ルカイ族のハイテク長老と中国語の「とんぼ」バキ童・ぐんぴぃ、海外童貞を卒業する

2023.6.30
童貞以外は全部卒業「バキ童」こと“ぐんぴぃ”の「初体験」回顧録|第2回

文=ぐんぴぃ(春とヒコーキ)


バキバキ童貞のふたつ名でYouTube界を騒がせるお笑い芸人・ぐんぴぃがジャンルレスに活動する激動の日々で見つけた初体験を振り返る。

※この記事は『クイック・ジャパン』vol.166(2023年4月27日(木)より順次発売)掲載のコラムを再編成し転載したものです。

ぐんぴぃ
1990年生まれ。福岡県出身。タイタン所属のお笑い芸人。お笑いコンビ春とヒコーキのボケ担当。相方は土岡哲朗。YouTubeチャンネル『バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】』はチャンネル登録者数69万人を超える(2023年6月現在)

トラブル連続の台湾旅

どうもバキバキ童貞ことぐんぴぃです。ただいま所用で台湾に来ておりまして、このコラムも台北の宿でしたためております。今回はこの旅について書かせてください。なにせ僕は台湾に来るのも自力で海外に渡航するのも初めての海外童貞。トラブルの連続でした。用を足した後にトイレットペーパーがなくて目の前が真っ暗になりました。

あとこれは僕だけだと思いますが、名乗りで苦労しました。なんでも芸名「ぐんぴぃ」が、中国語圏ではとても卑猥な言葉に相当するらしいのです。「群p」と表記され、複数人の男女が乱れる行為を指します。いわゆる「乱○プレイ」のこと。最悪かよ! 現地の人に名乗ると笑われるか、眉をしかめられてしまうのです。世界史の教科書に「金玉均」が登場したときのざわつきったらなかったですが、まさにアレです。

余談ですが「ぐんぴぃ」は英語表記だと「GUNPEE」になります。海外の方と連絡を取ったときに教わったのですが『GUN』(銃)+『PEE』(おしっこ)なので、「ぐんぴぃ」は「おしっこ銃」という意味になるそうです。中国語圏と英語圏、世界を二分する大国で下ネタになる名前。不幸です。ちなみにこのあらましを友人に伝えたら「“おしっこにしか使ってない銃”の持ち主だからあながち間違ってない」と言われました。誠に遺憾です。

トラブルがあったとはいえ、やはり台湾は渡航しやすい国です。漢字圏なのでなんとなく意味はわかるし、日本語や英語を使える方も多い。

それでも今回の旅がハードモードだったのは、とある撮影のために山奥の集落に足を向けたからです。

ぐんぴぃ、台湾の原住民・ルカイ族と出会う

日本ではあまり知られていませんが台湾には原住民が住んでいます(台湾では先住民という表現が失礼に当たるため、あえて原住民という言葉を用います)。そのうちのひとつ、ルカイ族の村を訪ねました。集落に英語話者はおらず中国語とルカイ語のみ。大袈裟なジェスチャーとAI翻訳機の心もとない翻訳だけが頼りです。

さらには運転してくれた台湾のドライバーが言っていたのですが、過去には「首狩り」の風習があった好戦的な部族らしいです。首狩族。ドライバーは僕たちを怖がらせたいのか「まだ風習が残ってるカモネ」と片言気味に語りました。

ドライバーの荒い運転に揺られること約2時間。ルカイ族の集落につきました。恐る恐る車を降りると、たちまち村の大人と子供が集まってきます。みんな笑顔。予想に反して大歓迎されました。急に花冠を頭に被せてもらったり。歓待の儀式らしいのですが、一緒に行った相方と「『ミッドサマー』みたいだな」なんて笑ってました。花冠をつけた女性が村のカルト宗教に取り込まれるホラー映画です。

歓迎の儀式が済んだ後、村人たちが話しかけてくるのでAI翻訳機を通しました。画面には「私たちの教会に行きませんか」と表示されている。実はルカイ族はほとんどがキリスト教徒(意外でした)。教会が特別な儀式を行う日のため、招待してくれるというのです。「あれ、なんか本当に『ミッドサマー』みたいじゃない?」背中にちょっと嫌な汗をかく。でも撮れ高欲しさに着いて行きました。

ルカイのキリスト教は土着の風俗と混ざり合い、独特な雰囲気を纏っています。教会に入ると目に飛び込んでくるのはドでかい十字架。ところどころ赤い斑点のようなものがある。目を凝らす。

すべて血痕でした。ゾクっ。背筋が凍る。ヤバいヤバい‼ 大変なところに来てしまったのではないか? 震えて小さくなっていたんですが、特になにも起こりませんでした。儀式の最後に牧師さんが、ボロボロのスクリーンにYouTubeに違法アップロードされてるキリストの映画を流しはじめ「これの日本語版もYouTubeにアップされてるよ。帰ったら観るといい」と堂々と言っててちょっと和みました。『ミッドサマー』みたいなことは起こりませんでした。ルカイ族に首狩りの風習があったのは遠い過去の話で、現在はとても友好的な部族のようです。

童貞以外は全部卒業「バキ童」こと“ぐんぴぃ”の「初体験」回顧録|第2回
原住民から『ミッドサマー』のような花冠を授かるぐんぴぃ

宿は原住民の方の民家でした。住民たちが深夜まで現地の歌と踊りでもてなしてくれます。人々の温かみがうれしい。散々楽しませてもらった後、ルカイ族のおじさんから「日本の歌も聞かせてくれよ」と言われました。なにを歌えばいいか悩んでたら、ギターを持った村人が聞き覚えのある曲を掻き鳴らしはじめた。長渕剛の「とんぼ」でした。ルカイ族にはなぜか長渕の「とんぼ」が伝播しており、みんな中国語版が歌えるらしいです。全員で熱唱しました。イントロの「おーおーおーおーおおー!」のとこがピークでした。

翌日には原住民ルカイの長老みたいなお爺さんに会わせてもらいました。厳格な顔つき、白髪に長く険しい髭を蓄えて、民族衣装を着ている。若い村人とはまるで風格が違います。でも、ずっとスマホをいじってました。質問したらその都度スマホを操作するので、なにをしているのかと尋ねたら「ChatGPTに聞いてる」と返ってきました。驚愕のハイテク爺さんだった。この長老は村人からの相談を受けたら、隠れて最新AIに聞いて威厳を保っているのかもしれない、なんて妄想しました。

現地に赴いてみないとわからないことがある。海外童貞を卒業してわかったことです。本来の童貞を卒業したら見えてくるものがあるのだろうか。

この記事の画像(全1枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。