童貞以外は全部卒業「バキ童」こと“ぐんぴぃ”の「初体験」回顧録|第0回

2023.1.28
童貞以外全部卒業、春とヒコーキのぐんぴぃが振り返る「初体験」の回顧録|第0回

文=ぐんぴぃ(春とヒコーキ)


バキバキ童貞のふたつ名でYouTube界を騒がせるお笑い芸人・ぐんぴぃがジャンルレスに活動する激動の日々で見つけた初体験を振り返る。

※この記事は『クイック・ジャパン』vol.164(2022年12月27日から順次発売)掲載のコラムを再編成し転載したものです。

ぐんぴぃ
1990年生まれ。福岡県出身。タイタン所属のお笑い芸人。お笑いコンビ春とヒコーキのボケ担当。相方は土岡哲朗。YouTubeチャンネル『バキバキDT【バキ童】』はチャンネル登録者数38万人を超える(2023年1月現在)


「童貞以外は全部卒業できていくのに、どうしたらいいんだ」

どこにでもいるただの非モテ童貞の僕に、TVドラマ(『大病院占拠』/日本テレビ)のレギュラー出演が決まりました。鬼の日テレ土曜22時枠、主演はなんと櫻井翔さん。なにが起きてるんだ? それは僕が一番感じています。申し遅れました。どうもバキバキ童貞です。数年前に街頭インタビューを受けた様子がネット民に拡散され、いわゆる「ネットミーム」として今日までイジられている、たわいもない童貞のおじさんです。芸人でもあります。

数年前に街頭インタビューの様子がおバカ動画として拡散され、僕が高齢童貞であることが世界中に発信されました。バイト先の社員や地元の友人、親戚や親にも童貞クンであることがバレました。街中で知らない人が近づいてきて「違ったら失礼ですけど……童貞(の人)ですか?」と声をかけられたこともあります。合ってても失礼だろ。とにもかくにも恥辱に耐える日々を過ごしました。ネットのおもちゃの当人になることがこんなにつらいなんて知りませんでした。

童貞以外全部卒業、春とヒコーキのぐんぴぃが振り返る「初体験」の回顧録
街頭インタビューの様子

つらい思いをしたぶんをなんとか取り返したい一心で、YouTubeをスタートしました。「同じく苦しんでいるネットミームを救おう」「ネットのおもちゃの地位を向上させよう」「バズったらモテるかも」などのテーマがありました。

現在は想定より登録者が伸びたので、YouTuberのような振る舞いをしています。バズっても全然モテないことだけ想定外ですが、その延長線で『クイック・ジャパン』にコラムを載せていただけるのだからやはり人生はなにが起こるかわかりません。

しかし。いくら人生がわからないからと言って、まさか僕が地上波の連ドラに出演するとは。これがどれほど異常事態か。

バキバキ童貞はTVとの相性が非常に悪いです。TV局からは大谷翔平ぐらい敬遠されています。いろいろ理由がありますが、ひとつは「童貞」という文言。もう地上波ではかなり使いにくいそうですね。自己紹介がすでに最難関。詰んでます。以前、なんとか検閲を潜り抜けテレビ東京の番組に出た際は「バキバキの巨人」と紹介されました。進撃の巨人の奇行種じゃないか。なんとなく規制がゆるそうなテレ東がこれなら、ほかは言わずもがなです。あと、インターネットの闇の気配が強すぎます。醸し出されるネットの最果て感。下手するとへずまりゅう属性を帯びてしまっています。なにも迷惑なことはしていないのに。

ネットのおもちゃって、TVではずっと無視されてきた文脈なんですよね。2ちゃんねるやニコニコ動画など、ネットの最悪文化圏で醸成された「嘲笑」「軽蔑」がベースになっています。TVで近いことがやれていたのは街の変わり者がそのまま登場していた『ヒムケン先生』が最後じゃないでしょうか。松本人志さんの『働くおっさん劇場』とか。どちらも過激で挑戦的な番組という位置づけでした。

童貞以外全部卒業、春とヒコーキのぐんぴぃが振り返る「初体験」の回顧録
体を張るぐんぴぃ

そんな僕が、地上派ドラマのレギュラーに決まったというのです。ありえないのです。オファーを聞いたときは絶対に200パーセントドッキリだと確信して、ハナにもかけませんでした。

12月から3月のスケジュールがドラマにすべて押さえられました。ドッキリだと信じていた僕はかなり困惑します。童貞YouTuberの僕は、クリスマスやバレンタインと相性が良く(クリぼっちの象徴として駆り出されがち)イベント依頼が急増します。いわゆる繁忙期なのです。海の家は夏、焼き芋屋は秋、童貞は冬が書き入れどきなのです。スケジュールが押さえられた以上、それらの仕事も断らなくてはなりません。

もしドラマが嘘だったら、手に入るはずだったイベント出演料はどうなるのか。ドッキリだった場合、それらを取り返すべく損害賠償を請求しようと検討していました。相方にも誰もいないところで詰めました。「ドッキリなんだろ? 君は仕掛け人で全部知ってるんだろう?」「ドッキリならドッキリって言ってくれ。教えてくれたら君だけは訴えないことにするよ」結局ドラマ出演は本当だったので、史上初の「ドッキリを喰らって起訴する芸人」は誕生せずに済みました。ネットのおもちゃがジャニーズの本丸と共演するのです。すごい世界線。だから人生は面白い。

YouTube開設当初に掲げた「ネットのおもちゃの地位を向上させる」は実現に近づいたのではないでしょうか。

あとは共演女優とのロマンス的なことを期待するばかりです。ドラマってどうしてもイメージありますよね。共演をキッカケに熱愛とか。マネージャーに「共演する女優とつき合いたいです」と漏らしたら、真顔で「相手の女優のことも考えなさい」と叱られました。「君は童貞を捨てれたらそれでいいかもしれない。でも相手の女優さんは『バキバキ童貞を相手にした』という事実を背負っていくことになるんだぞ」と。そんな……童貞以外は全部卒業できていくのに。どうしたらいいんだ。とほほ。

童貞以外全部卒業、春とヒコーキのぐんぴぃが振り返る「初体験」の回顧録
相方・土岡哲朗とぐんぴぃ

『クイック・ジャパン』vol.164

Aマッソが誌面を飛び出す⁉『クイック・ジャパン』最新号、笑いの実験を繰り返すコンビの60ページ大特集!!!
Aマッソが表紙の『クイック・ジャパン』vol.164

Aマッソ特集の『クイック・ジャパン』vol.164(2022年12月27日から順次発売)表紙・巻頭写真は、3Dメガネを使用すれば立体に見える特別仕様。Aマッソの2人のソロロングインタビューはもちろんのこと、TV、ラジオ、YouTubeの現場取材、スタッフによるAマッソの分析など充実の誌面となった。

また、60ページ特集を記念したAマッソスペシャルトーク音声つき限定版の発売も決定! 小中学生時代の哀しいお笑い体験やルームシェア時代の衝撃エピソード、さらには今後のコンビを揺るがす大問題⁉についてまで、ここでしか聴けないトークが45分収録されている。


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