Twitterと二人三脚で生きてきた。“電脳怪物”の僕にとってのTwitterという居場所<吉野おいなり君の妄想日記#3>

吉野おいなり君

神保町よしもと漫才劇場を中心に活動している吉本興業所属のお笑いコンビ・めぞんの吉野おいなり君による連載「吉野おいなり君の妄想日記」

これまでの連載では「架空の妹」について綴ってきたが、今回のテーマはおいなり君のもうひとつのアイデンティティである「Twitter」。一日17時間滞在しているくらい、なくてはならない“居場所”となったTwitterへの思いを語る。

もし今の生活からTwitterがなくなったら

おはようございます。インターネット弁慶、吉野おいなり君です。

ネット上に自由に自分の思ったことを書いていい4000文字フィールドを用意してもらったおかげで、第1回、第2回と自身の欲求を満たすためだけのチラ裏コラムを執筆させていただきました。

気がつけば、7000文字ほどの妹のことを書いていました。

そして連載も3回目になり、編集さんから「そろそろ……妹以外のことも、書いてみましょうか?」と言われ、自分が「月間・妹コラム」を書いているわけではないことを思い出しました。

「い、いもうともすごくいいんですけど、ね?」といった気遣いが見えるような気がして、僕は連載をさせてもらっている元請け会社に“空想の妹の話をさせてもらえないと癇癪を起こすイマジナリーシスコンモンスター”として割れ物人間ボックスに入れられ、音を立てないように運ばせてしまっていたことに恐縮至極に存じる状況となっています。

そして、妹の代替案として提示していただいたタイトルが「もしTwitterがなくなったら」でした。

僕のことをよくわかってくれている。

妹の話かTwitterの話か。

そう、僕のアイデンティティはこのふたつしかないのです。

妹がものすごく欲しくて、Twitterに一日17時間滞在している。

これが僕。

正真正銘・ネットモンスター。本来人前に立っていいわけない。

怪物。電脳怪物なのです。申し訳ございません。恐縮至極2存じ目でございます。

ただ、妹の代わりに素晴らしい餌をぶら下げてもらえたので、とりあえずこれで4000文字マイル走らせていただきます。

ネットは腰をかけて休める場所

「Twitterがもしなくなったら」

これはかなりタイムリーかつ僕自身に一番関わりのある質問かもしれません。

「現に名前がXに代わってるんだから、Twitterはもうないよね笑笑」

話の本質を捉えずに、表層的な部分をすくった揚げ足取りはやめてください。

そういう話をしているのではありません。

あなたは揚げ足を取れていません。

あなたが持ち上げたその足は水面に映った私の幻影に過ぎない。

──いつからそれが私の足だと錯覚していた──

自分の中に存在するクソリプを明鏡止水で“尸魂界(そうるそさえてい)”に閉じ込めてやりました。

ここまででわかるとおり、僕はインターネットが大好きです。

幼いころから、2ちゃんねる、VIP速報、モバゲーのサークル、ニコ生(軽度)、そしてTwitterと渡り歩いてきました。

そして最終到達地点のTwitterで僕は長いこと腰を据えて、根を張り、骨を埋める覚悟で羽を伸ばしてきました。

芸人になる前はただただTwitterでおもしろいことをツイートしようとする。名もなきTwitterにいるアイツでした。

デカいソファーを朝から晩まで大量に運ぶ仕事をしていたのですが、仕事場に行くまで、休み時間、帰りの道で常に“おもしろいツイート”のことを考えていました。

デカいソファーを運んではTwitterを開き、Twitterを開いて回復した体でデカいソファーを運んでいました。

当時の僕からしたら、“ネット=腰をかけて休める場所で、ソファー=運ぶもの”でした。

たぶん、承認欲求が強かった僕は、匿名掲示板よりも、少し自分の輪郭を現したTwitterのほうが体になじんだんだと思います。

Twitterという居場所

芸人になってもそれは変わりませんでした。

ネット上だけでただ拡散される状態よりも、舞台などを観てもらった人にTwitterをフォローしてもらえるぶん、芸人のほうがTwitterのアカウントを伸ばしやすいのではないか?と真剣に考えていました。

僕はあり得ないことに“Twitterのフォロワーを増やすために舞台に出ている時期”があったかもしれません。

Twitterでネタツイートをしながら、お笑い芸人としてTwitterの告知もしていけば一石二鳥だと。

だからよくほかの芸人さんや関係者の方に「吉野はTwitterもがんばっていて偉いなあ」などと言われることがあるのですが、まったくの解釈違い。

僕はTwitterのために芸人をがんばっている節もあります。

まわりの芸人さんたちが、がんばってTwitterをしているなか、僕は普通に好きでTwitterをしているのでかなりアドバンテージなんじゃないのかな、と何年かして気がつきました。

