーズン2は、もうご覧になっただろうか。まだ観ていないのであれば、今すぐ観ていただきたい。シーズン1のスケールを凌駕するスペクタクル超大作が誕生した。
『トークサバイバー!』は、テレビプロデューサーの佐久間宣行が手がけるNetflixオリジナルのバラエティ作品。ドラマパートの合間に突如トークパートが差し込まれ、演者たちがお題に沿ったトークを即興で展開し、おもしろくないと判断された人はその場で強制退場。ドラマから降板させられていき、最終的に優勝者を決める。シーズン1から2となり番組はどう進化したのか。その魅力を少しでも紐解きたい。
『トークサバイバー!』はシーズン2でどう進化したのか
シーズン1配信の際と大きく異なる点といえば、観る人の多くがすでに『トークサバイバー!』を「知っている」ということだろう。どんな番組になるのかまったくわからない状態だったシーズン1は、目隠しをされて知らない場所へ連れて行かれるような期待と恐怖があり、まさに未知の体験だった。しかし、シーズン2ではすでに『トークサバイバー!』がどんなものなのか、観る人がある程度理解しているからこそ、そのハードルは上がっていた。
個人的な感想になるが、シーズン2の序盤は、シーズン1ほどストーリーに入り込むことができなかった。シーズン1は、高校生、刑事など、ある程度「話すべき流れ」でトークを展開しておりシームレスに『トークサバイバー!』の世界に入り込めたのだが、シーズン2はドラマに無理やりトークをつないだような違和感があり、トークパートが終わるころには「どういう話だったっけ?」と流れが止まっているような印象を受けた。
しかし、その違和感は後半に訪れる「ある展開」によって覆された。「なぜ非常事態にトークなどしているのか」「なぜ芸人でもない医者がこんなにもおもしろいのか」といった疑問や矛盾を逆手に取ったストーリーに一気に引き込まれた。
そして、城田優、大友花恋、近藤芳正、朝比奈彩、中山エミリ、高橋由美子、本郷奏多、高嶋政宏、岡部たかしなど実力のある俳優陣たちによって『トークサバイバー!』はバラエティの域を超えた素晴らしい作品へ昇華されている。彼らがけっして「役を降りない」からこそ、ドラマパートとトークパートのギャップによって爆笑が生まれていく。最終話でひと筋の涙を流した大友花恋の役者魂には、思わず拍手をしてしまうほど感動した。
だが、いくら脚本や演技が素晴らしかったとしても、『トークサバイバー!』の本質は「トーク」。演者たちのトークの力がなければ、その展開まで視聴者を引っ張ることはできないだろう。その重責は想像に難くない。
千鳥のふたり以外のほとんどが初出演の面々で、極限の緊張感から繰り出されるトークは画面が揺れるほどの爆笑をかっさらうものもあれば、事故のような悲惨なスベり方をするようなものもあった。しかし、だからこそトークのサバイバル。命をかけて戦っている人たちのトークは、ほかのバラエティではけっして観ることができない覇気をまとっていた。
#5「転落と飛躍」で大悟が脱落者たちにかけた言葉がある。「ひとつだけ言っといてやる。この人おもしろいなぁと、この人の話もっと聞きたいなぁとでは芸人として大きな差がある」。このひと言だけで、この番組の本気度が伝わるだろう。そんな出演者たちの中でも、一騎当千の如き活躍を見せた3人を紹介したい。
特に注目したい3人の芸人
1人目は、笑い飯・西田幸治だ。嘘かと思うほどの演技力の低さで終始異質な空気感を漂わせていた髭面の医者。大友花恋に「『トークサバイバー!』に出られるのすっごくうれしくて、芸人さんのトーク聞くのをすっごく楽しみに期待して来たら、下ネタばっかりで気まずい! お父さんとお母さんに出るって言った! 違う話題が欲しい!」と言わせた原因の半分は西田だろう。常人の何歩も先を行く性癖の暴露で他を圧倒した。これが文字どおり「全世界」に配信されるというのだから、本当に恐ろしい。一体どんな翻訳でギャル神輿の話が発信されてしまったのか。
2人目は、ランジャタイ国崎和也だ。地下格闘技場にいた闘技者のひとり。落語家を思わせる情感たっぷりの語り口と、起承転結が美しいトーク内容は、漫才中の暴れ馬のような国崎和也しか知らない人間にとっては大きな衝撃だったはず。前述した大悟の「この人の話もっと聞きたいなぁ」と最も思わせられた男だった。特に、あぁ〜しらきに関するトークはもはや古典のよう。耳だけで聴けるように音源化したいとすら思った。
そして、3人目。『トークサバイバー!』シーズン2を語る上で絶対に外せないのが、アンジャッシュ渡部建だ。国崎と同じく地下格闘技場にいた闘技者のひとりなのだが、スポーツ選手でいうところの「ゾーン」に入っているかのような活躍だった。若手の中に混ざり、場の空気を一気に掌握する卓越した話術と、観る人の感情を揺さぶる負け顔で、誰もが求める「現在の渡部建」を全力で表現する。その姿は、まさに鬼神。おそらく渡部建にはほかの芸人のトークが止まって見えていたことだろう。この渡部建を見るためだけにNetflixに加入しても損はない。
ラストでは続きを匂わせる描写もあり、次回作の期待も高まり続ける『トークサバイバー!』。いったい次はどんな出演者がどんなトークを見せてくれるのか、楽しみで仕方がない。できれば『男はつらいよ』(全48作品)くらい長く続いてほしい。
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