人とまっすぐ会話するのがもともと得意じゃなかった内弁慶の身としては、一方的に思っていることを発射できるツールはありがたくて仕方ないのです。

承認欲求や聞いてほしいという気持ちはあるので、昔、メールしかなかった学生時代に普段はそんなに明るくないけど、メールだけイキイキしてて顔文字とか使ってくる奴。アイツの強化系です、僕は。

その上で今、それが存分に発揮できるのがTwitterなのです。

だからTwitterがなくなったらけっこう詰みます。

かなりキツイです。

ですが、最初にも言ったように2ちゃんねるや、さまざまなインターネットの媒体を渡り歩いてきたので、新しいTwitterみたいなものができればかろうじてそこで呼吸をしていけるとは思います。

だからXに名前が変わっただけなら、正直まったくダメージはないです。

プライドや誇りがあるわけではなく、ただ単に居住地なだけなので。

ただ、変化による不安は抱えています。

それぐらい僕にとってTwitterは大きな存在になってしまっているのかもしれません。

付き合いが一番長いので。

僕にとってTwitterとは、すべてを預けるほどの味方ではないけれど、いてもらわないと困るし、利用をされてもいいから、こちらも利用したい。何かあれば助けに向かう。

“ベジータにとっての悟空”

“オビトにとってのマダラ”

“ヒソカにとってのイルミ”

“黒神めだかにとっての球磨川禊”

僕にとってのTwitterはそれぐらいの関係かもしれません。

もしかしたら逆だったかもしれねえ。

Twitterと僕はここまで二人三脚で窮地を脱してきました。

だから、俺もインターネットでがんばるから、お前もがんばれよと。

名前がXに変わったぐらいで、勝手にくたばんなよと。そう思うわけです。

でも逆にないほうが芸人としていいのかなと思うときもあって。

僕はTwitterのアカウントを10個持っていて、本アカウントと別で「おしのよしなりくん」(@oshiyoshi22)というサブアカウントを作ってしまっていて。

そこで本アカウントでは書かないような、何気ない自分に起きたことを書いたり、本アカウントでも、これは拡散されそうだなというおもしろ出来事をツイートしたりするので、エピソードトークとかで特に言うことないなと思ってしまいます。

全部Twitterに書いたしなと。

最悪。

舞台に立つ人間としてやはり心構えや覚悟が死んでいる。

あくまでネットファースト。

なので、ないほうがもっとメモとかしてエピソードトークにしたり、ライブで話せることとかあるのかなと思ったりなど。

僕の小さなさえずりを

あと、まったく関係ないけど、僕は“バズ”って言葉があんまり好きじゃないです。別に嫌いでもないけど。

僕がTwitterでリツイート数を目標にしてただひた向きにやっていた時代にはなかった言葉なので、勝手に俺の青春の作業にあとから名前をつけるなよと、デカいソファーを運びながら頭をひねっていたころの俺の目標に、あのころの自分に勝手にタイトルをつけられてしまったようで許せないです。

ビッグソファー思考とかでBISSとかにしてほしい。BISSるとか。

まあ、芸人になってから、ここまで約7年間、Twitterを使わなかったことはないし、Twitterが必要なかったことはなくて。

しかも今は板橋ハウスのおかげで、Twitterを見てくれる人が増えてすごく楽しいんです。Twitterをやるのが。

本当に芸人をやってよかったなって思うことはたくさんあるのですが、そのうちのデカいひとつに、Twitterがより楽しくなったことがあるなと思います。

さらにTwitterをめりめりやっていたおかげで、4000文字のデカいTwitterみたいな場所もこうやって用意してもらえて、今が僕の電脳人生で一番楽しい瞬間かもしれません。

本当にありがとう。本当にありがとう。

おめでとう

おめでとう

おめでとう

おめでとう

おめでとう

もしかしたらこういう場所をもっとたくさん用意してもらって、僕の電脳世界での発信をさまざまなところで受信してもらえるようになれば、現実世界であまりしゃべれない僕の小さな声も電脳拡張機で拾ってもらえるようになれば、僕自身がひとつのTwitterのようになれて、小さいSNSとしてインターネット上に存在しつづけられるかもしれない。

Twitterという概念になれるかもしれない。

そうすればXに変わっても、Xがもしなくなっても、僕は生きていられるのかもしれないです。

吉野おいなり君インターネット補完計画。

そのために僕はまた、大好きなTwitterから、ほかのSNSから、それを橋渡しにいただいたこのような仕事から、皆さんに発信しつづけるかもしれません。

現実では届くことのない小さなさえずりを、ネットの空に向けて。

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この声は届いていますか?

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そちらは大丈夫ですか?

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いま、どうしてる?

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吉野おいなり君(めぞん)

1994年生まれ。吉本興業所属のお笑い芸人で、原一刻とのコンビ「めぞん」のメンバー。コンビとして神保町よしもと漫才劇場を中心に活躍するほか、シェアハウスの同居人と共に始めたYouTubeチャンネル『板橋ハウス』の登録者数は56万人に迫る(2023年6月現在)。妹が欲しいと常々願っている。

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